【新製品レビュー】キヤノン「IXY DIGITAL 210 IS」

~IXY史上最薄のスタイリッシュモデル
Reported by 本誌:武石修

IXY DIGITAL 210 IS(シルバー)

 キヤノンの薄型コンパクトデジタルカメラといえば“IXY”シリーズ。そのIXYシリーズ史上最薄とのふれ込みで登場したのが「IXY DIGITAL 210 IS」だ。執筆時点の量販店価格は2万6,800円(+ポイント10%)といったところ。

 従来モデルの「IXY DIGITAL 25 IS」もわずか20.4mmと十分薄いカメラだったが、IXY DIGITAL 210 ISはさらに厚みを2mm減らしている。とにかく「薄い!」というのが最初に手に取ったときの印象だ。外観は、前モデルが上下の辺のみ大きなアールを取っていたのに対し、IXY DIGITAL 210 ISでは、前面背面の4面を大きく面取りした。このデザイン処理も薄く感じる一因のようだ。18.4mmという数字以上に薄く感じる。

 カラーは、レッド、ゴールド、シルバーの3色で展開。3色とも、レンズ周りのスピンドル加工部分と鏡胴部もボディと同色で、一体感のある意匠となっている。レッドは、目の覚めるような赤で、「IXY DIGITAL 3000 IS」の限定モデルを思わせる一方、ゴールドとシルバーは比較的落ち着いた雰囲気になっている。

 ボディは、突起部分を極力無くした設計で、ボタンまでもフラットになっている。ボタンに関しては、最初はやや押しづらさを感じるかもしれないが、慣れれば問題ないだろう。液晶モニターは、約23万ドットの2.5型と標準的な仕様だ。

 本機は、今ではめっきり少なくなった光学ファインダーを搭載している。小型ながらちゃんとズームするところはさすが。ただ、国内では、こうしたコンパクトデジタルカメラに光学ファインダーは果たして必要なのかとの疑問もある。海外市場では、まだ光学ファインダーに対するニーズがあるとのことだが、光学ファインダーを省けば、もう一回り大きな液晶モニターを搭載する事もできそうだ。とはいえ、光学ファインダーを使いたい人にとっては数少ない選択肢の一つといえる。

手に取ると薄さがよくわかる電源スイッチはシャッターボタン横。ズームレバーはシャッターボタンと同軸に配置
ストラップ取付け部も埋め込み式というこだわりこのクラスでは珍しい光学ファインダーを搭載。ちゃんとズームする
背面のボタンもフラットにした。「こだわりオート」にする場合はモードレバーを「AUTO」の位置にする

 今回からの新機能として、「こだわりオート」の名称で搭載したシーン自動認識機能がある。人物、距離、明るさ、色、動きなどの情報を認識して、最適なシーンモードを自動的に選択する機能だ。背面のモード切替スイッチを「AUTO」のポジションにすることで有効になる。

 撮影毎にいちいちシーンモードをセットする繁雑さから開放されるわけで、カメラに詳しくない人にはありがたい機能。基本的にこだわりオートに設定しておけば、オートモードに比べてより多くのシーンに対応できる。特に便利なのは、被写体に近づくとマクロモードにも自動的に切り替わる点。カメラが初めてのユーザーでもピンぼけすることなく撮影できる。

プログラムモードの撮影画面こちらは、こだわりオートの表示。ぬいぐるみに近づけたため、自動的にマクロモードになった
レンズは、画質的に有利と言われているストレート沈胴方式。焦点距離は33~100mm相当だ

 レンズは、35mm判換算で33~100mm相当の3倍ズーム。薄型デジタルカメラでは屈曲光学系を採用するモデルも多いが、本機はストレート沈胴による光学系を採用。光軸のブレが少なく、また光路を曲げるためのミラーなどが不要なため、画質面では有利とされている方式だ。

 昨今は広角28mm相当の機種も増えつつあるが、薄さが第一というコンセプトを考えると、33~100mmがバランスの良いズームレンジだと思う。望遠端が物足りないようにも思うが、本機は有効1,210万画素。撮影後に少々トリミングを行なっても十分余裕がある。レンズシフト式の手ブレ補正機構も引き続き搭載している。

 そのほか、HD動画撮影(1,280×720ピクセル、30fps)、HDMI出力、顔検出など昨今のトレンドも押さえている。日常持ち歩ける薄型モデルを探している人はチェックしてみるとよいだろう。

画質やISO感度などの設定は、ファンクション画面で行なう新たにサーボAFも搭載。シャッターボタンを半押ししている間、動く被写体にピントを合わせ続ける

 薄型モデル、それも1,000万画素オーバー機だとどうしても細部の描写が犠牲になっている、という印象もあるが、低感度域では思いのほか細部まで解像している印象だ。河原の石や沼の草木を見ると十分きれいな画質といえそう。発色もパリッとした鮮やかさがあり好ましく思う。

 高感度に関しては、1,200万画素クラスの1/2.3型機として標準的なところだろう。ISO200まではほとんどノイズは目立たない。ISO400でややノイズの粒が目立ち始めるが、このあたりまではまったく常用と考えて問題ないと思う。ISO800では、細部のディテールが失われ始めるが、作例を見るとカラーノイズは比較的少ない。最高感度のISO1600では、ISO800に比べてディテールと彩度が落ちるのがわかる。ただ、キヤノンのノイズリダクションはノイズを徹底的に塗りつぶす方向では無いため、ISO1600にしては割とディテールが残っていた。数年前ならISO1600は“非常用”などといわれていたが、現在なら2L程度のプリントであれば十分実用になると思う。

テレビに繋いでハイビジョン動画や静止画を楽しめるHDMI端子を装備電源はリチウムイオン充電池「NB-4L」。CIPA準拠の撮影枚数は約200枚

● 作例


※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウインドウで表示します。

画角

広角端(33mm相当) 4,000×3,000 / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm望遠端(100mm相当) 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm



歪曲収差

広角端(33mm相当) 4,000×3,000 / 1/60秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm望遠端(100mm相当) 4,000×3,000 / 1/25秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm



暗部補正

今回からの搭載となる「暗部補正」。撮影時は、「切」と「自動」から選べる。画面の暗い部分を自動的に明るくしてくれる機能だが、前景の明るい部分がさらに明るくなるきらいがある。シーンにもよるが、全体的に明るめの描写になる感じだ。なお、撮影後に補正することも可能。その場合は自動のほか、弱、中、強から選べる
暗部補正:切 4,000×3,000 / 1/80秒 / F5.8 / -1EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm暗部補正:自動 4,000×3,000 / 1/80秒 / F5.8 / -1EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm



ISO感度

4,000×3,000 / 1/125秒 / F3.2 / -0.7EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/160秒 / F3.2 / -0.7EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/320秒 / F3.2 / -0.7EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 5.9mm
4,000×3,000 / 1/100秒 / F9 / -0.7EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/200秒 / F9 / -0.7EV / ISO800 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/400秒 / F9 / -0.7EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 5.9mm



マイカラー

マイカラー切 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mmくっきりカラー 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mmすっきりカラー 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm
セピア 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm白黒 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mmポジフィルムカラー 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm



一般作例

4,000×3,000 / 1/250秒 / F9 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/500秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm
4,000×3,000 / 1/160秒 / F11 / -0.7EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 8.7mm4,000×3,000 / 1/200秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 10.6mm
4,000×3,000 / 1/100秒 / F9 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/80秒 / F9 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm
4,000×3,000 / 1/200秒 / F9 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/200秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm
4,000×3,000 / 1/80秒 / F11 / +0.3EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 8.7mm4,000×3,000 / 1/125秒 / F5.8 / -0.3EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm
4,000×3,000 / 1/100秒 / F9 / -0.3EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm
3000x4000 / 1/80秒 / F5.8 / -0.7EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 17.9mm3000x4000 / 1/200秒 / F3.2 / -0.3EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5.9mm
4,000×3,000 / 1/50秒 / F3.2 / -0.3EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 5.9mm4,000×3,000 / 1/10秒 / F3.2 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 5.9mm




本誌:武石修

2009/5/25 14:18