新製品レビュー

ライカD-LUX8

毎日持ち歩きたい、“ライカらしく”なったコンパクトカメラ

外出時には常にカメラを持ち歩きたい。だけれども、大きなカメラを持ち歩くのは大変。そんなとき、コンパクトなカメラが1台手元にあればなと思うのです。

ライカカメラジャパンが7月20日(土)に発売するレンズ一体型カメラ「ライカD-LUX8」(以下、D-LUX8)は、4/3型CMOSセンサーを搭載するコンパクトデジタルカメラです。コンパクトカメラの“お気に入り”に出会いたい。そんな人はぜひチェックしておくべき1台だと思います。価格は税込28万6,000円前後です。

“D-LUX”シリーズは、2003年に初代が登場して以降、特別モデルなどの展開もありながら今回のD-LUX8に至ります。前モデルの「D-LUX7」は2018年12月に発売していますので、5年半くらいの期間が空いているということですね。

磨き上げられた“ライカらしさ”

D-LUX8は、これまでのD-LUXシリーズとは異なるデザインを採用しました。大きなところで言うと、ボディのラウンドシェイプ、それからダイヤモンドパターンの採用です。それは35mmフルサイズセンサー搭載機の「ライカQ3」を想起させるもので、いわゆる“ライカらしい”デザインになったとのことです。

マグネシウムダイカストのボディと、ダイヤモンドパターンのレザー外装
レンズキャップを装着したところ。オプションのアクセサリーには、オートレンズキャップやハンドグリップ、ソフトレリーズボタンなどを用意する

その“ライカらしさ”はカメラの背面にもおよびます。各種操作系は従来機から大きく変更しており、スクエア型の「PLAY」ボタンや「MENU」ボタン、その間にある十字ボタンはライカのカメラに見慣れた配置に近づいています。

その他にはメニュー画面も従来機から刷新しており、ライカQ3をはじめとしたライカカメラにより近くなったのだそう。

メニュー画面

トップ部はシンプルな配置となっていますが、D-LUX7で露出専用ダイヤルだったサムホイールが、「ファンクションダイヤル」に変わっています。カスタムで操作の割り当ても変更可能で、各自の撮影スタイルにより柔軟に対応します。シャッタースピードダイヤルと同軸にあった電源ボタンも独立しました。

ファンクションダイヤルの機能割り当て

イメージセンサーの有効画素数は1,700万画素(総画素数2,100万画素)で、この数値はD-LUX7と同じです。センサーサイズも4/3型で同様なのですが、高感度MOSセンサーからCMOSセンサーに仕様が変わっています。

固定式のレンズは「ライカDCバリオ・ズミルックス f1.7-2.8/10.9-34mm ASPH.」で、こちらは前モデルを踏襲。焦点距離は35mm判換算で24-75mm相当です。

普段はコンパクトに収納されているレンズも、撮影時には繰り出されます。

外形寸法は130×69.0×62.0mm(レンズ収納時)。質量は約397g(バッテリー込み)。手にした印象はそのまま「小さくて軽い」です。見た目が“ライカらしく”なっている分、いかにも重厚感がありそうにも思えますが、撮り歩きにはなんのストレスも感じられないくらいに軽いなと思いました。

機能面では、DNGでの撮影・記録に対応しました。DNGのみ、もしくはDNG+JPGの同時記録も可能としています。撮影後の画像編集における自由度など、より柔軟性が高まっているようです。このページで使用している実写画像は、JPG記録したものをそのまま掲載しています(一部、Adobe Lightroom Classicで露出量のみ調整しています)。

バッテリーは「ライカ BP-DC15」です。バッテリー室にメモリーカードスロットが同居しており、SD UHS-IIカードに対応します。

カメラ右側面にはHDMI Type D端子と、USB Type-C(USB Gen 1)端子を備えています。

ズームレンズ、マクロ、モノクロ…撮影を楽しめる要素が豊富に

さっそく試し撮りです。まずは近所の歩きなれた散歩コースから。

登場してくれたのは、梅雨といえばこれ、な被写体。見かけると撮りたくなるのですが、意外とうまく撮れないなと首をひねることの多いアジサイです。今回はいい雰囲気で遠近感が出せたかなと思います。

ライカD-LUX8/28mm(61mm相当)/1/1,000秒・F2.8/ISO 400

アジサイのすぐ近くにかわいらしい黄色い花が咲いていました。何とかうまく組み合わせて撮りたいなと四苦八苦。

なかなか手前の黄色い花にピントが合わないなと

そこで思い出したのが、マクロモードです。設定時には最短撮影距離が3cm(広角端)~30cm(望遠端)まで短縮。レンズ鏡筒の側面に備えられたスイッチで即座に切り替えられます。通常のAFモード時は最短撮影距離が50cmとなっています。

レンズ側面にあるフォーカスモードの切り替えスイッチ
ライカD-LUX8/18mm(41mm相当)/1/1,600秒・F2.8/ISO 400

やってみると面白いですね、マクロ撮影。せっかくなので花一輪をメインに、広角端にてほぼ最短撮影距離まで寄って撮影してみました。肉眼ではとらえられない光景をカメラが見せてくれる。それがカメラの楽しさのひとつだよなあ、と改めて実感しました。

ライカD-LUX8/11mm(24mm相当)/1/500秒・F4・+0.7EV/ISO 400

アジサイにもいろんな種類があるんですよね。面白くてついつい、同じ場所にとどまり撮影してしまいました。これだけ小さなカメラに、撮影を楽しむための大きな可能性が詰まっているなんて、素敵な話です。

ライカD-LUX8/18mm(41mm相当)/1/160秒・F4・+1EV/ISO 400
ライカD-LUX8/11mm(24mm相当)/1/500秒・F4・+0.3EV/ISO 200

見かけるとつい撮りたくなってしまうもの。そうです、「木」です。苔の絡んだ複雑な表面の模様を、シャープに写し取ってくれていると思います。背景のボケも相まって、木に立体感があるようにも感じられます。

ライカD-LUX8/32mm(70mm相当)/1/500秒・F2.8/ISO 400

連続で「木」です。よく歩く道なのですが、その形状が奇妙で普段から何となく気になっていた木があります。

「散歩用カメラには単焦点レンズがくっついていればいいかな」と思っている筆者。しかしこの被写体は立ち位置から20mくらい離れており、しかもその足元には実はお墓が広がっていて、普段から気になりつつもなかなか撮影するには至らない被写体だったのです。ズームレンズのおかげで「撮ってみよう」という気持ちになりました。

ライカD-LUX8/34mm(75mm相当)/1/500秒・F2.8/ISO 200

手で触れそうなほどの近い距離を電車が抜けていく跨線橋です。AF追従で11コマ/秒の撮影に対応するとのことで、ちょっと撮ってみました。シャッターを押している間、AFは電車の正面をとらえ続けており、迫ってくる電車をきっちりと撮影できました。

ライカD-LUX8/34mm(75mm相当)/1/1,000秒・F2.8/ISO 400

自由を覚えたばかりの3歳児は、撮影者の意など介さず、そのフィールドをあちらこちらと動き回ります。そうなってしまうと、呼びかけてもこちらの世界にはなかなか帰ってきてくれません。困ったものです。

日向と日陰で画面を分かつような状況というのも、試しに撮ってみたくなりますね。もう少しシャドウ部が落ちるのをイメージしていましたが、思ったよりナチュラルな感じ。階段にあたる陽光に暖かみがあって、好きな描写です。

ライカD-LUX8/11mm(24mm相当)/1/2,000秒・F4.5/ISO 800

望遠端が75mm相当なので、練習すればポートレート撮影も柔軟にやれそうでしょうか。ポートレートやスナップ撮影だけでなく、マクロを生かしたテーブルフォトなど、幅広いジャンルに対応するポテンシャルのあるカメラだと思います。

ライカD-LUX8/34mm(75mm相当)/1/4,000秒・F2.8・+0.3EV/ISO 200

滑り台で後ろから追いかけるようなシーンでも、カメラが小さいので手軽に撮影できます。ちなみに相手が正面を向いた状態であれば、私が試用した範囲ではAFの認識もおおむね良好に感じられました。が、子供が不規則に動いたり、速いスピードで近づいてくるような状況ではうまく撮れないこともあったように思います。AFはコントラスト検出方式です。

ライカD-LUX8/19mm(42mm相当)/1/2,000秒・F2.5・+0.3EV/ISO 200

D-LUX8には、5種類のカラーモードが備わっています。「Standard」「Vivid」「Natural」「BW Natural」「BW High Contrast」の5つですが、そうなるとハイコントラストのモノクロを試してみたくなります。

メニュー画面下に表示されているのが5つのモード

下の画像は左が「BW High Contrast」、右が「BW Natural」です。並べてみると、描写の違いも分かりやすいでしょうか。ここは貨物列車が通る線路の踏切で、なんとなく好きな景色です。急いでいる時ほど、滅多に降りない遮断機が降りてくるんですよね。

ライカD-LUX8/17mm(39mm相当)/1/1,000秒・F2.8・+0.3EV/ISO 200

今度は「BW High Contrast」(上)と「Standard」(下)を比較してみます。モノクロの方、しっかりと描写された雲が良い雰囲気を演出しています。

ライカD-LUX8/11mm(24mm相当)/1/4,000秒・F2・+0.3EV/ISO 100
ライカD-LUX8/11mm(24mm相当)/1/4,000秒・F2・+0.3EV/ISO 100

自分の所有しているカメラであれば、「今日はモノクロ縛りだ!」と決めて撮ることもできますが、すぐに返却する定めにある以上、なかなかそうも割り切れません。

左の画像は「BW High Contrast」で、右は「Vivid」です。

ライカD-LUX8/18mm(40mm相当)/1/320秒・F2.5/ISO 100

レンズは手ブレ補正対応となっています。シャッタースピードを遅くして、歩く人をぶらしてみようと試みました。撮影設定を細かく調整できるので、遊びがいもありそうです。

ライカD-LUX8/18mm(40mm相当)/1/8秒・F6.3・-2.7EV/ISO 100

先にも少し触れましたが、ズームレンズである、ということが意外にも撮影を楽しめる要素になったと感じています。被写体との距離を詰めるには己の足を使え、とどこかで聞いたような気がしないでもないですが、普段の散歩にズームレンズを持ち歩くことが少ない筆者には、いつもと違う視点が得られた気がしました。

ライカD-LUX8/23mm(50mm相当)/1/320秒・F2.8・-1.7EV/ISO 100
ライカD-LUX8/34mm(75mm相当)/1/160秒・F2.8・-2EV/ISO 100
ライカD-LUX8/11mm(24mm相当)/1/1,000秒・F2.8・-1.3EV/ISO 100
ライカD-LUX8/18mm(40mm相当)/1/500秒・F7.1/ISO 100
ライカD-LUX8/21mm(46mm相当)/1/250秒・F8・+0.3EV/ISO 100

肌身離さず持ち歩きたい、憧れのライカ

従来モデルと同様に、製品にはGN10(ISO 200時)のフラッシュユニット「Leica CF D」が同梱されています。今回の試用で惜しむらくは、このフラッシュユニットを使ってみる時間が取れなかったこと。カメラに装着したとて小ぶりなことには変わりないので、スナップでフラッシュ撮影をしてみるのも面白そうだなと思った次第です。

デザイン、操作性の面で“ライカらしく”なったというD-LUX8。下の画像のように、手乗りサイズのかわいらしさがありながら、ダイヤモンドパターンを含めて黒を基調としたシックな装いには「かっこいい!」と思わせる魅力があります。ライカバッジの赤も映えています。

コンパクトなボディによる手軽さと、細かな設定に対応する本格性能を兼ね備えており、撮影体験としても実に楽しいものでした。こんなカメラが手に入れば、間違いなく毎日持ち出してしまうなあと。

「Q3いいなあ」と指をくわえて見ていた筆者。およそ100万円のQ3には手が届かなくとも、憧れのライカをお迎えできるかもしれないと感じた読者は多いのではないでしょうか。とはいえ、従来モデルである「D-LUX7」登場時の価格からは大きく高騰した感もあり、悩ましい所があるのも事実でしょう。

ともあれ、いわゆる“コンデジ”のジャンルに本格的な高級機のラインアップが増えてくれるのはうれしい限りです。肌身離さずカメラを持ち歩きたいと思っている愛好家にとって、D-LUX8は間違いなく良い選択肢になると思います。

本誌:宮本義朗