新製品レビュー

XREAL Beam Pro

ARグラスで3D体験 空間写真/ビデオを記録できるスマホライクなデバイス

皆さんはXREALというメーカーをご存知だろうか?

カメラや写真関係の方にはあまり馴染みがないかも知れないが、サングラス型のARグラス(スマートグラス)の業界で圧倒的なシェアを持っているメーカーだ。

まずはそのARグラスについて簡単に解説しておく。

サングラスのような形状のデバイスで、スマホやタブレット、パソコンなどと接続すると目の前に画面が投影されるという機器である。

これでいつでもどこでも動画を観賞したり、ちょっとした原稿執筆などもできてしまうという訳だ。

そしてこのメガネ型という形状から、左右の目に独立した映像を映し出すことができる。いわゆるSide by Side(以下SBS)の立体視が可能なのだ。

XREAL Beam Proとは

このXREAL社のARグラス「XREAL Airシリーズ」のオプション品として「XREAL Beam」という製品があり、様々な機器を接続できたり空間ディスプレイなどの機能を強化することが可能となる。

その上位モデルとして登場したのが今回ご紹介する「XREAL Beam Pro」だ。

当初日本で発売されたのはWi-Fiモデルのみであったが、東京ゲームショウ2024のタイミングでSIMスロット付きの5G対応モデルも追加された。

5G対応モデルではGPSも利用できるので、位置情報の記録もできる。

スロットにはmicroSDカードを搭載でき、撮影した写真や動画を直接書き込むことも可能だ。

AndroidベースのOSが搭載されており、Googleプレイストアからアプリもインストール可能。

見た目も使い勝手もAndroidスマートフォンそのものだ。

ホーム画面

XREAL Air シリーズとセットで使用すると最大限に魅力を発揮できるのだが、ここで注目するのは3Dカメラとしての機能。

カメラ設定

2つのカメラが並んでいるが、広角と望遠ではなく全く同じ性能のカメラである。

カメラ間の距離は50mmで、人間の目の平均的な間隔よりも少し狭くなっている。

実はこれ、カメラを目の前に構えて撮影した時にちょうど良い立体感に見えるように考慮されているのだ。

縦位置で構えて空間写真/空間ビデオのモードに切り替えると「Beam Proを横にしてください」と表示される。

撮影中

左右の視差を利用してステレオ撮影するので当然横位置での撮影になる。

空間写真を撮る

まずは空間写真。

グリッドや水準器の表示、セルフタイマーも設定できる。

デフォルトで表示されているのは左のレンズで、表示モードを切り替えると左右の目で見たSBSでの表示も可能だ。

空間写真の撮影(デフォルト)
空間写真の撮影(SBS: Side by Side)

撮影解像度は7,680 ×2,880ピクセル。3,840×2,880(4:3)が左右並んだSBSということ。

顔の前に手を出すようなポーズだと、奥行き感が出て面白い。

これをアナグリフに変換してみたのが下の写真。赤青眼鏡があれば立体的に見える。

Beam ProにARグラスを接続すれば、この様に撮影した空間写真をすぐにキレイな立体写真として楽しめるということだ。

XREAL Air(ARグラス)で視聴中

単純なSBS写真なので他社製ARグラスでも問題なく表示できるし、データを転送すればApple Vision ProやMeta Questシリーズなどでも楽しめる。

風景写真などを撮る場合は奥行き感を意識した構図を探ってみると面白いが、あまりにも被写体に近寄りすぎると視差が強くなりすぎてしまうので注意が必要だ。

これでは手前の花が近すぎる
メインの被写体とは1m程度は離れておきたい

空間ビデオを撮る

空間ビデオはフルHD(1,920×1,080ピクセル)のSBSで、フレームレートは60fps。

iPhoneの空間ビデオはフレームレートが30fpsなので、より滑らかな撮影が可能となる。

空間ビデオを撮影中

手ブレ補正も搭載されてはいるが、ステレオ動画はキチンと水平が維持されていないと非常に見づらい。

【XREAL Beam Pro 空間ビデオ(ジンバルなし)】

電動ジンバルなどでしっかり水平を維持してあげると良いだろう。

今回使用したのは「FeiyuTech SCORP Mini 2」。

他の電動ジンバルも試してみたのだが、コンパクトに折り畳めるタイプでは右目レンズにジンバルが映り込んでしまうことが多い。Beam Proの中心からズラして固定してもバランスが取れる構造が大事になる。場合によってはカウンターウェイトなどでも対応できるかも知れない。

Insta360 Flowに装着
Zhiyun Smooth 5S AIに装着

ジンバルで水平を維持できたとしても、激しいカメラワークは極力避けたほうが良いだろう。

【XREAL Beam Pro 空間ビデオ(ジンバルあり)】

iPhoneとの違い

空間写真/空間ビデオといえばiPhone 15 ProやiPhone 16シリーズで撮影できるが、これらは異なる2つのレンズで撮影することになる。

Beam Proは同じレンズが2つ並んでいるので、ステレオ撮影により向いていると言えるだろう。

またiPhoneはレンズ間の距離が近いので視差を取りづらく、景色などの撮影には向いていない。

逆に言うと、被写体に近づけるということ。花や料理などを撮るにはiPhoneの方が向いていそうだ。

近景撮影には向いていない

またiPhoneの空間写真/空間ビデオはApple独自のファイル構造になっていて、単純なSBSではない。

Apple Vision Proに転送すればそのまま立体視できるが、他社製デバイスでは専用の再生アプリが必要だったり、SBSに変換しない限りはそのままでは再生できないのだ。

それだけでなく、現時点では写真や動画を編集する際には単純なSBSに変換する必要も出てくる。

Beam Proは写真も動画も単純なSBS構造なので、そのまま色調補正したり動画編集ソフトで素材として読み込んで編集できる。

高度なステレオ映像の編集にはまた別の知識が必要となるが、単純なカット編集であれば全く問題ない。

まとめ

フィルムカメラの時代からステレオ写真という表現はあったが、一時的なブームはあってもなかなか定着しなかった。

その要因のひとつに閲覧デバイスの問題があったと思うが、これを解決できる装置がARグラスやVRヘッドセットという訳だ。

現時点ではまだまだ普及しているとは言えない状況ではあるが、360度や360°や3D180°などのVRコンテンツや空撮などと共に、空間を記録して空間として楽しむ文化が広まっていく下地ができてきたとも言える。

そんな「XREAL Beam Pro」はWi-Fiモデルが3万2,980円からとカメラとして見ても比較的安価。

さらに低価格帯のスマホにはなかなか搭載されていないディスプレイ出力もついているので、ARグラスユーザーにはかなりお得感があるだろう。

わっき

デジタル・コンテンツ・デザイナー/パノラマ写真家。1999年にフリーランスとして独立。テレビ/映画/ゲームなど幅広い分野の映像制作を手がけ、現在はYouTuber、動画レポーターとしても活動中。