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キヤノン、「PowerShot G3 X」をブロガーミーティングで解説

1型センサーの画質に高倍率ズーム、レンズに込められた技術とは

PowerShot G3 X。発売は6月25日。価格はオープンプライス。直販価格は税別10万6,800円。初回5,000台限定で、EVFをセットにした「PowerShot G3 X EVF KIT」が用意される。EVF KITの直販価格は10万9,800円。

キヤノンマーケティングジャパンは6月18日、ブロガー向けのイベントとして「Canon 高級コンデジ ブロガーミーティング」を開催した。

このイベントは、同日に発表されたレンズ一体型デジタルカメラ「PowerShot G3 X」(6月25日発売)を対象とし、製品の担当者によるプレゼンテーション、タッチアンドトライなどが行われるというもの。

キヤノン株式会社イメージコミュニケーション事業本部ICP第一開発センターの難波則廣室長
キヤノンマーケティングジャパン株式会社イメージングシステムカンパニーイメージコミュニケーション企画本部カメラ商品企画第二部の阿部俊介氏

画質とズーム倍率を両立

キヤノンマーケティングジャパン株式会社イメージングシステムカンパニーイメージコミュニケーション企画本部カメラ商品企画第二部の阿部俊介氏はPowerShot G3 Xについて、「今年2月にCP+で参考出品した製品を約4カ月後となる今月に満を持して発表することができた」といい、製品の特徴として、35mm換算で24-600mmの光学25倍ズームレンズを挙げた。また、それを1型センサーと両立したことをポイントとした。

さらに、それら特徴をもちつつも、コンパクトなサイズに収められたというのが最大の特徴だという。

他社1型センサー搭載機との比較図
他社1型センサー搭載機との焦点距離の違い
センサーサイズ図
1型センサーのメリット

製品開発のきっかけに関しては、従来の高級コンパクトデジタルカメラ全般に見られる「ズームを優先すると画質に不満がでる」「画質を優先するとズーム倍率が少なくなる」という意見を見てのこと。画質と焦点距離の両立がユーザーのニーズであり、それを両立したのがPowerShot G3 Xであると結んだ。

24-600mm相当の光学25倍ズームレンズを搭載

また、PowerShot Gシリーズには、1.5型の大型センサーモデルのフラッグシップ機「PowerShot G1 X Mark II」、昨年発売したコンパクトな1型センサーのプレミアムモデル「PowerShot G7 X」、そして今までなかった高倍率ズームレンズと1型センサーを組み合わせたPowerShot G3 Xを投入することで、PowerShot Gをよりプレミアムブランドとして強化していけるとした。

これまでの常識を覆す豪華なレンズを搭載

キヤノン株式会社イメージコミュニケーション事業本部ICP第一開発センターの難波則廣室長は、IXY、PowerShotにおける光学系の開発を行っている立場から、PowerShot G3 Xの光学系に関して説明した。

まず、使用しているレンズの数について、コンパクト機に採用する枚数としては、多いという18枚のレンズを使用。

また、18枚のレンズを6つのグループに分け、25倍のズームをPowerShot G3 Xの大きさに抑えるために6群ズーム方式として開発したという。

レンズ構成図

同氏によると、600mmの焦点距離できちんとした画を撮るために、手ぶれ補正は重要であり、手ぶれ補正を効果的に利かせる手段として、第2群のレンズをシフトする防振方式を採用したという。これはキヤノンのコンパクトカメラで初となる「2群防振機構」。従来機などで多く採用されている第3群のレンズをシフトする方式とは異なる。

その理由として同氏は、「絞りの近くにある第3群レンズをシフトする方式は、ユニットの小型化という意味では効果的だが、600mm相当の超焦点で防振を効かせると考えたとき、より効果的な第2群のレンズをシフトする方式を選択した」という。

600mmは画角が狭く、撮影画角に対しての手ぶれの角度というのは比率として大きくなるという問題に対し、光学系として課題となるのが、レンズシフトした際の光量の確保と光学性能を如何に維持するかだとし、その解決方法として「2群防振機構」が採用された。

さらに、ズーム全域にわたって良好な性能を得るため、UDレンズ3枚(Hi-UDレンズ1枚/UDレンズ2枚)と非球面レンズ4枚を搭載した。3枚のUDレンズは、600mmという超望遠で色にじみを効果的に抑えるためのもので、光学65倍ズーム機である「PowerShot SX60 HS」と同じ枚数を誇る。また球面収差、コマ収差を補正する非球面レンズに関しては、他の同社製品と比べても多い枚数を採用している。

レンズテクノロジー紹介
構成レンズ比較

望遠端における最短撮影距離は85cmであり、600mmにしては「かなり寄れる仕様」になったといい、結果的に背景のボケなども効果的に強調できるようになったという。

高倍率ズームに防塵防滴…画質も良好で「山にぴったりのカメラ」

山岳写真家の岩橋宏倫氏は、自身のフィールドである北アルプスの燕岳、そして立山や志賀高原でPowerShot G3 Xの性能を試したという。

山岳写真家の岩橋宏倫氏

はじめの感想として、高倍率と防塵・防滴という仕様は、山に向いているカメラだと思ったという。

さらに、山で撮影する場合、カメラ一式だけで20kg近くなってしまうが、そのほとんどがPowerShot G3 Xだけで済んでしまうからだという。自身は500mmのレンズを持っていくが、普通の登山者であれば500mmのレンズを持っていくのは難しい。しかし、PowerShot G3 Xであればそれを上回る600mm相当で撮影でき、登山者が想像もつかない世界を体験できるとの説明もあった。

防塵・防滴構造

撮影画質に関しては、プリントするとまた違った印象を受けるかもと前置きしつつも、「PC上で見る限りではデジタル一眼レフカメラと遜色ない」と言及。パッとみた限りではどれが一眼レフで撮影したのか、コンパクトなのかわからないできだという。「いかにもコンパクトで撮影した写真という印象ではない」という点を強調していた。

日の出を鑑賞する人々を後ろから撮影した作例では、太陽の中心こそ白トビしているが、人物のシルエットを含む階調はしっかり出ており、空のトーンジャンプも見られないと評価。

「星空」モードを使って撮った作例では、「画角さえ決めてしまえばカメラ任せで撮影できる」特徴をピックアップ。他の機材を使ってコンポジット合成した写真と比べると、ピントもきているし、後処理もしっかりしている。合成しただけで何も処理していない写真と比べたら、星空モードで撮影した写真の方がキレイだったという。

イベントではプレゼンテーションの後、参加者はタッチアンドトライとして施設内での撮影に臨んだ。

キヤノンコンパクトデジカメ初のバルブ撮影も可能になった。リモートスイッチと組み合わせて、本格的な花火撮影が楽しめる。

(飯塚直)