新製品レビュー
ニコンD5(実写編)
進化したAF・連写性能を検証 気になる高感度画質も
Reported by 大浦タケシ(2016/4/28 11:44)
先般外観・機能編をお届けしたニコンデジタル一眼レフのトップエンド「D5」。今年夏のリオデジャネイロ五輪開催をタイミングとして発売された、「D4S」の後継モデルである。
高密度で狙った被写体を確実に捉え続ける153点AFシステムに、新画像処理エンジンEXPEED 5と大容量のバッファメモリーによる最高約12コマ/秒の高速連写機能、常用ISO102400、拡張ではISO328万相当での撮影を可能とする自社開発の有効2,080万画素CMOSセンサーの搭載など、正にスポーツイベントを撮影するために生まれてきたようなスペックを誇る。
今回は実写編として、最新の“D一桁機”の描写を見ていくことにする。
遠景で解像力をチェック
掲載した作例撮影時のD5の主要な設定は、ピクチャーコントロール:スタンダード、ホワイトバランス:AUTO 1 標準、感度:ISO100(ベース感度)、アクティブ D-ライティング:切としている。使用レンズは「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」で、ピントはビル群の中央付近に合わせている。
曇天ながら、描写は適度なコントラストと忠実ともいえる色再現でメリハリのある鮮明なものである。階調再現性も上々でハイライト部からシャドー部まで緻密に再現する。
レンズの描写のピークと考えられる絞りF8前後では、光学系による解像感の高さも手伝い、エッジのキレが極めてよく立体感のある描写に。文句の付けどころのない解像力である。
選択したオートホワイトバランスはデフォルトのもので、光源の色あいをわずかに残す傾向のものであるが、仕上がりはニュートラルな印象。かつてニコンデジタル一眼レフはオートホワイトバランスが安定しておらず、特に曇天では色の偏りが発生しやすかったが、撮影した画像を見るかぎりそのようなことはない。ほとんどの撮影ではこのホワイトバランスの選択でまったく問題なく使えると考えてよいだろう。
感度
D5の設定可能な感度は、通常設定でISO100からISO102400まで、拡張ではISO50同等のLo1からISO328万相当のHi5まで設定できる。掲載した作例では、Lo1からHi5まで1EVステップで撮影を行っている。高感度ノイズリダクションはデフォルトの「標準」を選択した。
まずは低感度だが、拡張ISO50相当のLo1とベース感度では、わずかに前者のコントラストが高いものの、作例を見るかぎりノイズの発生や色あいなど極端な違いは感じられない。仕上がりにメリハリを付けたいときに拡張の低感度で撮影する写真愛好家もいると聞くが、本モデルの場合もそのような使い方に適しているように思える。
一方高感度では、パッと見で輝度ノイズや色ノイズの発生が見受けられるようになるのがISO12800あたりから。もちろんそれより低感度でもノイズの発生はあるが、パソコンの画面で等倍に拡大してはじめて気が付くレベルである。ISO51200になると急激にノイズが目立ちはじめ、さらに解像感も大きく低下していく。ちなみに解像感の低下は、ISO800あたりから僅かではあるがはじまっている。個人的にはISO6400がノイズの発生や解像感の低下をさほど気にせずに撮影が楽しめる最高感度で、それ以上では覚悟が必要な領域であるように思える。
拡張設定の最高ISO328万相当であるHi5も何かと話題になっているが、拡張領域の描写については期待しないほうがよいだろう。特にISO82万相当のHi3から上の感度は記録用としても厳しく感じられる。ノイズが盛大に現れ、解像感もディテールが無くなるくらい低いからだ。ただし、割り切ってフィルター機能のひとつと考えれば、面白い描写なのかも知れない。
連写/被写体追従性
ここではコンテニュアスAFの被写体追従性と約12コマ/秒の高速連写をチェックしてみた。結果からいえば、文句のないレベルである。
掲載したローラーブレードの作例では選択した1点に加え周辺のフォーカスポイントがカバーするダイナミックAF(25点もしくは153点)を選択し開放絞りで撮影しているが、カメラに被写体が向かってくるような条件では、極端に近距離とならないかぎりピントが大きく外れてしまうようなことがない。
カメラに向かってきた被写体がまた離れていくような動きの場合では、希にピントを外すことがあったものの、それでもすぐに捕捉し直し追従する。画面の広い範囲をカバーするフォーカスポイントとともに、動きの激しい被写体でも撮影者は安心して撮影に集中できると述べてよいだろう。
(モデル:木城友樹)
(撮影協力:H.L.N.A SKATE PARK)
前回の外観・機能編でも少し触れているが、手ブレ補正機構をONにしていると、高速連写時、わずかにコマ速が落ちる。新幹線の作例もダイナミックAF(25点)を選択し、こちらは絞りF5.6で撮影を行っている。高速で走り抜ける新幹線の場合はカメラに近くなればなるほどAFは条件的に厳しくなるが、撮影した画像を見るかぎりよく追従していると述べてよい。
まとめ
動体を被写体とする撮影には、隙のない性能のカメラである。画質、高感度特性、コマ速、AFの被写体追従性、操作感などどれをとっても文句の付けどころがなく、撮れないシーンはないのではないかと思えるほどだ。それは動かない被写体、ポートレートや風景でも同様で、キレのよいシャッターなどフィーリングも含め極めて満足感の高い、ニコンのフラグシップモデルに相応しい仕上がりである。
今回のレビューで、この夏開催されるリオデジャネイロ五輪がますます楽しみになってきた。もちろん各国を代表する精鋭たちの美しい躍動感を写し止めた写真もあるが、もうひとつの注目は時折テレビの画面で見切れるカメラ席。そこには望遠レンズがずらりと並び、選手たちを虎視眈々狙っているはずだ。今から大いに気になるところである。
作品集
合焦部分のエッジのキレは良好だ。微妙な陰影の描写も上々である。曇天であったが、青みが残ることなくオートWBの精度は高い。掲載した作例を見るかぎりダイナミックレンジは広く、階調再現性に長けたカメラといえる。
明暗差のあるシーンだが、暗部の階調はよく粘っているように思える。また、シャープネスの高い絵づくりは、ローパスフィルターレスに迫るものである。シャッターのキレもよいので、撮影していて気持ちイイ。
光学ファインダーにタイムラグを最小限に抑えたシャッター機構で、まさに思った瞬間の画像が得られる。ミラーレスの進化が著しい昨今だが、この部分に関していえば、一眼レフに優位があることに変わりはない。
尖鋭感が高いうえに階調再現性も申し分のないもので、立体感の高い描写である。重量級のカメラだが、しっかりとホールドさえすれば安定感がよいことはいうまでもない。視認性の高い光学ファインダーはピントの位置の確認も容易。
階調再現性はデジタルであることを考えれば極めてよく、ハイライトからシャドー部まで良好に再現する。
フォーカスポイントの選択はサブセレクターで行うが、マルチセレクターで行う同社の他の一眼レフにくらべよりダイレクトな操作感で好感が持てる。スポーツシーンのみならず作例のようなスナップでも使い勝手はよい。