イベントレポート

【CP+2019】内田ユキオさんのリコーセミナーステージ「GRが帰ってきた。」

GRと一緒にスナップの未来を見てみたい

内田ユキオさん

フイルム時代から熱狂的なファンがいることで有名なリコー「GR」シリーズ。その最新作である「GR III」が発表され、今年のCP+2019でもGR IIIをテーマにしたセミナーが行われた。

登壇したのは、古くからからのGRユーザーとしてとして知られる内田ユキオさんだ。過去のCP+でもGRのセミナーに度々登壇している。今年も内田さんの独特な切り口で「GR III」の魅力を語ってくれた。

まず内田さんは、「GRはカメラ業界の財産なんです」と話した。

「コンセプトが変わらず、20年以上も単一の機種が発売され続けているのは、おそらくGRだけです。28mmの単焦点をつけたスナップシューターとしてあり続けました。僕はまだアマチュアだった頃、リコーの28mmのレンズをライカのカメラにつけて使っていましが、いつかプロの写真家になって、GRを背負ってこういうステージに立つことをイメージしてきました」

自身の思いの丈を述べた後、内田さんはGRの歩みを話し始めた。

「2005年に発表されたGR DIGITALから、デジタルカメラのGRシリーズがはじまります。2007年にはGR DIGITAL IIが発表されますが、同じ年にiPhoneも発売になりました。iPhoneに影響を受けなかったカメラメーカーはないと思いますが、GRだけは唯一iPhoneショックをプラスに受け止めたカメラでした。サイズも画角もiPhoneに近いカメラですが、Webでファンを集い、ファームアップを次々していくなど、ネットに対応してiPhoneショックを追い風にしました」

「次のGR DIGITAL IIIは歴代でもっとも販売されたGRで、ここから僕とリコーさんのお付き合いがはじまりました。そしてGR DIGITAL IV、2013年にイメージセンサーがAPS-Cになった第5世代のGR、2015年にGR IIが発表になり、2018年にこのGR IIIが発表されました」

「実は第5世代になったときに、コアなGRユーザーが『これはGRじゃない』と言って離れてしまったんです。その人たちに『また戻ってこようよ』というメッセージもこ込めて、セミナータイトルを『GRが帰ってきた』とつけました」

ここから数枚の写真とともにGRの魅力を説明。「カメラが小さくなると世界が大きくなる」など、印象的なフレーズで聴衆を惹きつけ、コンパクトなボディがもたらす恩恵を語っていった。

来場者に役立つであろう情報は、内田さん流の設定方法だ。購入した際に最初にするべき設定を語ってくれた。ただの設定紹介にするのではなく、「GRと仲良くするために」と比喩するところが内田さんらしい。

「ファンクションボタンに好みの機能を割り当てます。僕は一番よく使う『イメージコントロール』を左側に割り振り、クロップをファンクションボタンに入れます。次に、AF補助光や画像再生の自動回転、タッチパネル、電子音などをOFFにします。それから『シャッターボタン確定』をONにします。メニューでせって変更をした時に、OKボタンを押さずにシャッターボタンで確定できる機能です。この状態になって、はじめて僕のデフォルトのGRになるので、この設定をカスタムメニューに登録します」

おすすめの設定を解説した後、初代のフィルムのGRがリリースされた1995年当時のヒット曲「カローラIIに乗って」の歌詞をもじり、GR IIIの作品と進化を語っていった。

「GR IIIを持って散歩に出かけたら、動かないのに気づいて、よく見りゃトランプ」

これはGR IIIとトランプカードの横幅が同じという意味だ。

「GR IIIを持って出かけたら、メディアないのに気づいて、それでもスナップ」

GR IIIはカメラないメモリに画像を保存することができ、メディアが入っていなくとも140枚ほどの撮影ができる。

「『待ちぼうけしている1時間、車は私の図書館になる』という意味の詞があります。僕はこのフレーズが大好きなんです。カメラは人によって形を変えます。対象を観察するためのルーペ、思いを記録するためのメモ帳、誰かとわかり合うための翻訳機……そうやって形を変えられるのもGRの魅力です。そんな手軽さが写真の本当の魅力なんだと、GRを使っていると思います。僕は『写真は言葉の代わりに、光で描く詩』だと思っています」

その後もGR愛が凝縮されたプレゼンテーションが続き、GRのデザイン設計、使用感、機能の特徴、GRを持つことの意味などが続く。最後にGR、ひいては写真業界の未来を語られて、ステージの幕が閉じた。

「GRの名前の由来は諸説あり、そのひとつに『photograph』の中心の『gr』というものがあります。でも真ん中だったら『og』なんですよね。ただ、『toGR』と考えれば真ん中と言えなくもない」

「リコーが元気な野党であるカメラ業界は健全だと思います。リコーがファンミーティングを開催し、ファームアップを次々リリースするような業界です。キヤノンが新しいカメラを作り、ニコンが大きなカメラを作り、ソニーが美しいカメラを作り、リコーが写真の喜びを広めてくれるのではないかと期待しています。僕はGRと一緒に、スナップの未来を見てみたいです」

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。