特別企画

コスパ良好!実売3万円台の写真向けディスプレイVP2468を試す

ハードウェアキャリブレーションにもしっかり対応

ViewSonic VP2468

写真を見る・編集するためのディスプレイとは

写真は楽しい。撮れば撮るほど楽しい。膨大な量の写真をパソコンに保存して後で見返すもよし、RAW現像するもよし、プリントするのもいいだろう。いずれにしても自分の撮った写真はかわいいもので、自宅で撮影後の余韻に浸ることも1つの写真の楽しみ方だと思う。

しかし、いずれのシーンであっても、改めて見返してみたときに「あれ? この写真ってこんな色だったっけ?」と思ったことはないだろうか。その原因、実はパソコンのディスプレイにあるかもしれない。

そもそも、ディスプレイは撮影したデジタルデータを最初に確認するデバイスということになる。この段階で写真の色味が正しく見えていないと、RAW現像で正しい結果を得られないばかりか、プリントとの色が合わなかったりといった問題が起こり得る。せっかく頑張ってレタッチしても、正しい色を表示できていないと意味はない。

正しい色味やコントラストで写真を見るためにはいくつか道具が必要だが、その筆頭に位置付けられる道具が、写真・映像用のパソコンディスプレイであることは、間違いないだろう。

“写真用”のディスプレイと普通のディスプレイとの違いは何だろうか。それはずばり“カラーマネージメント”ができるかどうかだ。カラーマネージメント機能がないディスプレイでは、パソコン側とディスプレイ側で、本来の色情報が正しく再現されているのか、確認する術がないのだ。

このことは、カラーマネジメントに対応していないディスプレイでは正しい色が再現されていない可能性がある、ということを意味している。そうと分かれば、さっそく同機能に対応するディスプレイをネット通販でポチッとしたいところだと思うが、調べてみて驚くのはその価格ではないだろうか。

写真用ディスプレイは高い。場合によっては倍以上のサイズがあるテレビと同じくらいの価格だったりする。以前に比べると、だいぶその値段は下がってきたように感じるが、やはり高い。

前置きが長くなってしまったが、今回はそんな写真用ディスプレイの高価なイメージすらも変えてしまいそうな“コスパ最強”といえる「ViewSonic VP2468」を紹介したい。

外観とサイズ感

VP2468のサイズは23.8型ワイド(16:9)で、デスクトップパソコンのディスプレイとしては平均的なサイズである。デスクに設置したところ、大きすぎず、ちょうどいいと感じられる大きさだった。

外観は締まりのある黒でシャープな印象。スタンド部は、横長の長方形の台座から緩やかなカーブを描く支柱が伸びるスッキリとしたデザインでまとまっている。

側面に目を移すと、液晶パネル部はとても薄くなっていることがわかる。台座とあいまってシャープなデザインで圧迫感がない。奥行きに向けた設置面積も台座の幅に収まっており、配置スペースの調整もしやすいだろう。

近年は、デスクトップパソコンであってもディスプレイ一体型が主流になってきたり、ノートパソコンをメインで使用する人も増加してきており、ディスプレイを単体で使用する機会は減ってきているかもしれない。

しかし、写真をしっかり見るためにはカラーマネージメントに対応したディスプレイを1枚は用意したいところ。VP2468は適度な大きさであるため、13インチのノートパソコンのサブディスプレイとして使用しても丁度いいと感じた。

背面の端子

入出力端子はDisplayPort 1.2(Min DPx1、DPx1,DP out x1)、HDMI 1.4x2、USB:4ポート(アップストリームx1、ダウンストリーム:USB3.0x4)、音声出力:イヤホンジャックx1(3.5mmプラグ)がある。USB端子が多いのはうれしい仕様だ。アナログ入力はなく時代の流れを感じる。

ピボットにも対応

ディスプレイを縦位置に配置するピボットにも対応している。縦位置で撮影した写真でも大きく表示できるため、ひと目で細部を確認できる。ディスプレイを横位置のままで縦写真を表示したものと比較すると、表示されている画像のサイズに2倍近い差があることがわかる。

解像度

VP2468の解像度は1,920×1,080のフルHDだ。残念ながら4K(3,840×2,160)表示には対応していない。

ただ、フルHDでも十分に解像感のある画像が表示され、確認や編集作業をすることができる。4Kディスプレイはまだ高価だ。価格差を埋めるほどの必然性を個人的にはまだあまり感じられない。

液晶パネルには、横から見ても色や輝度が変わらない"SuperColor AH-IPSパネル"を採用している。視野角はなんと上下左右で178度。ほぼ真横から見ても色味が変わらないという優れものだ。

また、本機はパネルフレーム部分が極めて薄いため、写真を全面表示にするとシャープな印象となり気分がいい。ディスプレイを2枚以上並べるマルチディスプレイで使ってもディスプレイ間の境界が短くなり、切れ目が少ないため見やすくなっている。

ハードウェアキャリブレーション

さて、最後にVP2468の一番の特徴である"色"の部分をみていこう。

写真の色情報は奥深く繊細だ。ディスプレイには、その奥深さを再現するための広い色域再現が求められてくるわけだが、VP2468ではsRGBの99%に相当する約1,677万色をカバーしているため、色の機微を余すところなく再現してくれる。

ただしsRGBより広い色域となるAdobeRGBはカバーしきれていない。個人的な話をすると、筆者は撮影時にあえてsRGBで撮影している。これはAdobeRGBの広い色域、特に緑の領域が紙媒体の4色印刷(CMYK)では再現しきれないためで、sRGBのもともと狭い色域のほうが減少率が少なくてすむからだ。

ただ、誤解を生まないように追記するとCMYKの色域を多く使い切れるのはAdobeRGBであることに変わりはない。sRGBはCMYKよりも色域が狭い部分があることでCMYKの範囲内に収まりやすい、ということだ。

話が逸れたが、sRGBの色域を99%カバーするVP2468を最大限にいかすためには、前述したカラーマネージメントが必須となる。カラーマネージメントとは、パソコンの色情報がディスプレイ上で正しく表示されているかを測定し、調整する機能「キャリブレーション」を行うことを指す。

キャリブレーションには大きくわけて2つの方法がある。すなわち、ソフトウェアキャリブレーションとハードウェアキャリブレーションだ。

まず、ソフトウェアキャリブレーションはソフトウェア上で色調整を行うため、キャリブレーターさえあればどんなディスプレイでも調整が可能だが、ユーザーが手作業で調整する部分があるため、調整の幅や精度にばらつきがでる可能性が残る。

こうした調整する人間に左右されず、精度が高く安定したキャリブレーションを可能にするのがハードウェアキャリブレーションになる。これはハードウェアキャリブレーションに対応したディスプレイと、さらにそのディスプレイに対応したキャリブレーターを揃えれば、基本的にほぼすべての調整を自動で行ってくれるため、精度の高い、またバラつきのない調整をすることができるのが特徴だ。

VP2468はこのハードウェアキャリブレーションに対応しており、キャリブレーターはビデオジェット・エックスライト株式会社の「i1Display Pro」と「i1 pro2」の2機種に対応している。対応機種がやや少なく物足りなさも感じるがi1 Display Proが3万円前後とキャリブレーターとしては比較的リーズナブルな価格となっているので、良しとしたい。

さっそく、i1Display Proを使ってVP2468をハードウェアキャリブレーションしてみた。

これがi1Display Proのキャリブレーターだ。

カラーキャリブレーションは、ViewSonicとビデオジェット・エックスライト株式会社が共同で開発したソフト「Colorbration」を使って行う。

ハードウェアキャリブレーションというと難しそうに聞こえるが、実際はColorbrationの指示に従って作業を進めていくだけで自動的に測定と調整が進むため難しいことはない。

ソフトの指定に従い、ディスプレイのキャリブレーションを開始。

測定が完了。ICCプロファイルを作成して保存することで、いつでも測定したプロファイルを呼び出して適用できる。

なお、キャリブレーションはディスプレイの個体差や経時変化などのバラつきを計測して調整する点でも有効。2週間か長くともひと月ごとには行うように心がけたい。

まとめ

ViewSonic VP2468は写真用ディスプレイに求められる性能を満たしている。画面の大きさ、ピボット機能、解像度、色域、そしてハードウェアキャリブレーションと、写真を正確に、そして鮮やかに見るためのディスプレイとして、その性能は十分だといえる。

ここまで揃っているのに実勢販売価格が3万円強と破格。コスパ最強、これが本機種の最大の特徴だろう。

繰り返しになるが写真用ディスプレイはキャリブレーターとセットで使う必要があり、その出費を考えるとやはりディスプレイが安いに越したことはないのだ。

加えてVP24688は、工場出荷時にキャリブレーションが行われている。この辺りも写真向けを謳う理由の一つで、仮にキャリブレーターを持ってなかったとしても、一般的なモニターと比べてそもそもの色精度は高いといえる。

高価なイメージから写真用ディスプレイに二の足を踏んでいた方や、モニター一体型のパソコンやノートパソコンのユーザーにも、写真の確認やRAW現像、プリントとの色合わせ用のディスプレイとしてVP2468をおすすめしたい。

制作協力:ViewSonic

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。