特別企画

フォトグラファーのための小型PC「SG100E」の魅力を熊切大輔さんに聞く

スタイリッシュなデザインに独立GPU Photoshopでのベンチマークも掲載

インタビューに協力いただいた熊切大輔さん。手前にあるのがA3ノビ対応インクジェットプリンター「SC-PX1V」、その横が「Endeavor SG100E」だ。

10年ぶりにフルモデルチェンジしたエプソンのプロ・ハイアマ向けインクジェットップリンター「SC-PX1V」(以下PX1V)。その高品質なプリント画質と静粛性、コンパクトでスタイリッシュな筐体などが話題を呼んでいる。

SC-PX1V

写真で見るエプソンプロセレクションPX1Vシリーズ - デジカメ Watch
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/pview/1243027.html

そんな「PX1V」にデザインを合わせたデクストップPCが存在するのをご存知だろうか。エプソンダイレクトが11月にリリースした「Endeavor SG100E」(以下SG100E)がそれだ。

Endeavor SG100E
SC-PX1Vとの組み合わせ例

エプソンダイレクト、SC-PX1Vのデザインにあわせた小型PC - デジカメ Watch
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1281021.html

「PX1V」のボディと素材感や高さを合わせただけでなく、フォトグラファーに必要なスペックを盛り込んだところも特徴だ。スタイリッシュな小型ケースに、インテル® Core™ i3-10100T プロセッサー(4コア/3.0GHz)とNVIDIA GeForce GTX 1650を搭載(いずれも基本構成)。冷却機構なども専用設計とし、高速かつ安定した動作を期待させるに十分なスペックを誇る。

今回はフォトグラファーの熊切大輔さんに「SG100E」を使っていただき、その所感を取材させていただいた。撮影と作品制作に日々追われる忙しい熊切さんにとって、PCとはどんな存在なのだろうか。そして、「SG100E」は熊切さんの眼にどのように映ったのだろうか。

熊切大輔

東京都新宿生まれ。東京工芸大学短期大学部入学。写真技術科第5研究室にて芸術写真などの写真表現を学ぶ。卒業後株式会社日刊ゲンダイ写真部に入社。政治・事件・プロ野球読売巨人軍などを担当。その後フリーとなる。現在は雑誌媒体を中心に人が生み出す瞬間・空間・モノを被写体に企業オフィシャル撮影・広告・カメラ雑誌など様々なジャンルで活動中。公益社団法人日本写真家協会理事。

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自然にスッとそこにある存在感

——早速ですが、実際にこの「SG100E」を使ってみて、如何でしたか?

いやぁ、ビックリするぐらい小さいですよね。デザインもメチャメチャシンプルだし。普段から液晶モニターを2つ並べて作業しているのですが、それにプリンターも加わるということで、机の上は結構いっぱいいっぱいなんです。だから、PC本体が小さいというのは有り難いですよね。

——小さすぎて不安になりませんでした?

カメラの場合も同じだと思いますが、小さくすると発熱への対応など難しい問題も出てくることは知っています。加えてパソコンなので排熱ファンの音のこともある。そういうことを考えると、やはりある程度の大きさがあったほうが安全で安心な気もします。でも、写真を扱う用途を意識してエプソンが仕上げてきた製品ということで、特に心配はしてませんでしたね。

実際に、ファンの音も静かで気にならない。思った以上に「良い意味で存在感がない」というか、自然にスッとそこにある感じがいい。言われなければPCだと言うことを忘れてしまうぐらい。特に「PX1V」の横に置くとデザインの一体感もあって……。

前モデルの「SC-PX5V II」から「PX1V」に買い替えた時に、横幅が小さくなった分スペースが開いたんですよ。そのスペースに良い感じで収まるんですよね。高さもきっちり揃えて正面のデザインの統一感も、こだわりを感じます。ということで、プリンターを買い替えて隙間が空いてしまった人にもお勧めです(笑)。

——話のついでと言ってはなんですが、「PX1V」の使い心地はどうですか?

僕はシャドーの表現を絵作りに積極的に使うタイプなのです。なので、締まった黒や空の深い青がイメージ通りに、ちゃんとプリント出来るという点でSC-PX1Vは気に入ってます。ただそれには、そのディティールがモニターでしっかり見えていること、そしてプリントとして出てきたものとのマッチングがとても重要なのです。

それで、この「SG100E」ですが、プリンター(エプソン・プロセレクションシリーズ)のドライバーソフトやEIZOのモニター(ColorEdgeシリーズ)で使える、「Quick Color Match」(かんたん写真色合わせツール)の入ったUSBメモリーも付属してるんですよね。これもなかなか親切でいいと思いました。PCって、プリンターやモニターと組み合わせだからね。

SG100EにはプリンタードライバーやQuick Color Matchなどが記録されたUSBメモリーが付属。すぐにプリンターやモニターにつなげる。

PCは良い絵づくりのためのサポート役

——“控えめな存在感の魅力”について、もう少し詳しく教えてもらえますか?

好みの問題でもあるので、必ずしも小さくて目立たないほうが良いという話でもないと思います。自分の場合は写真そのものの作業に集中したい。なのでモニターまわりの視界の中に余計なものは出来るだけ入れたくない。シンプルにスッとそこに居てくれる感じの「SG100E」は好感が持てます。自分にとっては、やはり写真が主役なので。

しっかりモニターを見て、シンプルに明るさやコントラストといったパラメーターを少しずつ調整しながら、自分好みの写真に仕上げていく。自分の作品を仕上げていくということで考えると、PCは良い絵づくりのためのサポート役ですね。

作品の最後、仕上げの段階で最後の追い込みをするイメージで僕はソフトを使うので、そこで上手くサポートしてくれると、ストレス無くスピーディーに絵作りができる。PCというモノよりも、そこから何が出来るのかが重要だと思うので、裏方として後ろからグツと支えてくれるような存在ですかね。

——ストレス無くスピーディーという点で、「SG100E」はどうでしたか?

立ち上がりもシャットダウンも速いし、静かさも十分。Photoshopで作業をしても、普段使い慣れているPCと遜色なく普通に快適でした。

実は、普段使っているPCはGPUが少々非力かなと最近感じていて、例えば画面上でサムネイルを出して、拡大しながら次々とピントを確認していく時に枚数が多いと、荒い表示が出てから精細表示に切り替わるタイムラグが気になり、それがストレスだったりする。そのあたり、「SG100E」では気になりませんでした。

それから、前面に蓋があるのもいいですね。開けるとSDカードのスロットやUSB端子が使えるけれど、使わない時は隠れている。先程も言ったように、モニターまわりの視界の中に余計なものは入れたくない。便利に使えるけれど蓋があって視覚的にもストレスにならない。フォトグラファーの心理をよくわかっている人が作っている感じがしますね。

「写真専用PCもいいかな」と思わせる完成度

——作品制作用と、それ以外の作業用でPCの使い分けはしていますか?

今はしていないです。デスクトップPCとノートPCの組み合わせですが、やはり画像処理などメインの作業は普通にデスクトップで……という事になりますね。

普段使いも含めてPCを使っていると、写真関係以外のソフトも含めて、わりとパンパンになってしまう。なので、写真に特化して使い分ける、そういう意味での切り替えと整理整頓は、余裕があればやりたいとは思ってるんです。

しかし、大きなデスクトップPCを2台ドンドン!とは置けません。かといってコンパクトだけれどグラフィックに非力なPCを導入しても結局使わなくなる。それを考えると、「SG100E」はフォトグラファー向けをうたっているだけあって、そのあたりのツボをよく抑えているなと思いました。

あと、今一番速いインターフェースのThunderbolt 3があるのも、長く使うことを考えるとポイントですよね。将来的にThunderbolt 3対応の外付けストレージやカードリーダ-が主流になっても対応できるのは、安心感があります。

背面のインターフェイス周り。USB-C端子はThunderbolt 3に対応している。

写真をやるからパソコンを導入してます、というハイアマチュアの方は結構多いと思うんです。僕なんかは、そういう人に近い使い方と言ってもいいでしょう。カメラの使い方や撮影の技術は貧欲に学ぶけれど、パソコンまでは、なかなか手が回らない。「パソコンなんか自分で組み上げれば出来るよ」と言われても、そういうのは写真とは別のスキルなのかなと思っていて手を出しづらい。そこへ「これは写真のためのPCですよ」とワンパッケージで仕上がっている信頼感。一言で締めるなら、そこがこの「SG100E」の魅力かなと思います。

(写真のモニターはEIZO ColorEdge CG279X

「SG100E」の実力を探る

「SG100E」は、コンパクトな筐体ながら拡張スロットとして「PCI Express ×16」を備え、ロープロファイル&ボード長170mmまでの拡張カードを使用可能。ということで、CPU内蔵3Dグラフィックスのほか、4種類のGPUが用意されている。またCPUも4種類からの選択となる。

選択可能なGPU
NVIDIA GeForce GT 1030 2GB
NVIDIA GeForce GTX 1650 4GB
NVIDIA Quadro P620 2GB
NVIDIA Quadro P1000 4GB

選択可能なCPU
インテル® Core™ i3-10100T プロセッサー
インテル® Core™ i5-10500T プロセッサー
インテル® Core™ i7-10700T プロセッサー
インテル® Core™ i9-10900T プロセッサー

今回、熊切大輔さんに試用いただいたのは、CPUにインテル® Core™ i9-10900T プロセッサー、GPUにGeForce GTX 1650 4GBという組み合わせ。これが写真向けの作業でどのような性能を見せるのか比較検証してみる。

比較対象には、CPUにインテル® Core™ i5-10400 プロセッサーを搭載し、グラフィックカード未搭載=CPU内蔵グラフィックス(UHD630)を使用のデスクトップPCを選んでみた。

RAW現像200枚(約5.6GB)を現像

実際にRAW現像やフィルター処理を行なった場合の比較をしてみる。PhotoshopのCamera RAWを使い、ニコンD750で撮影したRAW画像200枚を現像するのに要した時間を計測。PhotoshopのGPU利用はONにしてる。

結果、「SG100E」の方が明確に速いという結果になった。GPUの性能も効いているのかもしれない。

計測に使用した画像ファイル

計測対象(CPU・GPU)所用時間
SG100E
(インテル® Core™ i9-10900T プロセッサー・GTX1650)
6分39秒
比較用PC
(インテル® Core™ i5-10500T プロセッサー・UHD630)
8分25秒

JPEG画像200枚(約1GB)のフィルター処理

上記RAW現像テストで現像した200枚のJPEG画像(約1GB)に、ぼかし(レンズ)のフィルター処理をおこない、その時間を計測してみた。

計測対象(CPU・GPU)所用時間
SG100E
(インテル® Core™ i9-10900T プロセッサー・GTX1650)
13分42秒
比較用PC
(インテル® Core™ i5-10500T プロセッサー・UHD630)
20分07秒

念のため、Photoshopの設定でGPUなしにしてのテストもおこなってみたところ、SG100Eが17分02秒、比較用PCが17分54秒という結果に。このテストではGPUの差がはっきり出たかたちになった。

Thunderbolt 3を試す

「SG100E」の背面には、Thunderbolt 3のインターフェースが搭載されている。ディスプレイポート出力対応なので、液晶モニターを接続して使用も可能だが、その高速な転送速度は、カードリーダーやデータストレージを接続しての利用でも活用できそうだ。

ということで、ProGradeDigitalのCFexressカードリーダーを使い、CFexpressの転送速度を計測してみた。比較対象は「SG100E」の前面にあるSDカードスロット。ここにUHS-Iスピードクラス3のSDXCカードを挿して計測してみる。

以下は、RAW200枚とJPEG1,000枚(19.5GB)を、カードからデスクトップへ読み込んだとき、デスクトップからカードへ書き出した際の時間だ。

転送方法+記録メディア読み込み書き出し
Thunderbolt 3+CFexpress 0分24秒 3分36秒
前面スロット+SDXC 3分55秒 10分29秒

もしCFexpress対応のカメラを使用しているならば、Thunderbolt 3を使わない手は無いというスピード感。SDカードと比べるまでもないという感じだが、「SG100E」が搭載する前面カードスロット自体の性能が劣るという話ではないので誤解の無いように。CFexpressの速度の優位をThunderbolt 3が損なうこと無く引き出している点と、「SG100E」が持つ将来性を理解してほしい。

提供:エプソンダイレクト株式会社

まつうらやすし