新製品レビュー

パナソニック LUMIX GH7

リアルタイムLUTで撮影の楽しさがアップ 動画/静止画をハイレベルにこなすマイクロフォーサーズ機

装着レンズは「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.」

パナソニックがマイクロフォーサーズシステム準拠の新モデル「LUMIX GH7」を7月26日(金)に発売する。“動画フラッグシップモデル”とうことで、特に動画機能に関してはプロ用途にも対応する高度な機能を搭載しているのが特徴だ。

店頭予想価格(税込)はボディが27万4,200円前後、「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.」付きのレンズキットが34万7,500円前後だ。

約2,520万画素の裏面照射型CMOSを採用

リアルタイムLUTが大きく進化

さて、今回GH7の大きな新機能と言えば「リアルタイムLUT」がスマートフォンアプリと連携したことだろう。先に発表された「LUMIX S9」で初採用されたもので話題となった。

LUTとは「Lookup Table」のことで、どのような色味やコントラストにするかを定義する設定データのことだ。どのカメラにも独自の色設定機能(同社は「フォトスタイル」)があるが、LUTを使うことでより細かく好みに合わせたルックを設定できる。

パナソニックのリアルタイムLUT機能は、PCソフトやWebでダウンロードしたLUTファイルをカメラに転送して、好きなLUTのルックを実現できるという機能で、これ自体は以前から搭載されていた。

新しいのは、このリアルタイムLUT機能が新スマートフォンアプリ「LUMIX Lab」と連携したことだ。LUMIX LabではLUTを自作できるほか、クリエイターが作ったLUTをダウンロードしてカメラに転送できるようになった。LUTファイルは従来、PCからSDカードで転送する必要があり面倒だったが、これで簡単にLUTの活用が可能になった。

リアルタイムLUTやLUMIX Labは、動画だけでなく静止画にも適用可能。スマートフォンと組み合わせて撮影現場でLUTの効果を切り換えながら撮影できるようになった。

LUMIX LabのLUTダウンロードページ
効果を確認してダウンロードできる
フォトスタイル:スタンダード
リアルタイムLUT:Bloom(小春ハルカ氏)※かっこ内はLUTの作者名(以下同)

このように、簡単にクリエイティブな効果を反映できるのがなかなか面白い。以下、いくつかのクリエイターズLUTで試してみた。

リアルタイムLUT:T-Nostalgy(武井宏員氏)
リアルタイムLUT:Gritty Cinema(Jon Simo氏)
リアルタイムLUT:Moody Warm(Alex Jackson氏)

先にも書いたとおり、LUMIX LabではLUTの作成も可能。参考にする写真を選んで露出やコントラスト、ホワイトバランス、色相、彩度などを設定できる。明暗別色補正やRGB別トーンカーブなど、これまでカメラ本体だけでは難しかった高度な色調整ができる。

トーンカーブなどを使ってLUTを自作できる
作成したLUTの保存画面
LUMIX Labでダウンロードしたり作成したLUTをカメラに転送して使用する

今回試しに、昔のインスタント写真のようなレトロなルックをイメージしたLUTを作ってみた。簡単に試せるので色々なLUT作成にチャレンジしたくなる。

リアルタイムLUT:筆者作成のLUT
リアルタイムLUT:筆者作成のLUT

カメラへのLUT保存数は従来の10個から39個に増えているが、LUTの管理もLUMIX Labで行えるようになった。アプリから削除や名前の変更などもできるので管理がしやすい印象だ。

カメラ側のLUTライブラリを参照して管理も可能

RAW動画の内部収録に対応

動画機能としてはApple ProRes RAW HQ対応という点がGH6には無かった部分。この価格でRAW動画の内部収録(CFexpress Type Bカードのみ)ができるのは手頃であり、カラーグレーディングなどにこだわりたい人には嬉しい機能だ。また引き続き、業務用でも広く使われるApple ProRes 422 HQにも対応している。

本機で最高の情報量になるフォーマットの一つ「ProRes RAW HQ」。ビットレートは4.2Gbps(500MB/s以上)にもなる

ProRes RAW HQ、ProRes 422 HQとも5.7Kで30p、DCI 4Kで60pの記録が可能。H.265の場合は5.7Kで60p記録ができる。5.7Kはそのまま使うというより、4K作品の素材として使って、トリミングなどの自由度を高められる余裕のある解像度になるということだ。

こちらは撮って出しに使いやすいMOV/4K/60pのサンプル。これでもかなりキレイだ。リアルタイムLUT:Bloom

なおH.265収録で4Kのとき、最大120pでの記録が可能。24p再生なら5倍という本格的なスローモーションが可能になる。「バリアブルフレームレート」機能を使うとカメラ内でスロー映像が作れる。

120pキャプチャで24p記録に設定いたところ。5倍のスロー(20%)になる
5倍スローのサンプル。リアルタイムLUT:Gritty Cinema

動画の撮像範囲は、「Full」と「Pixel by Pixie」が選べる。前者は基本的にどの解像度でもフル画角で撮影可能。また後者では解像度が低くなるほど中心部を使うためクロップされる。カメラによってはどちらか固定の機種もあるが、本機は選べるのでポイントが高い。

またミラーレスカメラとしては珍しく、ハイエンドシネマカメラで知られるARRIの「ARRI LogC3」での記録にも対応する(有償、3万3,000円前後)。ARRIの認証を取得した機能となっており、ARRIが提供するARRI LogC3用のLUTを適用できるほか、ARRIのカメラと組み合わせた撮影もしやすくなるとしている。

音声収録では、レンズ交換式デジタルカメラとして世界初という、カメラ内での32bitフロート録音に対応した。オプションのマイクアダプター「DMW-XLR2」(5万5,400円前後)を使用し、外部マイクで収録した場合のみ可能な機能となる。録音レベルの調整不要で、音割れの心配無く記録できるのは心強い。

DMW-XLR2の使用例
DMW-XLR2の操作パネル
DMW-XLR2のマイク入力端子

静止画カメラとしても遜色なし

静止画機能では「ダイナミックレンジブースト」を引き続き搭載。低ISO回路と高ISO回路の画像を合成することで、滑らかなHDR撮影ができるという機能で、13+ストップのダイナミックレンジを謳う。

新たに、ベース感度がISO 2000からISO 500に拡張されたため、これまでよりも低感度で機能するようになった。静止画ではRAWデータの暗部が豊かになるほか、動画ではV-Log撮影時も同じく13+ストップのダイナミックレンジを実現できるという。

ISO6400の高感度作例。これだけの感度でも破綻は無く、実用的な写りを実現している。フォトスタイル:スタンダード

AF機能もアップデートされており、像面位相差AFが採用されている。それによって動体追従性も向上しているとのことだ。

ボディデザインは前モデルを踏襲したもので、ボタン類はほぼ同じとなっている。先に発表された「LUMIX S9」と異なり、メカシャッターおよびホットシュー(1/250以下同調)を搭載しているのは静止画ユーザーにはありがたいところ。

ダイヤルの回しやすさやボタンの押しやすさも申し分なし
液晶モニターはフリーアングル式だ
HDMI端子はフルサイズ。USB Type-C端子には外付けSSDを繋いでRAW動画などを記録できる
CFexpress Type BとSDメモリーカードのダブルスロットを採用。ハイビットレートの動画はSDカードでは記録できない
バッテリーは従来機同様のDMW-BLK22

静止画機能も充実のシネマカメラ

動画機能においてはRAWの内部収録に対応したり、32bitフロート録音が可能なのに加えて、冷却ファンを内蔵して連続的に撮影できる強みもあり、「動画最強のマイクロフォーサーズシネマカメラ」といってよいレベルだと思う。

それでいてマイクロフォーサーズならではの小型レンズで運用できるため、ジンバルでも使いやすくワンマン撮影にはもってこいな1台といえるのではないだろうか。フルサイズにこだわらなければ、動画面ではかなり完成度が高い。ステップアップしても相当高度な撮影までこなせるだろう。

「LUMIX GH」は動画を強く意識したシリーズだが、メカシャッターやホットシューの搭載に加えて、画素数も十分で位相差AFによる合焦も速い。また連写もメカシャッター時でAF追従約10コマ/秒など静止画カメラとしても不足無い装備がある。

というわけで動画/静止画の両刀がハイレベルで使えるという懐の深さを持ち合わせており、動画ユーザーだけでなく静止画メインのユーザーも大注目の1台となっている。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。