新製品レビュー
ソニーサイバーショットDSC-HX90V
胸ポケットにおさまる30倍ズーム。EVFも搭載
Reported by 北村智史(2015/6/26 07:00)
シャツの胸ポケットにおさまるスリムなボディに光学30倍ズームとポップアップ式EVFを搭載したハイパフォーマンスモデル。2014年3月に発売されたサイバーショットDSC-HX60Vの後継となる。
先代に装備されていたアクセサリーシュー、露出補正ダイヤルは省略されたが、その代わりに、チルト式の液晶モニターやレンズ基部のコントロールリングが追加された。ボディカラーはブラックのみ。発売は6月5日。実勢価格は税込5万9,270円前後。
ポケットサイズに30倍ズーム。EVFも内蔵
ボディの大きさは幅102×高さ58.1×奥行き35.5mm、重さは245g(バッテリーとメモリーカード含む)。ひとつ前モデルのHX60Vに比べると、幅、高さ、奥行きともに小さく、そして軽くなっている。サイズ感としては、高級タイプのコンパクト機と大差なく、シャツの胸ポケットにもすんなり収納できる。
搭載レンズは新開発のバリオ・ゾナーT*4.1-123mm F3.5-6.4。フルサイズ換算で24-720mmに相当する光学30倍ズームだ。HX60VはGレンズだったから、ワンクラスアップといえる。同社のウェブサイトのスペック表には「光学式手ブレ補正」とあるが、レンズシフト式かセンサーシフト式かは記載されていない。2倍の全画素超解像ズーム(最大1,440mm相当)、4倍のデジタルズーム(最大2,880mm相当)も装備している。
レンズ基部にコントロールリングを新設。絞りやシャッタースピード、露出補正、ステップズームなどの操作が行なえる。
撮像センサーは1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサーで、有効画素数は1,820万画素。画像処理エンジンは、同社の一眼カメラにも搭載されているBIONZ Xだ。ISO感度の設定範囲は、ISO80からISO3200まで。マルチショットNR(ノイズリダクション)時は最高ISO12800までとなる。
電源は、容量1,240mAhのリチウムイオン充電池。CIPA基準の撮影可能枚数は、モニター撮影で390枚、EVF撮影だと360枚。コンパクトカメラとしてはまずまずの数字といえる。ストロボ撮影なし、動画記録少々で420枚ほど撮ったが、バッテリーの残量表示はひと目盛り減っただけだった。
記録メディアは1スロットでメモリースティックデュオ/PROデュオなど、またはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(UHS-I対応)の使用が可能。実写でのファイルサイズは、Lサイズ、ファイン画質で約7.1MB程度だった。
小型ボディにEVFを内蔵
内蔵EVFは、左手側側面にあるファインダーポップアップスイッチを押し下げることでポップアップする。接眼部を引き出す必要があるのはちょっと面倒だが、それほどたいした手間でもない。電源オフの状態でEVFをポップアップすると、自動的に電源がオンとなる。セットアップメニューの「ファインダー収納時の機能」で、EVFを押し下げたときに電源を自動的にオフにするかどうかを選択できるようになったのは便利な点だ。
0.2型のOLED(有機EL)パネルを採用しており、解像度は63.84万ドット。ファインダー倍率は0.5倍相当となっている。スペックとしてはやや小粒だが、これだけ小さなボディに詰め込んでいるのだから、あまり多くは望めないだろう。むしろ、価格帯から考えれば、十分に満足できるスペックだと思う。EVFとモニターの切り替えは、アイセンサーによる自動。切り替えのタイムラグはやや長めの印象だ。
ファインダー像は、くっきりとハイコントラスト。シーンによってはドットが目に付くこともあるが、液晶モニターが見づらくなりがちな日中の野外では助けになるし、望遠撮影時に安定した構えができるメリットは大きい(ただまあ、コンパクトサイズな分、窮屈ではあるが)。
液晶モニターは3.0型、92.16万ドット。タッチパネルはない。上向き180度まで動かせるチルト式で(下方向には動かせない)、自分撮り時には自動的に3秒のセルフタイマーに切り替わるといった配慮もある。
まとめ
本機のいちばんの魅力は、シャツの胸ポケットに入れても苦にならない小ささと軽さで30倍ズームを搭載しているところだ。高倍率ズームといえば、一眼レフっぽいスタイルの大柄なカメラが当たり前で、だから、本機のような気軽に持ち歩ける高倍率機は、それだけで価値がある。しかも、このサイズなのにEVFまで内蔵しているのもすごい。
1/2.3型センサーとあって、ピクセル等倍で見ると、ちょっとなぁ、と感じる部分はあるものの、発色は良好だし、露出も安定している。NFC対応のWi-Fi機能やGPSといったトレンド機能も装備しており、撮ることを楽しみたい人にはいい選択肢だと思う。
実写サンプル
画角変化
搭載レンズはツァイス バリオ・ゾナーT*24-720mm相当の光学30倍ズーム。広角端の周辺部が少し流れていること以外はまずまずの描写といえる。リアルタイムで電子的な補正を行なっているらしく、歪曲収差や色収差は見られない。
全画素超解像ズームは、多少解像感は落ちるものの、まずまずの画質。あまり大きくプリントしないのであれば、それなりに使えそうな印象だ。デジタルズームは画質的にも、画角的にもあまり実用的とは思えない。
ISO感度
撮像センサーは1/2.3型、有効1,820万画素の裏面照射型CMOSセンサー。画像処理エンジンにはBIONZ Xを搭載する。撮像センサーの小ささが影響しているのか、薄暗いシーンでの解像感はもうひとつの印象。ピクセル等倍で見ると、ベース感度のISO80でも塗り絵っぽい描写が目に付くし、ISO200でも木肌のディテールなどはつぶれがちとなる。2Lサイズ程度までのプリントや、縮小してブログなどに使うのであれば、ISO400までは実用できそうに思う。
DRO/HDR
レンズ交換式カメラと同じく、暗部補正などを行なうDRO(Dレンジオプティマイザー)と、連写合成によるオートHDRを搭載する。DROは補正のレベルをAUTO、またはLv 1~Lv 5の範囲で、オートHDRは露出差をAUTO、または1.0EV~6.0EVの範囲で設定できる。この作例のケースでは、DROの効果はほとんどあらわれなかった。
動画
動画の記録方式は、XAVC S HD、AVCHD、MP4の3種類が選択可能。いずれも1,920×1,080ピクセルで60pとなる。ただし、XAVC S HDはClass 10以上のSDXCメモリーカードが必須となる。