新製品レビュー
キヤノンPowerShot G3 X(外観・機能編)
雨天にも強い光学25倍ズーム+1型センサー搭載機
Reported by 永山昌克(2015/6/30 08:00)
高機能なコンパクトデジタルカメラ、キヤノン「PowerShot G」シリーズの新顔として「PowerShot G3 X」が登場した。同社は昨年、1.5型センサー&光学5倍ズームの「PowerShot G1 X Mark II」と、1型センサー&光学4.2倍ズームの「PowerShot G7 X」を発売しているが、今回のモデルではズーム倍率を大幅に高め、1型センサー&光学25倍ズームレンズを搭載している。
昨年の2台に比べると、ボディは一回り以上大きくなっているが、それでもセンサーサイズとズーム倍率を考慮すれば、小型軽量といっていい。35mm換算の焦点距離は、ワイド端が24mm相当で、テレ端は600mm相当となる。
発売は6月25日。価格はオープンプライス。直販価格は税別10万6,800円。今回のレビューでは、その外観と機能をお伝えしよう。
しっかりとした作りの防塵防滴ボディ
ボディは、四角い本体に円柱状のレンズを組み合わせた正統派のカメラデザインとなる。グリップ部分は大きく突き出ていて、ホールド感は良好だ。各部の作りはしっかりとしていて、質感の高さも感じられる。
そのうえ防塵防滴に対応する。短時間なら小雨程度の環境下でも使用できるという。アウトドアユースにうれしい仕様だ。
ボディサイズは幅123.3×高さ76.5×奥行き105.3mmで、使用時重量は733g。コンパクトデジカメと呼ぶにはやや大きくて重いが、1型センサーを搭載した高倍率ズーム機としては比較的コンパクトにまとまっている。
マクロ撮影にも役立つ光学25倍ズーム
いちばんの見どころは、24-600mm相当の光学25倍ズームレンズを搭載すること。同じく1型センサーを搭載した高倍率ズーム機に、光学8.3倍のソニー「サイバーショットDSC-RX10」や、光学16倍のパナソニック「LUMIX DMC-FZ1000」などがあるが、それらに比べて小さなボディにもかかわらず、より高い倍率を実現している。
レンズの開放値は、ワイド端F2.8、テレ端F5.6となる。テレ端は特に明るいとはいえないが、とりあえず実用的な開放値といっていい。
マクロ性能は強力だ。最短の撮影距離は、ワイド端で5cm、テレ端で50cm(レンズ先端から)に対応。ズームの中間位置では名刺の半分程度のサイズを、ズームのテレ端では名刺のほぼ全体を、それぞれ画面いっぱいに捉えることができる。離れた位置から植物や昆虫などを接写する用途にうってつけだ。
手ブレ補正は、光学式の補正機構を搭載する。アクチュエーターを新規設計することで、これまでは困難だった2群レンズでの手ブレ補正に対応し、収差や周辺光量落ちを抑えつつ、効果3.5段分の補正を実現したという。試用では、ズームのテレ端を手持ちで慎重に構えて撮った場合、シャッター速度1/125秒なら約7割のカットを、1/60秒なら約5割のカットをブレなしで撮影できた。
高倍率をサポートする機能としては「フレーミングアシスト(探索)」を搭載する。望遠で撮る際、レンズ側面のボタンを押すことで一時的にズーム倍率を下げて、見失った被写体を再発見できる仕組みだ。
さらに、被写体の大きさが一定に保たれるようにカメラが自動でズームイン/ズームアウトを行う「オートズーム」機能や、見失った被写体が見つけやすくなるように自動的にズームダウンが行われる「サーチアシスト」機能も備える。動き回る子どもや動物などの撮影に役立つだろう。
自分撮り対応のチルト可動液晶を装備
液晶モニターには、約162万ドットの3.2型TFTを搭載。上に180度、下に45度まで回転するチルト可動式で、静電容量式のタッチパネルにも対応する。液晶には十分な明るさと精細感があり、屋外でもまずまずの見やすさだ。
電子ビューファインダーは非搭載で、オプションでの対応となる。しっかりと構えて撮影したいときは、オプションのEVF「EVF-DC1」を用意したい。標準装備でない点は少々残念なところ。
バルブ撮影やズームメモリー機能を搭載
AFは、コントラスト検出方式となる。AFスピードは、ズームのワイド側でもテレ側でもまずまずの速度で作動する。本格的なスポーツ撮影用には厳しいが、ちょっとしたスナップならAFに不満を感じることは少ない。
連写は、最高で約5.9コマ/秒に対応。ただし、この連写速度はAF動作が「ワンショットAF」で、記録ファイル形式がJPEGの場合だ。連続的にピントが合う「サーボAF」では連写速度は低下する。またRAW記録では、連写速度は大幅に落ちる。
動画は、最大で1,920×1,080/60pのフルHD記録ができ、ファイル形式はMP4となる。動画撮影の際は、光学ブレ補正に加え、平行移動時の電子ブレ補正や、水平・縦回転の歪み補正も可能になっている。
そのほか、ズーム位置やフォーカス位置を記憶するズームメモリー機能や、光量を3段分減光するNDフィルター挿入機構、星空を光跡として記録する「星空」モード、1回のシャッターでエフェクト付きの6カットを同時記録できる「クリエイティブショット」などを搭載。Wi-Fi/NFCによるリモート撮影も可能だ。
高倍率+高機能で幅広いシーンに対応できる
トータルとしては、撮影自由度が非常に高いカメラだと感じられた。光学25倍という幅広いズーム域に加え、オートからマニュアルまでの多彩な機能によって、あらゆる用途に対応できる。RAW記録での連写スピードが遅いのは残念だが、それ以外のレスポンスに大きな不都合はない。
電子ビューファインダーがオプションであることは評価が分かれるだろう。装着すると少々かさばり、バッグへの収納性が悪くなる。外部ストロボと併用できない点も、ストロボを多用する私としてはやや困る。ただ、ファインダーを外付けにしたからこそ他機に勝る小型軽量ボディを実現できたともいえる。
一眼レフの場合はなにかとハードルが高くなりがちな600mm相当の撮影を、スナップ感覚で楽しめることがPowerShot G3 Xの最大の魅力だ。有効2,020万画素の1型CMOSセンサー+処理エンジン「DIGIC 6」が生み出す画質がどのくらいなのかは、次回の実写編でお伝えしよう。