新製品レビュー
PENTAX K-3
高機能&多画素化した最強フィールドカメラ
Reported by 永山昌克(2013/11/14 08:00)
リコーイメージングが11月1日に発売した「PENTAX K-3」は、APS-Cセンサーを搭載したデジタル一眼レフだ。昨年発売した「PENTAX K-5 II」および「PENTAX K-5 IIs」の後継機にあたり、撮像素子やエンジン、AFセンサーなどを改良。一眼レフ「K」シリーズの最上位製品として、同社のこだわりと技術の粋が詰め込まれている。
まずは外観から見てみよう。ボディは、防塵防滴構造のマグネシウム合金外装を採用する。前モデルに比べた場合、ボディの幅と高さ、奥行きの数値はそれぞれわずかに増しているが、それでもAPS-Cセンサーを搭載したハイスペック機としては比較的小ぶりのボディだ。本体重量は、前モデルよりも35gアップして約715gとなる。サイズの割には適度な重みがあり、メカがぎっしりと凝縮された高密度感が手に伝わってくる。
デザイン的には、直線で構成されたペンタプリズム部のフォルムが個性的だ。他社の多くが採用する曲線的なデザインとは異なり、よりシャープで端正な印象を作り出している。その一方で、両サイドのグリップ部は滑らかな曲面で構成。筆者のやや大きめの手にもぴったりフィットし、ホールド感はとてもよく感じた。
ファインダーには視野率約100%、倍率0.95倍のペンタプリズムを搭載する。前モデルのファインダーに比べて倍率を高めたほか、新コーティングによって明るさを約15%アップしたとのこと。ファインダー像はクリアで、APS-Cセンサー機のファインダーとしては結構見やすいといえる。また液晶モニターについても、前モデルの3型約92万ドットから3.2型約104万ドットに向上。十分な明るさがあり、明るい屋外でも実用的だ。
AFシステムの強化と連写のスピードアップ
次に、機能面での進化のポイントをチェックしてみよう。まず使い勝手を高める大きな改良といえるのは、AF性能が向上したこと。AFセンサーは従来の「SAFOX X」から「SAFOX 11」に変更され、測距点の数は11点から27点へと増加。加えて、新開発の測光センサーと処理エンジンの連携によるシーン解析システムの採用によって、AFの被写体検知性能や動体追尾性能がアップしている。
今回の試用では、キット付属の標準ズームのほかに明るい中望遠レンズを使ったが、被写界深度が浅くなる開放値での撮影でも、狙い通りのポイントにきっちりと合焦するAF性能を確認できた。AFスピードについては室内などの暗所では遅くなるものの、明るい屋外なら大きなストレスを感じることはなかった。被写体や自分の撮影スタイルに応じて、カスタムメニューからAFの動作特性を細かく変更可能になった点もありがたい。
連写は、前モデルの7コマ/秒から8.3コマ/秒にスピードアップした。CMOSセンサーの画素数を高めながらも連写が高速化したのはお見事だ。動く被写体を撮るユーザーにとってはありがたいポイントだろう。個人的には、これほどの高速連写が必要なケースはあまりないが、オートブラケットが素早く行える点は便利に感じる。また連写/単写を問わず、レリーズのレスポンスが非常にスピーディなことと、レリーズ音が控えめであることは気に入った。
高速連写時の連続撮影可能コマ数は、JPEGで約60コマ、RAWで約23コマとなる。使用するカードの速度によっては、画像の書き込みにはそれなりに待たされるが、バッファ容量に不足を感じることはほとんどない。
そのほか、撮影時のミラーショックを低減するミラーバウンド抑制機構や、被写体の形や色も判別する約8.6万画素RGBセンサー、ミックス光源下でも見た目に近い色合いが得られる「マルチパターンオートホワイトバランス」などを新搭載。磁力アップによってボディ内手ブレ補正の効果が高まったことや、無線LANカードに正式対応したことも見逃せない。
操作面の改良点としては、前モデルは背面にあったAFモードボタンが側面に移動したことや、撮影モードダイヤルにロック機構が追加されたこと、十字キーのそばに測距点移動ボタンが新設されたことなどが挙げられる。それ以外の主要なボタンの配置は継承。従来機ユーザーでもすんなり扱えるはずだ。
ローパスセレクターの効果をチェックする
機能面でのもうひとつの注目は、世界初となるユニークな機構「ローパスセレクター」を採用したこと。これは、露光中にイメージセンサーのユニットをサブピクセル単位で微小駆動することで、一般的な光学ローパスフィルターと同様のモアレ低減効果が得られる仕組みだ。
前モデルは、ローパスフィルター搭載の「K-5 II」と、ローパスフィルターなしの「K-5 IIs」の2台に分かれていたが、今回のK-3ではメニュー操作でローパス効果の有無を選択可能になったというわけだ。
ローパスセレクターにどのくらいの効果があるかは、下の実写画像を見て欲しい。屋外作例の効果オフでは、画面中央やや下のフェンスの部分に、緑と紫の偽色によるモアレが生じているが、「TYPE 1」に切り替えるとそれが低減され、「TYPE 2」ではほぼ気にならなくなっている。室内作例の場合も、布の表面に生じた縞状のモアレが「TYPE 2」ではほぼ消えていることが分かるはずだ。
これらの作例は、効果の違いを見るためにあえてモアレが生じやすい被写体を選んで撮影したもの。実際の撮影シーンでは、効果オフでもモアレが気になるケースはほとんどなかった。通常は解像感を重視して効果オフで使用し、建造物や衣服などモアレ発生の可能性がある被写体の場合のみ、効果オンにするという使い方で十分だろう。なお、今回掲載した比較作例以外の写真はすべて効果オフを選んでいる。
まとめ
撮像素子にはAPS-Cサイズ相当の有効2,435万画素CMOSセンサーを、処理エンジンには「PRIME III」をそれぞれ搭載する。実写では、被写体のディテールまでをきっちりと解像する細部表現力の高さを確認できた。ローパスレスと高画素センサーのたまものだ。
ただ注意したいのは、キット付属の標準ズーム「DA 18-135mm F3.5-5.6 ED AL [IF] DC WR」の場合、シーンや撮影条件によっては周辺画質に物足りなさが残ること。解像感を重視し、ローパスレスの性能をフルに引き出したいなら、レンズ選択にもこだわり、妥協はしたくない。そういう意味では、使えば使うほどいっそう高性能な交換レンズが欲しくなる魔性のカメラである。
感度は、ISO100〜ISO51200まで幅広く対応する。高感度ノイズリダクションは、感度ごとに最適な設定が自動で選ばれる「オート」のほか、弱/中/強/カスタム/オフが選べる。RAW撮影なら特に気にする必要はないが、JPEGで撮る際は、好みに応じてノイズリダクションの度合いを選んでおくといいだろう。
今回の試用では、しっかりとしたホールド感と心地よいシャッターフィーリングによって、撮影を快適に楽しむことができた。ファインダーの見やすさや、各種レスポンスの短さ、ローパスレスが生み出す高解像性能についても好印象を受けた。
強いて改善要望点を挙げるすれば、ライブビュー撮影時のAFとレスポンスをさらに高めて欲しいこと。本モデルのライブビュー時のAFは従来機よりも高速化し、コントラストAFを採用した一眼レフ機の中では優秀な部類といえる。ただ、それでも像面位相差AFに比べると見劣りがするし、特に薄暗いシーンでのコントラストAFにはストレスを感じる。
一方で、光学ファインダーでの撮影を重視する人にとっては、満足度の高いカメラになるだろう。防塵防滴構造と耐寒性能を生かして、雨天や雪、砂ホコリといった悪条件でもカメラのことを気にせずに撮影に専念できることは、これまでの製品から継承したメリットだ。そこに高解像とスピード面の魅力が加わり、オールジャンルに活躍する正統派一眼レフに仕上がっている。