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GR用サコッシュやバッグ/ストラップを展開する「Loopie」ブランドが誕生

写真家・こばやしかをるさんに開発のポイントを聞く

写真家のこばやしかをるさんが新たにアクセサリーブランドを立ち上げた。ブランド名は「Loopie」(ルーピィ)。さっそく実際の製品に触れながらブランド立ち上げの経緯を聞いていった。

ブランド誕生のキッカケ

ブランドの第1弾となった製品はパラコード素材を用いたストラップだ。発売は2021年の12月。軽量ながら耐久性に優れるパラシュート用のコードを手編みで仕上げているコダワリの一品だ。生産量はハンドメイドのためどうしても数量を用意できないという。

こばやしかをるさんといえばスナップ撮影のイメージだが、なぜ第1弾製品にパラコード素材を用いることにしたのだろうか。お話を聞いていくと、このパラコード素材との出会いがブランド立ち上げの出発点となったことがわかってきた。

ブランド第1弾製品のパラコード素材を用いたリストストラップ。9色をラインアップしており、オンラインショップでの販売価格は3,300円(税込)だ。

「キャンプに興味があってアウトドアショップを訪れた時にパラコードに出会いました。軽くて丈夫、濡れても平気な素材ですから、これは何かできるのでは? と直感しました。何ができるのだろうと考えていた時に、サクラスリングの考案者である杉山さくらさん(株式会社Sakura Sling project)に『編んでみたら』というアドバイスをいただきました。編み込むことで強度は増しますし、カラーバリエーションもつくりやすい。これはカメラのストラップになるのではと気づいて試行錯誤した結果、ストラップが形になっていきました。これがブランド第1弾製品誕生のきっかけでした。」

もともとモノづくりが好きだったのだと続けるこばやしかをるさん。その言葉どおり手元のRICOH GR IIIに取りつけられたハンドストラップはしっくりとその手になじんでいた。細身ながらしなやかな素材ゆえだろう、カメラのソリッドなイメージによくマッチしていると感じられた。

濡れてもすぐ乾き、丸洗いもできるためガシガシ使っていけるところもポイント。ストラップ取りつけ部は松葉紐タイプを採用しており、コネクタによる着脱機構も備えている。重量が約10gと持ち歩き時に重さを感じさせないバランスとなっているところも嬉しい。手首まわりは23~26cmのアジャスト幅となっている。

細かなパーツも日本製にこだわる

パラコード素材との出会いからおよそ1年、試行錯誤の末にハンドストラップの製品化にこぎつけた。各パーツ類にも特にこだわったと話すこばやしかをるさん。基部の部材などは半杭誠一郎さん(ARTISAN&ARTIST*創業者)の助力を得て、日本製のパーツを使用しているという。

基部側にはブランド名を型押ししたレザーパーツ(牛革)を使用してコードがまとめられている。

実際に製品に触れてみたところ、カチッとした嵌め合わせ具合など細かな動作がスムーズ。加工精度の高さが実感されるとともに、バリやパーティングラインなどが手に伝わってくることもなかった。プラ素材選定の理由はカメラ等、取りつけたアイテムを傷つけないため。あえて金属は用いていないのだと話す。

直接手にふれる製品だからこそ、こうした細かな仕上げにまで細心の注意が払われているのだろう。しなやかな素材感とともに手への収まりの良さが実感できた。

手首にあたる部分が編み込みで仕上げられている。引っ張ることで幅をひろげることも可能で手首への当たり具合は非常にソフト。ブレスレットのように見えるデザインもファッショナイテムとして使って欲しいと話すその言葉を裏づける意匠となっている。

オンラインショップもオープン

こうして出発した「Loopie」ブランドだが、製品のラインアップはすでに拡大している。製品展開にあたりオフィシャルオンラインショップもオープン。RICOH GRシリーズが収まるサコッシュ「Loopie ポケットサコッシュ・リッペ」(税込5,500円)やショルダーバッグ「Loopie Wポケットショルダー」(同8,000円)もラインアップに加わっている。

Loopie ポケットサコッシュ・リッペ。スマートフォンやRICOH GRシリーズにマッチしたサイズ感で仕上げられている。開口部に一部切れ込みが設けられており、口を開きやすいところもポイント。サイズは140×120×40mmで、重量はレザー素材ながら約70gと軽量だ。コードの長さは約75〜130mmで調整できる。

各製品はカメラと組み合わせて使用できるのはもちろんだが、日常でも使ってほしいと話すこばやしかをるさん。ちょっとしたお出かけや散歩などでも持ち出しやすいよう軽さや素材感のバランスの取り方に特に注力しているとのことだ。

またブランドの立ち位置についても「ユニセックス」であることに重きを置いていると話す。男女問わずファッションアイテムとして使ってもらえるよう、各アイテムをデザインしていると話す。

Loopie Wポケットショルダー。リサイクルナイロン素材「CODURA ECO」が用いられており、重量は約200g。220×170×100mmというサイズ感からは想像できないほどの軽さが特徴だ。フロントにはポケットを2つ備えており、RICOH GRシリーズやスマートフォンなどを収納することができる。

今後の展開は

写真家提案型のアイテムブランドとしてスタートした「Loopie」。今後について尋ねたところ、ワークショップなどを通じてモノづくりの楽しさを発信していきたいとの展望を聞くことができた。

今回自身の手で製品をつくり、また素材や部材についてリサーチをしていく中でモノづくりの楽しさやモノそのものの価値に気づかされることになったと続けるこばやしかをるさん。実際に体験してみることで、多くの人にその楽しさを感じて欲しいのだと話す。

「パラコード素材のストラップは編みこみでつくられていますので、パーツを用意すれば多くの人に手作りしてもらえると考えています。こうした手作りの場を共有することで、参加者の方にはお手製のストラップを手にしてもらえますし、私自身も学ばせていただくことがあると思っています。そして私自身が実感したように、ぜひ体験を通じて『モノの価値が見えてくる瞬間』をともにできたらいいな、と考えています。」

手編みであればパラコード素材の選択からできるため、オリジナルの配色デザインや長さの調整が自在となる。まだまだコロナ禍の収束目処は見えない状況が続いているが、オンライン形式でのワークショップ開催もあり得るだろう。こうした例ではすでにエプソンと伊東屋のコラボイベントがある。

自身について職人気質なところがあると話すこばやしかをるさん。製品の展示ボードなどもお手製で用意するコダワリようだ

各製品は展示会やアートイベントなどでも販売していきたいと話すこばやしかをるさん。直近ではピクトリコ ショップ&ギャラリーで開催中の写真展「curiosity —好奇心—」会場でも陳列されている(会期は1月11日~1月22日)。実際の製品を手にとれるほか、こばやしかをるさん自身にお話を聞くことができるこの機会、作品鑑賞とともに訪れてみてはいかがだろうか。

こばやしかをるさん(「curiosity —好奇心—」会場にて)。向かって右奥の展示作品は国際写真賞IPA 2021のプロフェッショナル ファインアート・静物部門で佳作に入選した作品。当誌で2020年5月にお伝えしたRICOH GR IIIを用いた多重露光機能による室内撮影に着想を得て取り組んだ結果生まれた作品なのだという。
本誌:宮澤孝周