特別企画
キヤノン機をWebカメラ化する「EOS Webcam Utility Beta」導入レポート
USBケーブル1本で利用可能 設定方法をステップごとに解説
2020年5月1日 17:00
不要不急の外出が制限されている昨今、リモートワークや友人とのコミュニケーション手段としてZoomなどのWeb会議システムを使う機会が増えてきている。Web会議自体はパソコンとインターネット環境があればだれでも手軽に行えるものだが、カメラ好きなら自分の一眼レフやミラーレスカメラの映像を使う事ができないかと一度は考えたことがあるはずだ。
実際にはSIGMA fpなどごく一部のカメラを除いて、カメラとパソコンをUSBケーブルで繋いだだけではWebカメラとして使う事はできないわけだが、4月28日にキヤノンUSAがEOSをUSBケーブルで繋ぐだけでWebカメラとして使えるWindows用ソフトウェア「EOS Webcam Utility Beta」を公開した。本ソフトは対応するEOSなら一眼画質の映像をそのままWeb会議に使えるという画期的なものだ。
そこで今回は「EOS Webcam Utility Beta」の導入からWeb会議での利用までの流れを詳しく紹介していきたい。
カメラをWebカメラとして使う方法
一眼レフカメラやミラーレスカメラをWebカメラとして使用する方法として一般的なのはキャプチャーボードと言われる、カメラのHDMIポートからの映像を“パソコンで使える形式に変換する”機器を使う方法だ。この方法であれば、HDMIポートを有するほとんどのカメラをWebカメラとして使う事ができるが、キャプチャーボード自体が1~2万円と比較的高価で配線やセットアップも煩雑になるという問題がある。さらに、昨今のキャプチャーボード需要の高まりによって製品自体が品薄となり、欲しくても買えないという状況も一部で発生している。
唯一例外として昨年発売されたSIGMA fpはカメラとパソコンをUSBケーブルで繋いだだけでWebカメラとして使える優れた製品だが、Web会議のために新しくカメラとレンズを買いそろえるというのはかなりハードルが高い。
そんな中、今回キヤノンUSAが公開した「EOS Webcam Utility Beta」は無料で使用でき、パソコンへインストールするだけでEOSがWebカメラとして使えるという画期的なソフトなのだ。私が知る限り主要カメラメーカーでこのようなツールを公開しているのはキヤノンだけだ。
キヤノンUSAからWebカメラ化ユーティリティが登場
4月28日にキヤノンUSAがリリースしたユーティリティーソフトウェアがそれだ。これはレンズ交換式カメラEOSシリーズや、レンズ一体型の一部機種をWebカメラ化する、というもの。
EOS Webcam Utility Betaという名前からも分かるように、ベータ版でのリリースであり、日本では公開されていない。現在の所、日本では公式なサポートを行う予定がないということだが、実際に試してみると非常に簡単に導入でき、問題なく動作したのでこれからその手順を紹介していこう。
なお、実際に試す場合は、本ソフトはあくまでもベータ版であり米国以外での利用はサポートされないことを理解したうえで各自自己責任のもと使用して欲しい。
EOS Webcam Utility Betaの導入
EOS Webcam Utility Betaの導入は非常に簡単だが、いくつかの制約がある。今のところ対応するOSはWindows10(64bit)限定であり、Macでは使えない。Windowsでも32bit OSや8.1(64bit)用としてはリリースされていない(利用できるかもしれないが検証していない)点にも注意しておこう。
また、対応しているEOSも限定されている点も要チェック。入門機も含め、ここ2~3年で発売されたEOSの多くが対応する機種となっているが、対象外となっているものもある。選定基準はよくわからない。具体的には以下の機種が対象だ(カッコ内は日本での機種名)。今回はEOS Rを使った手順を紹介するが、他の機種でも同じ流れで使用できる。
一眼レフカメラ | ミラーレスカメラ | レンズ一体型 |
---|---|---|
EOS-1D X Mark II | EOS R | PowerShot G5X Mark II |
EOS-1D X Mark III | EOS RP | PowerShot G7X Mark III |
EOS 5D Mark IV | EOS M6 Mark II | PowerShot SX70 HS |
EOS 5DS | EOS M50(EOS Kiss M) | - |
EOS 5DS R | EOS M200 | - |
EOS 6D Mark II | - | - |
EOS 7D Mark II | - | - |
EOS 77D(EOS 9000D) | - | - |
EOS 80D | - | - |
EOS 90D | - | - |
EOS Rebel SL2(EOS Kiss X9) | - | - |
EOS Rebel SL3(EOS Kiss X10) | - | - |
EOS Rebel T6(EOS Kiss X80) | - | - |
EOS Rebel T6i (EOS Kiss X8i) | - | - |
EOS Rebel T7(EOS Kiss X90) | - | - |
EOS Rebel T7i(EOS Kiss X9i) | - | - |
EOS Rebel T100(日本未発売) | - | - |
ソフトウェアのDLと設定方法
手順1
まず、手元あるカメラが対応していることを確認出来たら、キヤノンUSAの専用ページにアクセスし、ページ下部から対象のカメラを選択する。
Canon U.S.A., Inc.|EOS Webcam Utility
https://www.usa.canon.com/internet/portal/us/home/support/self-help-center/eos-webcam-utility/
手順2
対象カメラをクリックすると製品サポートページへ飛ぶので、ページ中ほどにある「Drivers & Downloads」の「Software」タブの一覧から「EOS Webcam Utility Beta 0.9.0 for Windows」を選択しダウンロードする。自動選択されていると思うが、OSの種類も確認しておこう。
手順3
ダウンロードされた「EOSWebcamUtilityBeta-WIN0.9.0.zip」を解凍して出てくる「EOS-Webcam-Utility-Beta.msi」をダブルクリックして、インストールを開始する。
手順4
あとは画面に従ってインストールしていくだけだ。画面は英語だが数回「Next」を押すだけでインストールが完了する。
手順5
インストールが完了したら、EOSの電源を入れて、動画モードかライブビューをONにしてカメラとパソコンをUSBケーブルで接続。Web会議アプリ(今回はZoomを使用)を立ち上げる。自動的にEOSがWebカメラとして認識されているはずだ。
先ほどインストールしたEOS Webcam Utility Betaだが、特に起動する必要はない。一度インストールしてしまえば、次回以降はカメラと繋ぐだけでEOSがWebカメラとして認識される。とても便利だ。
今まで見ていたZoomの画面が異次元のクオリティに変わっているのが分かる。一眼カメラならではの被写界深度が浅い、大きなボケは人物を際立たせ、背景も違和感のない美しいボケとなる。多少部屋が散らかっていてもボカしてしまえば全く気にならないのも嬉しいポイントだ。ちなみに、レンズはRF35mm F1.8 マクロ IS STMを利用している。
参考までにMacBook Proのインカメラで撮影した映像はこちら。画質や雰囲気がまるで違うことが見て取っていただけることだろう。
EOS Rの場合、映像の遅延は僅かにあるが、Web会議に使うことを考えれば問題ないレベルかと思う。ちなみに、カメラ起動中はUSB給電には対応していないため長時間の利用は難しいが、1時間程度であれば余裕で利用できそうだ(長時間利用は未検証だがEOS Rの公称動画撮影可能時間は2時間20分だ)。
なお、カメラ内のマイク音声は本ソフトでは認識されないので注意が必要だ。PC内蔵のマイクを利用したり、別途PC用のマイクを用意しておく必要がある。ここまで良い映像が得られると、音にもこだわりたくなるかもしれない。
おすすめの使い方
パソコンに認識さえされればあとは普段どおり露出やホワイトバランスなど好みの設定をして利用すればOKだが、Web会議で利用するなら動画モード(絞り優先)とし、ISOはオートに、AF方式は「顔+追尾優先AF」にしておくのがおすすめだ。瞳AF対応機種なら設定しておくことで瞳にバッチリとピントを合わせ続けてくれる。
あとは好みのF値を選択し、露出補正で明るさを整えればOK。ホワイトバランスやピクチャースタイルもオートのままでも問題ないが、もちろん好みで変更してOKだ。社内ミーティングならスッキリとした寒色系の色が合うし、Zoom飲みをするならWBをくもりや日陰にして暖色にもっていくのもいい。
カメラ側のライブビュー画像が反映されるので、ピクチャースタイルを変えて、モノクロにすることもできる。
Webカメラを置く位置は、ディスプレイの中央上部が視線の違和感もなくベストだろう。ディスプレイの画面サイズが大きくて上部に置けないような場合は、左右などできるだけ画面に近い位置に置くのがおすすめ。画面から離しすぎると、画面越しに目が合いにくい状況になる。
上手く繋がらない場合は?
今のところ、EOS RをWebカメラ化した場合、試したすべてのWeb会議システムで問題なく映像が認識された。実際に試したのは以下のサービスだ。
・Zoom
・Microsoft Teams
・Googleハングアウト
・Facebookメッセンジャー
・Skype
・OBS studio
下の写真はMicrosoft Teamsでの画面だ。Zoomと少し色合いが異なりこちらはイエローに寄っている印象がある。
Web会議システムでカメラの項目に「EOS Webcam Utility Beta」という項目が出ているが、以下のような画像だけが表示されて映像が出力されない場合は他のアプリとの競合の可能性が高い。一度他のWeb会議アプリが起動していないか確認して見よう。起動していないように見えてタスクトレイの中で動いていると言う場合もある。使わないシステムは自動起動と常駐をオフにしておこう。
また、私の環境ではSkypeのWindowsストア版はEOS Webcam Utility Betaを認識することができなかった。一度アンインストールし、MicrosoftのサイトからSkypeの最新版(ver.8.59)をダウンロードしてインストールしたところ問題なく認識できたので困った場合は参考にして欲しい。
もし、Web会議システムに「EOS Webcam Utility Beta」という項目すら出ずまったく認識されない場合は、一旦PCを再起動させたり、プライバシー設定からカメラの利用が許可されているかどうか確認してみると良い。カメラのファームアップをしたら繋がったという話も聞いたことがある。
まとめ
以上、EOSを手軽にWebカメラとして使える「EOS Webcam Utility Beta」の使い方について紹介した。途中でも紹介したようにベータ版で日本でのサポートは受けられないソフトウェアではあるが、本ソフトを使えば対象のEOSを持っているWindowsユーザーなら気軽に高画質なWeb会議システムを構築出来る。
おそらく米国での強い外出規制がきっかけで公開となったソフトだと思うが、この状況の中、短期間で公開に踏み切ってくれたキヤノンには賛辞を送りたい。なかなか外に出られず愛機が眠ったままという読者もいると思うが、このソフトを使えばカメラに新しい役割が生まれ家の中でも大活躍してくれるはずだ。他とはひと味違うWeb会議をしたい人は一度試してみる価値はあるだろう。