特別企画

カメラを放り投げてみよう!

空中から撮影するセルフポートレイト

 カメラを空中に投げて撮影する技法は「カメラトス」と呼ばれるが、広角系のレンズを使って空中から自分撮りをすることもできる。当然危険を伴うので、チャレンジする人は自己責任でお願いします!

ソニーのアクションカム「HDR-AS15」を空中に放り投げて撮影。4倍のスローモーションで撮影し、JPEGに切り出した。

長時間露光がメインのカメラトス

 カメラトスにチャレンジしたのは、ブレ写真の一環としてだ。最初は単純に手ブレ写真を撮っていたのだが、自分の手を動かして撮影するとその動きがあざとい感じがして気に食わず、バネやゴムを使ってカメラを動かすようになった。そんな時カメラトスという技法を知り、自分でも試してみることにした。

 誰が最初に始めたのかは分からないが写真共有サイトであるflickrにカメラトスのグループ「Camera Toss」があり、そこに世界中の人たちがカメラトスで撮影した写真を投稿して広まっていったようだ。今回はセルフポートレイトの方法を紹介するが、カメラトスのメインは長時間露光でライトを撮影する方法だ。

 カメラにひねりを加えながら放り投げると点光源がきれいな軌跡を描くようになる。2度と同じにはならない偶然の曲線が美しく、世界中の人たちが試すようになったのだ。最初は私も「カメラを放り投げるなんて」とは思った。ただ、今までにカメラを壊したことはないし、気をつけてやればそんなに危険な行為ではないということがわかった。試してみたい方は、「ブレ写真を撮ってみよう」のiPhoneを使ったカメラトスをご参考に。

一眼レフカメラを放り投げるコツ

 さて今回はカメラトスによるセルフポートレイトの撮影法の紹介だ。もともとはこんなことをするつもりはなかったのだが、カメラトスの取材がしたいという依頼をきっかけに、サービス精神でついやってしまった。やってみれば緊張感が楽しかったりもするんだけど……。

 以下は一眼レフカメラを使って空中セルフポートレイトを撮る方法だ。顔に落としたら鼻骨骨折で鼻血が止まらなくなるかもしれないし、眼窩底骨折でまぶたが腫れ上がるかもしれない。地面に落としたら、大事なカメラが大破するかもしれないので、挑戦する方は自己責任でお願いします。

  • 私は基本的に芝生の上でやってます。しかしアスファルトや石畳の上でやって落っことしている馬鹿者も海外には大勢います。
  • レンズの画角は広い方がいい。できれば魚眼。でも魚眼レンズは高いから、落とした時の損害も大きいよね。わざわざ買う必要はありません。
  • ピントはマニュアルにしてだいたいの位置に合わせておく。露出もマニュアルで設定。感度は高めにして、絞りは深め、シャッタースピードは早めにする。
  • セルフタイマーを2秒にして、1.5秒ぐらいをハートの中でカウントして真上に放り投げる。イメージとしては投げるというより“宙に置く”とか、押し出す感じ。

 ポイントは空中でカメラを回転させずにレンズを下に向けたままにしておくことだが、これが難しい。スクワットのような感じで膝を曲げ伸ばしするが、この時背筋はずっと伸ばしたまま。前かがみにならないようにする。心を鎮め、変な力が加わらないように、ゆっくりとリリース。傍から見ていると、弓道かなんかをやっているような所作に見えるらしい。フォームの美しさも加点対象としたカメラトスコンテストがあってもいいかもしれないな。

ニコンD90にAF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm F2.8 G ED(35mm判換算15mm相当)の魚眼レンズを付けて撮影。しっかり魚眼レンズの効果が出てますね。このカメラはセルフタイマーで連写が効くというのがポイント。1/640秒 / F6.3
この時は放り投げるところを取材された。横で見ていられると緊張してなかなか真っすぐに飛ばない。
緊張して眉間に皺が寄ってしまっている。まだまだ修行が足りない。ニッコリ笑って投げないといけないな。
この時はテレビの取材があった。実は周りに撮影クルーがたくさんいる。富士フィルム FinePix S5 Pro+AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED。1/400 秒 (f/16.0)

iPhoneにパラシュートを付けてみる

 ふつうの人は顔をしかめるような撮影法だが、自分でもやってみたいという人も意外に多い。ただ危険も伴うので、初心者でも簡単にできるような方法をちょっと考えてみた。まず落とした時の衝撃のことを考えたら、カメラにはプロテクターがあったほうがいい。またカメラトスとしては邪道になってしまうが、ヒモを付けたり、パラシュートを付けたりという方法もありだろう。

 カメラとしてはコンパクトで画角が広く、セルフタイマーの後に連写できる機能があるといい。画角が広いということは重要で、少ししかカメラが上がっていないのに、高く放り投げたような感じに写る。それから連写機能も重要。多少カメラが回転してしまっても、ちゃんと写っているカットがたった1枚あればいいので、空中でたくさん撮影できることが望ましい。

 そんな条件でまずテストをしたのがiPhoneにパラシュートを付ける方法だ。電話として使っているものを放り投げたくはないが、新機種に乗り換えたので、旧機種にちょっと飛んでもらうことにした。画角を広げるために魚眼レンズ「GIZMON iCA FISH EYE LENS」を装着。連写は「Fast Camera」というアプリをインストールして対応。

 テスト結果は悪くはなかった。しかし難点はパラシュートが開くのがちょっと遅かったということ。着陸前には開いていたので壊れることはなかったのだが、できればもっと高い位置で開いて欲しかった。ただiPhone+魚眼レンズ+連写アプリの組み合わせはGood。

空から舞い降りて来たiPhoneの勇姿。放り投げる前から着地してストップするまで、ずうっと連写しています。
パラシュートを放り投げる娘(中学1年生)。今回は家族写真に挑戦した。
なかなかパラシュートが開かないので、ビニール風呂敷の柄が写っている。
パラシュートが開こうとしているところ。パラシュートがフレーム内にあると、そちらの方にピントが合ってしまう。
パラシュートは最高到達点ではなく、落下途中で開くためになかなかうまく撮影することができなかった。
結局、うまく撮影できたカットはなし。この影はちょっと面白いけど。

ボールにアクションカムを仕込む

 もう1つ試した方法はアクションカムを使う方法。アクションカムというのは、自転車に装着したり、スカイダイビングの記録ができたりするコンパクトなムービーカメラのこと。最近は解像度が上がってきているので、切り出した画像をプリントすることも可能だ。ムービーで連続的に撮れるのが魅力だし、もともと画角の広い機種が多いのだ。

 有名なのが「GoPro」だが、今回採用したのはソニーのアクションカム「HDR-AS15」。大きなボタン1つで録画のオンオフができて、120コマ/秒のスーパースロー撮影ができるのが魅力。これは元々頑丈にできているはずだが、さらに衝撃を和らげることと、空中で安定させることを目的にプロテクターをいろいろ考えてみた。

 まず最初にやったのは、低反発のウレタン素材で挟み込む方法。レンズと反対側にオモリを仕込み、上昇中に地面側の撮影をし、レンズと反対側から落ちてくるという仕組みだ。レンズから落ちないようにという工夫である。悪くはなかったが、キャッチしやすい形状にしたり、オモリとのバランスをとったりするのがちょっと難しい。

 それでいろんなクッション素材を検索していて見つけたのが、モルテンのソフトスポンジボール。これは球状のスポンジを表面加工したもので、ドッジボールなどに使うものらしい。これにアクションカムが入るような穴を空けて差し込んだだけなのだが、なかなか調子が良かった。ボールだから投げやすいしキャッチしやすい。むき出しの一眼レフを放り投げるのとでは精神的なプレッシャーも大違い。

 それからムービーで撮るというのもすごく楽だった。録画オンにした状態でボールに仕込み。連続的に何度か放り投げれば当たりのカットがあった。一眼レフだといちいち精神統一をしたりするから疲れちゃうんですよ。画質的には当然一眼レフの方がいいけれど、気軽さという点では比較にならない。アクション用のムービーカムということに囚われずに発想すれば、まだまだいろんな使い方ができそうなカメラだ。この分野の今後に期待!

ボールカメラ(左)とパラシュートカメラ(右)。作り方は後半で。
ボールカメラを投げる直前。精神統一中。
「とりゃー!」っていう感じでもないか。あんまり高く投げようとすると回転してしまうので、あまり力まずに。
こんな感じで撮れた。一眼レフだと顔が緊張してしまったが、ようやく笑顔で撮影できた。ありがとうボールカメラよ!

 ちなみにボール型のカメラというのはすでにいくつかある。たとえば36個のカメラモジュールを搭載して、360度の全球パノラマ撮影ができる「Throwable Panoramic Ball Camera」や災害時などに人間の代わりに室内の映像を撮影したりするために開発された「Bounce Imaging」など。もちろん私が工作したのはこんな高機能ではありませんが……。

工作と撮影方法

・パラシュートカメラの作り方

 手作りのパラシュートにiPhoneをぶら下げる方法。

カメラとして使ったのは「iPhone 4」。それをカメラ型のiPhoneケースである「GIZMON iCA feat.あいか」(「私立恵比寿中学」の「廣田あいか」のカラーリング)にセットした。
GIZMON iCA feat.あいかに魚眼レンズを付けたところ。ネジ式でカバーにしっかり留まっているので、簡単に外れてしまうことはない。
ストラップ用の穴と三脚ホルダーに糸を付けて固定。レンズが下向きで落ちてくるようにバランスをとった。
ビニール風呂敷(90×90cm)を六角形に切ってパラシュートにした(右)。傘を利用しようかとも思ったのだがバラしただけで不採用(左)。
パラシュートのヒモを付ける部分は厚紙で補強。“釣り糸の結び方”で検索して、糸をしっかりと結んだ。
iPhoneの連写アプリ「Fast Camera」(170円)。デフォルトはの解像度はVGA(640×480ピクセル)なので、プリントしたい場合は5MBにしておくといい。セルフタイマーもあるので、これも使える。

・ボールカメラの作り方

スポンジボールにアクションカムを仕込んだ状態。画角は170度か120度の選択が可能。この場合は当然、広い方が有利。
ボールはモルテンのソフトスポンジボール(16cm)を使用。アクションカムが入る穴を空ける。カッターを長く出して、刺すようにして切ったが、柔らかいしカットしやすかった。
アクションカムでの設定。スローにして当たりを多くするなら「SSLOW」(120コマ/秒、1,280×720ピクセル)、解像度を上げたければ「HQ」(30コマ/秒、1,920×1,080ピクセル)あたりがいいだろう。
ボタンは3つだけで設定、操作を行なう。設定ができたら、赤いボタンを押してオンオフの切り替えをするだけ。ボタンを押して録画を開始したら、ボールに挿入して放り投げればいい。

・iPhoneのクッション包み

 パラシュートではうまく撮影ができなかったので、ただプロテクターをしただけで放り投げるというのもやってみた。

低反発のクッションを切りiPhoneのガードにする。はずれないようにマジックテープ付きのゴムバンドで固定。
これも連写アプリFast Cameraを使って撮影。パラシュートと違って今度はうまく撮影できた。
高く放り投げれば、こんな撮影もできる。一眼レフだとここまで高く投げることはできない。iPhoneもやるじゃないか!
低反発のスポンジは手芸用品売り場で買ったクッション用のもの。
iPhoneにはパラシュートで使ったカメラ型ケース「あいか」+魚眼レンズがついている。
マジックテープ付きのゴムバンドは100円ショップで購入。ゴムが入っているので、これ自体がクッションになる。

・アクションカムにヒモを付けて振り回す!

 カメラトス界では禁じ手とされている方法だが、そんなことは関係ない。落とす心配はないし、ムービーなら簡単に撮影できそうだ。

アクションカムに透明の紐を付け、マジックテープ付きのゴムバンドを2本巻く。落とした場合のクッションにもなる。
ゴムバンドを外すとこんな状態になっている。輪ゴムに透明の紐が付いている。これはシリコン製なので、伸縮するのだが、釣りに使うテグスの方が入手しやすいだろう。
結び目をレンズ側にすることにより、振り回した時に常に自分の方を向くようにした。
「おっしゃー、振り回したるでー!」と秘かに闘志をを漲らせている筆者。
まず振り子のように動かして反動を付ける。
はい、こんな感じです。けっこう速いスピードで回転させているので、カメラ目線で撮影するのはわりと難しい。
この写真は説明されないとどう撮ったのか分からないね。指先から天空に向かいフォースが出ているようだな。

告知

 12月9日(日)に下北沢で万華鏡のワークショップを行ないます。ご興味のある方はぜひどうぞ! 詳しくはコチラ

  • 名称:ゼンラボ・ワークショップ〈万華鏡の巻〉
  • 会場:カフェ&ギャラリー「バロンデッセ」
  • 住所:東京都世田谷区北沢2-30-11
  • 開催日:2012年12月9日
  • 時間:10時〜12時
  • 定員:7名(申し込み先着順)
  • 参加費:3,500円(ワンドリンク付き)+2,500円(万華鏡代)

上原ゼンジ

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン刊)、「写真の色補正・加工に強くなる〜レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社刊)などがある。
上原ゼンジ写真実験室 / 宙玉レンズの専門サイト / ゼンラボ通信購読 / Twitter:Zenji_Uehara / 「上原ゼンジ写真実験室」のFacebookページ