おもしろ写真工房
「網フィルター」を作ってみよう!
アナログモザイクの微妙な味わい
(2013/2/7 00:00)
どうやっていろんな実験を思いつくのか?
いろいろと実験的な写真を撮っているので、「どうやって思いつくのか?」という質問をよく受ける。だが、そんなに独創的なことを思いついているわけではなく、やってみたいと思った課題に対して、改良を加えたり、いろんなバリエーションを考えているに過ぎない。
たとえばビー玉を指で摘んで撮影していた時に、「指が邪魔なんだよな」と思って宙玉レンズの手法を思いついた。最初は薄い塩ビシート2枚で挟んでいたのだが、それだと球とシートの接着箇所も写りこんで美しくないので、接着したところがボケて写るような改良を加えた。
前回はカメラトスの紹介をしたが、カメラトス自体は私のオリジナルアイディアではない。ただ、一眼レフを投げるのは恐いという人のために、パラシュートを使ったり、ボールの中にカメラを仕込んだりという方法を、ああでもないこうでもないと考えたわけだ。そう言えば、あの記事を見てカメラトスを敢行した友人がレンズを壊してしまったそうです。マウントからレンズが外れてしまったそうだ。そんな壊れ方もあるんだねえ。(インリン君、ご報告ありがとう。勉強になりました! 合掌)
フィルターを使って何か実験しようと思った時も、ただ家の中でウンウン唸って考えているというわけではない。とりあえず、100円ショップやホームセンターを目指すのだ。そしてフィルターになりそうなものを見つけだしてきて、愚直にひとつずつ試してみる。そして今までに見たことのないような描写になれば儲けものということだ。
フィルター用の素材探しには2つの方向がある。1つはゲル状の透明な物質探しと、もう1つは布やビニールなどの半透明なシートを探すことだ。ゲル状の透明な物質というのはたとえば、髪に塗るディップローションのようなものをガラスやアクリルの透明フィルターに塗りつけるのだ。わざとムラになるように塗りつけるとそこで光が微妙に屈折する。
ただしディップローションをそのまま使っているとベタベタなので、次に使い始めたのがネイル用のトップコートだ。これは爪に塗ってツヤを出すためのものだけど、すぐに乾くところがいい。やはりわざとムラに塗り、さらにサインペンなどで色をつけて使う。
―注意―- この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はデジカメWatch編集部、上原ゼンジおよび、メーカー、購入店もその責を負いません。
- デジカメWatch編集部および上原ゼンジは、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。
透ける素材を試してみる
「紗(しゃ)がかかったような」という言い方があるが、「紗」というのは、絹糸を使った透ける布地のこと。ソフト効果を出すために絹製の「紗」を使うことはほとんどないと思うが、パンティーストッキングなど使う方法は良く知られている。ただし実際にパンストを使って撮影してみるとかなり薄いものを強めに引っ張って使わないときちんと透けて写らない。つまりソフト効果を狙って素材を探す場合はかなり薄い布地やビニールシートなどを探す必要があるということだ。
何度か実験をしているので、私の研究室にはいろんな素材がある。しかし、そんな中で買いはしたものの放置してあったものを段ボール箱の底から発見してしまった。調理する時に使うストレーナーだ。大きさもちょうどレンズに合いそうだ。これをホームセンターで見つけた時は「よっしゃあ!」と思って連れ帰ってきたのだが、家に戻って落ち着いてみれば、そんなに素晴らしいものではなかったですね。買ったことも忘れてしまっていた。
しかし、発掘したのを機に、ちょっと実験してみることにした。これをレンズのフィルター枠にテープで留めて撮影したのが以下の写真。この網フィルターのあるなしで比較してみると、わずかにボケてコントラストが低下しているのが分かるが、期待したようなソフト効果は得られていない。つまり失敗でした。でもせっかく作ったのだからと、フォーカスを変えていろんなものを覗いていたら、けっこう面白い。なんだかモザイクをかけたような感じになる。せっかく工作したのだからと、ちょっと外に持ち出してみることにした。
さらに水を付けてみると
以下はテスト撮影した時の写真。なんかモザイクのような感じで面白いですね。ちょっとしたピントのずらし方で描写が変わるので、ファインダーを覗いてフォーカシングをする作業が楽しい。基本的には被写体にはピントは合っていない。だからレンズ自体のボケ味というのも重要になる。そのボケ画像と網に当って回折したり反射した光が混ざって、こんなふうに見えるということでしょう。なんか不思議な感じ。
特にいいと思ったのはトワイライトでの撮影。被写体の中に街の灯りなど光源があると、そのボケと網がミックスされて効果的だと思う。この調理網の網目は四角い升状になっているが、これを平行にするのか、角度を付けるのか、といったことでも印象は変わる。被写体により、角度の調整をしてみいいと思う。
テスト撮影の後に飲み会の席でこの網フィルターを見せたら、「その網に水を付けてみたらどうだろう?」というアイディアを貰った。黒川洋行さんありがとうございます! いいじゃないですか。でもそのアイディアは水玉写真とか撮ってる自分で出したかったな。
そして翌日早速テストをしてみたのだが、思ったような効果は得られなかった。というか、水を付けてもどんどん流れてしまうので、撮影にならない(笑)。それに網の目が小さいから、何かが写っていても、いまいちよく分からない。少なくとも屋外での撮影にはちょっと不向き。
しかし、家に帰ってさらに実験をしてみたら、水の付いた升がひとつひとつレンズになっていることが確認できた。これは面白いかもしれない。すぐに消えてしまう水製レンズは、スローモーションのムービーで撮影するといいかもしれない。そしてミスト発生装置かなんかで水滴を発生させ、レンズ越しの被写体が現れたり消えたりするのを撮るというのを思いついた。どんどんやることが増えてしまうなw