特別企画

フィルター交換を素早く・簡単に…「Kenko ワンタッチ着脱フィルターキット」

バヨネット式でスピーディに着脱 風景写真家が試してみた

Kenko ワンタッチ着脱フィルターキットに含まれる主要製品。左からC-PLフィルター、ND16フィルター、バヨネット式レンズアダプター。

世の中はフィルムカメラからデジタルカメラへと主役は完全に交代している。画質も年々向上し、使い勝手も上々。レタッチも自分でできる手軽さから、表現の幅も広がっている。ただレタッチに関して言うなら、デジタルならなんでもできるという思い違いも一部にある。撮影現場でしかできないことは、確実にあるのだ。

代表例の1つはフィルターワーク。PLフィルターによって余分な反射を除去することで被写体の色や質感をあらわにしたり、NDフィルターを使うことで疾走感のある水の流れを滑らかにするといったことは、レタッチの段階で行うことは難しい。つまりフィルターを使わなければ撮れない写真があるということであり、そういった写真を撮りたいなら現場でトライするしかないのだ。

フィルターを使った作品づくりに詳しい風景写真家の萩原史郎さんに、Kenko ワンタッチ着脱フィルターキットを試してもらった。

しかし、PLフィルターやNDフィルターを使っていれば、様々な問題に遭遇することもまた事実だ。なんの問題もなく使えているよ、なんて人はレアケースに違いない。

これらのフィルターはねじ込み式なので、レンズへの着脱のときに問題が発生する。レンズ側のねじ穴にうまくはまらず、いつまでもクルクル回していたり、逆に斜めに入れてしまってガチっとかたまってしまったり。うまくはまったはいいけれど、ガッチリはまって外れない……。薄型のフィルターは掴みづらくて、そもそも着脱がはかどらない。

筆者自身も渓流でPLフィルターを装着しようとしたとき、早く撮影したいという焦りのあまりうまくはまらず、そのうえポロっと落としてしまい、そのまま永遠の別れになったこともあった。撮影会のときは、参加者が橋の上でNDフィルターを着脱しようとして失敗し、眼下の渓流へポチャン……。この記事を読んている貴方も、持っている逸話は1つや2つではないのでは?


フィルターワークをスムーズにする画期的な製品

そんな問題をハッとする発想ですっきりと解消してしまったアイテムが登場した。「ワンタッチ着脱フィルターキット」である。これはバヨネット式のアダプターをレンズ側に装着しておけば、あとはワンタッチで素早くフィルターを着脱できるという新システムだ。

キットには、

・バヨネット式レンズアダプター
・C-PLフィルター
・ND16フィルター
・レンズアダプター用キャップ

の4点がセットになっている。CP+2019において参考出品されていたので、ご存知の方もいると思うし、発売を待ち焦がれていた方も多いだろう。

Kenko ワンタッチ着脱フィルターキット。バヨネット式レンズアダプター、C-PLフィルター、ND16フィルター、レンズアダプター用キャップがセットになっている。

実は別の工夫をして、本製品と同じようにフィルターの着脱を簡単にしてしまった製品がある。マンフロットの「XUME(ズーム)」だ。これはレンズ側に「レンズ用マグネットベース」を取り付け、フィルター側に「フィルター用フレーム」を取り付けると、それぞれが磁力で引き合い、ぴたりと重なり合うという仕掛けだ。レンズ側とフィルター側に1つずつ専用の取り付け部が必要とは言え、口径が合えばどんなフィルターでも使えるメリットがある。

一方の本製品は、PLフィルターとNDフィルターを含め4点でセットになっていることが特徴。同梱のバヨネット式レンズアダプターをレンズ前面に取り付ければ準備は完了し、あとは状況に応じてPLフィルターかNDフィルターを選べばいい。

2枚のフィルターは、ねじ込み式ではなく、専用のレンズアダプターにかみ合うシンプルな形状をしているため、ワンタッチで素早い着脱が行える。「こんなに簡単なの?」と思えるほど着脱はスムーズで、仮に撮影中、不用意にフィルター部に何かが接触しても簡単に外れる心配はない。

またレンズアダプターに専用フィルターを力を込めて装着しても、ねじ込み式ではないため軽い力で外すことができるのは嬉しい。

4つの製品は専用のセミハードケースに入っているが、仕切りを引き出すことによって素早く取り出すことができる点も見逃せない工夫だ。

フィルターケースは特製。簡単に引き出せて落としにくい。

装着の手順は次の通り。最初にレンズ前面に「バヨネット式レンズアダプター」を取り付ける。

次にキットに含まれるC-PLフィルターもしくはNDフィルターを取り付けるだけ。

もしも頻繁に使うレンズがある場合は「バヨネット式レンズアダプター」は取り付けたままにしておけば、さらに撮影効率は向上する。PLフィルターやNDフィルターが必要な場面で、面倒だと一瞬も思わず素早くフィルター操作をするためには、あらかじめ「バヨネット式レンズアダプター」を取り付けておくスタイルが良さそうだ。

C-PLフィルター作例

ここで、Kenko ワンタッチ着脱フィルターキットに含まれるC-PLフィルターを使った作品をお見せしたい。

例えばこのシーンでは、雨に濡れて岩はテカテカと光り、水面にも反射が見えている。この状況でC-PLフィルターを使うと、茶の岩の色が描写され、水面の反射も抑えることができる。

C-PLフィルターなし
X-T3 / XF16-55mmF2.8 R LM WR / 38.8mm(58mm相当) / 絞り優先AE(1/9秒・F11・±0.0EV) / ISO 200
C-PLフィルターあり
X-T3 / XF16-55mmF2.8 R LM WR / 38.8mm(58mm相当) / 絞り優先AE(1/3秒・F11・±0.0EV) / ISO 200

次の場面では雨のため、葉の表面に艶々とした反射が目立っている。この光を好ましいと考えるなら、このままストレートに撮影する方法もある。一方でC-PLフィルターを使い反射を除去すれば、葉そのものの質感を引き出すこともできる。

C-PLフィルターなし
C-PLフィルターあり

PLフィルターには主に2つの効能がある。水面などの光の反射を除去することと、色彩を鮮やかに表現することだ。風景写真においては出番が多く、空の青を強調したり、紅葉の色を弱める葉の反射を除去することができる。あるいは渓流や湖沼などでは、水面の反射を除去し水の色を表現したり、水面下の様子を引き出すといった具合だ。

いずれの場合もメリハリを加える効果があるため、肉眼では平凡に見える風景であっても強い印象を与えることができる。C-PLフィルターはこうした使いどころを心得ていれば、風景表現においては強い味方になってくれるのである。

NDフィルター作例

続いて、Kenko ワンタッチ着脱フィルターキットに含まれるNDフィルターの使用例を見て欲しい。

ND16フィルターなし
X-T3 / XF16-55mmF2.8 R LM WR / 22mm(33mm相当) / 絞り優先AE(1/12秒・F11・±0.0EV) / ISO 200
ND16フィルターあり
X-T3 / XF16-55mmF2.8 R LM WR / 22mm(33mm相当) / 絞り優先AE(1.4秒・F11・±0.0EV) / ISO 200

NDフィルターを使用しない場合は、シャッタースピードが1/12秒なので、動感の強い描写になっている。一方、ND16フィルターを使うと光量が約4絞り分遅くなるため、1.4秒というスローシャッターになった。その結果、水の滑らかな表情を描くことに成功している。

NDフィルターは色彩に影響を与えることなく、光量を落とす効果があるフィルターだ。効果の度合いによって、ND2(1絞り分)、ND4(2絞り分)、ND8(3絞り分)、ND16(4絞り分)、ND32(5絞り分)……と言う具合にわかれている。

本製品の場合は、キットに含まれるND16の他に、ND4/ND8/ND1000という3タイプがラインアップしている。

中でもND1000は約10絞り分の効果があるため、長時間露光の効果を与えた風景表現を楽しめるのである。

例えば下の作例では、ND1000を使うことで30秒近い超スローシャッターを得ることができた。その結果、水はまるで綿雲やシルクの布ような質感を獲得した。肉眼や動画では決して見ることのできない風景がここにある。

ND1000フィルターあり
X-T3 / XF16-55mmF2.8 R LM WR / 25mm(37mm相当) / 絞り優先AE(27秒・F8・±0.0EV) / ISO 200

まとめ:すべての風景写真を撮影する人に

今回、この新システムを使ってみたが、これまで抱えていた数々の問題がすっきりと解決されていることを体験した。何よりもフィルターの着脱が簡単なので、使っていて楽しいことが一番。これならC-PLフィルターやNDフィルターの使いどころで、億劫だから、面倒だから、厄介だからという理由で使わずにいるということがなくなる。「あの時、使っておけばよかった」という後悔は、この新システムのおかげでなくなるに違いない。

極端に言えば、いくら優れた効果を与える製品であっても、使い勝手がマイナスであれば使ってはもらえない。使い勝手が良くて、使った結果が良い、これが「良い製品」であるとすれば、「ワンタッチ着脱フィルターキット」はまさにそれにあたるのである。

これまでフィルターの効能は知っていても、その面倒な使い勝手ゆえに遠ざかってしまっていたというなら、ぜひ本製品を使ってほしい。これまで貴方が抱えていた諸々の問題点には決して遭遇しないことを強く述べておきたいと思う。

萩原史郎

(はぎはら しろう)1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊風景写真」(※現在は隔月刊) の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。著書多数。日本風景写真家協会(JSPA)会員。カメラグランプリ選考委員。