新製品レビュー

DJI Avata 360

「飛んだ空間を丸ごと持ち帰る」新時代のドローン 8K 360°動画が変える空撮の常識

DJIから360°ドローンという新ジャンルの機体が登場した。少し前にAntigravity A1のレビューを行ったが、今回も引き続き360°ドローンのレビューとなる。では、DJI Avata 360の実力を見ていこう。

まずは製品ラインナップを整理しておこう。DJI Avata 360は4つのパッケージが用意されている。機体単体が7万7,330円で、すでに送信機やゴーグルを持っているユーザー向けの選択肢だ。

送信機のDJI RC 2とのセットが11万6,380円、さらにバッテリー3本と充電ハブが付属するFly Moreコンボが15万9,830円、そしてゴーグルのDJI Goggles N3とモーションコントローラーのRC Motion 3が付属するMotion Fly Moreコンボが16万2,140円となっている。

基本スペック

外形寸法は246×199×55.5mm、離陸重量は約455gだ。プロペラガードが機体と一体化したデザインを採用しており、万が一何かにぶつかってもプロペラが直接接触しない構造になっているため、安全性が高い。右側面のフタを開けるとUSB Type-C端子とmicroSDカードスロットが現れる。

カメラは1/1.1インチのスクエアCMOSセンサー(有効6,400万画素)を2基搭載する。レンズはFOV200°、焦点距離2.5mm(35mm判換算7.8mm)、開放絞りF1.9となっている。

フォーカスは固定焦点(FF)で、合焦範囲は1.5m~∞だ。この2眼を合成することで8K/60fps HDR動画を記録でき、静止画は最大約1.2億画素での撮影が可能となっている。

42GBのストレージを内蔵しており、microSDカードなしでも8K映像を約30分収録できる。今回はSUNEASTのmicroSD UHS-IIカード(512GB)を使用したが、8K60pでも止まることなく撮影できた。

バッテリー1本あたりの最大飛行時間は約23分となっているので、長時間飛行させたい場合は3本程度をローテーションしながら使うとよいだろう。実際には気温や風速にもよるが、筆者が今回試用した環境では18~20分程度の飛行が可能だった。ポータブルバッテリーを持参してローテーションしながら充電することで、10分程度のインターバルを挟みながら長時間の継続運用もできた。なお、充電ハブで充電した場合、0%から100%まで約47分、10%から90%まで約31分が目安となっている。

折りたたみ式ランディング パッドが付属する

撮影スタイル

動画撮影モードは「360°モード」と「シングルレンズモード」の2種類がある。シングルレンズモードでは通常のドローンのような撮影が可能で、4K/60fps動画を記録できるが、本機の真価はやはり360°撮影にある。

シングルレンズモード
「360°モード」と「シングルレンズモード」の選択画面
アスペクト比を選択
ビデオ画質を選択
画角の選択

360°撮影がこれまでのドローンと何が違うかといえば、撮り方そのものが変わる点だ。従来のドローンでは撮影時にカメラの向きや機体の向きを変えながら構図を作る必要があったが、360°撮影では飛行後に視点や構図を自由に調整できる。そのため飛行中はカメラ操作を意識せず、機体の動きに集中できる。飛んだ空間を丸ごと持ち帰り、後から編集ソフトのDJI Studioでカメラワークを作り込むイメージだ。

Avata 360を使って改めて実感したのが、操作スタイルが2種類あることの意味だ。1つはコントローラーのRC 2を使う方法で、5.5インチのフルHDディスプレイを搭載しており、従来のドローンと同じ感覚で操作できる。モニターを見ながら機体を目視しつつ飛ばせるため、撮影できる場所や制約を大幅に減らせる点が魅力だ。

実際にRC 2を使った印象は、普通のドローン撮影の感覚そのもので、シングルレンズモードでは通常の空撮ドローンと変わらない操作感だった。360°モードで飛ばした際はゴーグルがないため没入感はないが、機体を確認しながら撮影できる点は撮影の幅を広げてくれる。

DJI RC 2
DJI RC 2に映し出される画面や、機体そのものを目視しながらの操作が可能

もうひとつはゴーグルのDJI Goggles N3と、モーションコントローラーのRC Motion 3を組み合わせるFPVスタイルだ。首の動きに連動したヘッドトラッキングにより、飛行中に周囲を見回せる没入感が得られる。飛行しながら周囲を確認できる点はまるで鳥になったような体験だが、Antigravity A1のようにヘッドトラッキングで向いた方向に機体が進むわけではないので注意が必要だ。

ゴーグルとモーションコントローラーの使用例
ヘッドトラッキング

アクロバット飛行も楽しめ、「飛ぶ感覚」そのものを重視したい場合に最適な組み合わせだ。RC Motion 3はとても使いやすく、初心者でも直感的な操作が可能で、離陸・帰還も自動で行える。ストレスなくFPVドローンの飛行と撮影を堪能できる一方、RC 2と比べると細かな操作は難しい。飛行の醍醐味を純粋に楽しみたい方にはRC Motion 3がおすすめで、より精密な操作をしたい場合はDJI FPV送信機3の使用も選択肢に入る。

アクロモード
アクロバット飛行の設定画面
アクロバット飛行の設定画面

ただし、ゴーグルを装着した飛行は航空法上の「目視外飛行」に該当する。周囲に人がいない環境であっても、事前の申請と補助者の配置が義務付けられている点は理解しておきたい。

DJI Goggles N3は、視認性が高くクリアな映像が印象的だ。特に驚いたのはメガネを装着したまま使用できる点で、操作もシンプルで飛行に集中しやすかった。鼻周りの遮光性も高く、画面への没入感は想像以上だ。さらにゴーグルの曇り除去機能も搭載されており、ファンを使って曇りを除去できる。湿度の高い季節に重宝しそうな機能だ。

DJI Goggles N3
サイズ調節も容易。後部のダイヤルを締めて調節する
ゴーグルの曇り除去機能を備える

画質

画質に関しては、2眼スティッチングの継ぎ目もほとんど目立たず、全体的に高画質な印象を受けた。露出はオート制御だが、大きく明るさが変動することもなく、安定した描写が得られた。

360°静止画は約1.2億画素あるためディテールまでしっかり確認でき、スティッチ部分もほとんど目立たないため静止画としても十分実用に耐える。高画素ゆえに一部を切り出すことも容易で、使い勝手は良好だ。ちなみにRAWフォーマット(DNG)での収録にも対応している。

静止画編集

撮影した360°映像の編集にはPC向けのソフトウェア「DJI Studio」を使用する。対応環境はMac(Apple M1チップ以降)とWindows 10以降だ。

キーフレームを設定することで視点移動やズームなどのカメラワークを自由に設計でき、飛行中には存在しなかった「カメラの動き」を後から付与できる。

特筆すべきは被写体追尾の精度で、被写体を選択するだけでトラッキング映像を生成できる。被写体が画面内でかなり小さくなった状態でも追跡が途切れることはほとんどなく、機体の下に被写体が回り込んでも追従を維持する。撮影時にフォーカストラック機能を使っておけば、編集時に被写体のトラッキングが自動で行われるため、編集作業の負担も軽減できる。

フォーカストラッの設定画面
トラッキング。編集にて被写体を選択すると、その被写体を追い続ける映像を切り出してくれる
フォーカストラック機能。車をトラッキングしておけば、ドローンを操作しても映像で車を映し出し続ける

また、多彩な動きやエフェクトのプリセットをカメラワープライブラリーから選べるので、360°映像編集の初心者でも手軽に仕上げられる点も便利だ。

編集画面

DJIらしい高い完成度で

Avata 360は「空飛ぶ360°カメラ」というコンセプトを、DJIらしい高い完成度で製品化した1台だ。「飛びながら撮る」から「飛んだ空間をあとから編集する」というワークフローの転換は、ドローン空撮のハードルを下げると同時に映像表現の幅を大きく広げてくれる。

FPVドローンの操縦感を手軽に体験したいユーザー、あるいは地上の360°カメラから次のステップに進みたい方には、強くおすすめできる1台だ。

ゴーグルを使ったFPV飛行には法的なハードルが伴うものの、それを乗り越えた先に得られる新たな表現は挑戦する価値がある。

自由なアングル
上田晃司

フォトグラファー/映像作家。米国サンフランシスコに留学し,写真と映像を学び,CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後,写真家塙真一氏のアシスタントを経て,フォトグラファー,映像作家として活動開始。新しい技術をいち早く取り入れ,写真や映像表現に活かしている。2014年頃からはドローンを取り入れた撮影も行っている。現在は,雑誌,広告を中心に,ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。講演や執筆活動も行っている。YouTubeチャンネル「写真家上田晃司の旅とカメラ」でカメラや旅について情報を発信中。ニコンカレッジ講師、LUMIXアカデミー講師、Hasselbladアンバサダー2015、プロフォトトレーナー。