新製品レビュー
iPhone 15 Pro Max
ProRes対応などカメラ機能が強化 5倍望遠の画質もレビュー
2023年10月2日 07:00
2023年9月22日、アップルからiPhone 15シリーズが発売された。その中でフォトグラファーにとって気になるのは5倍の望遠カメラを搭載した「iPhone 15 Pro Max」だろう。最大25倍までのデジタルズームや4,800万画素でのHEIF記録に対応し、ポートもUSB Type-Cに変更されてデジタルカメラとの親和性も高まった。その描写性能などをインプレッションしてみたい。
主な仕様
- チップ:A17 Pro
- ストレージ:256GB/512GB/1TB
- 外部メモリ:なし
- ディスプレイ:6.7インチ、2,796x1,290ピクセル、460ppi、Super Retina XDRディスプレイ
- 外形寸法:159.9×76.7x8.25mm
- 重量:221g
- 画像撮影フォーマット:HEIF、JPEG、DNG
3つのカメラ
「iPhone 15 Pro Max」は3つのカメラを搭載している。
搭載カメラ
- メインカメラ:4,800万画素 24mm / F1.78
- 超広角カメラ:1,200万画素 13mm / F2.2
- 望遠カメラ:1,200万画素 120mm / F2.8
メインカメラは4,800万画素だが、2022年モデルと同じくピクセルビニング技術を採用し、複数のピクセルを束ねて使用することによって、描写および高感度特性を向上させている。また出力画素を従来の1,200万画素に加えて2,400万画素に設定することも可能になった。
なお手持ちの「iPhone 14 Pro」もiOS 17.0.1にアップデートすることで、同じことができるように進化していた。
各カメラの実力・特徴
それでは各カメラの写りを見ていこう。カメラの切り替えはディスプレイ上のアイコンをタップするかスライドして行う。
水準器も設定すれば表示することができる。水平時に振動による微弱なフィードバックが来る。
13mm相当(Exifの表示だと14mm)のワイド感は魅力だ。メリハリのある発色が好ましい。
24mm相当というスマートフォンで標準的な画角だ。「設定」→「メインカメラ」で1.2倍の「28mm」、1.5倍の「35mm」という2つの焦点距離を追加することも可能になった。2,400万画素での出力および4,800万画素(HEIF、ProRAW)出力も設定できるようになった。
4,800万画素のピクセル切り出しによる2倍画角だ。メインカメラと同じくそつのない写りに感じる。
注目の光学5倍望遠カメラがコレである。テトラプリズムというペリスコープ方式同様の屈曲光学系で、4回像を反射させてセンサーに導くというもの。スッキリとしたヌケ感の高い描写がいい雰囲気だ。またオートフォーカスと手ブレ補正を同時に行う「オートフォーカス3Dセンサーシフトモジュール」という技術も採用されている。
25倍667mm相当のデジタルズーム。ややジャギーやノイズなどが気になるが、晴天昼間のカットならSNS投稿やブログの小さなカットで使える印象だ。
8倍付近から被写体を捉えやすくするための小さなウィンドウが表示される。一部のAndroid機ではおなじみの機能だろう。
実際に「iPhone 15 Pro Max」を使っていると、2倍と5倍の画角の差に戸惑うこともあった。これは使い込んで慣れるしかないが、ここで気になるのはメインカメラと望遠カメラの狭間だ。5倍120mm相当での画質は、光量のある昼間ならなかなかいい。しかしそれより手前の119mm相当だとどうだろうか?
そこで「iPhone 15 Pro Max」の5倍望遠120mm相当と、119mm相当(ディスプレイでは119mm表示、Exifでは122mmと表示)とでほぼ同じ構図で撮り比べてみた。
明らかに5倍120mm相当の描写がいいのが分かるだろう。橋げたのディテール、手前に生えている草の質感など断然美しい。色味もだいぶ違う。
画質を気にするのであればこのことを踏まえての機種選定、および撮影に臨んだ方がいいだろう。自分のよく使う焦点距離を鑑みることが大切だ。
動画撮影機能も拡充されている。「Apple ProRes」での収録は前モデルと同様だが、「ProRes エンコーディング」設定で「HDR」、「SDR」そして「Log」での撮影が指定可能になった。
USB Type-Cに対応
「iPhone 15 Pro Max」では、本体下部の端子の形状がUSB Type-Cになった。アップルの独自規格「Lightning」ではなくなったことにより、さまざまなアクセサリーが活用できるようになった。
写真のようにPCで使用していたカードリーダーなどを使用できるので、とても便利になった。
また、SSDなどへのProRes 4K 60Pの外部出力が可能になったり、「ファイル」アプリからデータの読み書きができるようになったので利便性が増した。
実写インプレッション
ここからは本機を手に撮り歩いた作品をお届けする。
メインカメラの出力画素が選択できるようになったので、使用用途に応じて撮影することが可能に。通常では1,200万画素で問題ないが、レタッチ前提の場合は4,800万画素のHEIF、もしくはProRAWでの撮影がいいだろう。
低照度下の描写が向上した印象だ。超広角カメラを使用しての屋内撮影がとても捗る。また、ナイトモードも発動しにくくなった。
人や犬などの顔を認識すると通常モードでも深度情報を得てポートレートモードになる「写真モードでのポートレートモード」だが、モーターサイクルを撮影したこのカットでもポートレートモードになった。それにしてもカウルやタンクの光沢感や水平対向エンジンの質感がいい印象だ。
OM SYSTEM GALLERYで写真展「トウキョウカラス」を開催していた写真家の清水哲朗くんをポートレートモードで。コロナ禍の東京で撮影したカラスの生態が見応えあった。顔の輪郭もきちんと切り抜きができており不自然さは少ない。今回からボケ量だけでなくピント位置も変更可能にアップデートされている。
光量が少ない場合や被写体が近い場合は、望遠カメラを使っていてもメインカメラのクロップに切り替わる。金色のメタリック感、カラフルな彩色はいい感じである。
5倍120mm相当という望遠カメラの画角は、風景、スナップ、ポートレートで活躍する焦点距離だ。ただし、それより手前の焦点域を多用する場合は「iPhone 15 Pro」をチョイスした方がいいかもしれない。もちろん大きなディスプレイが画質より必要なら話は別だ。
「ProRAW」で撮影したカットは「カメラロール」で現像可能だ。DNG(掲載カットはJPEGに変換済み)の持つ懐深い調整レンジを活かして、より印象的なカットに現像処理してみた。手軽に自分なりの表現ができるのは良いことだ。
夜の東京駅界隈。店内はもちろん、ビルの壁面や夜空までヒトの見た目に近い描写だ。コンピュテーショナルフォトグラフィーの成せる技だろう。
ロープにとまるトンボを最大25倍667mm相当のデジタルズームで。羽根の模様まで分かるカットとなった。このような単調な被写体ならば望遠カメラのデジタルズームでも見られる描写に感じられる。
「iPhone 15 Pro Max」で一番良いカメラはやはりメインカメラだろう。1倍、2倍の描写は質感も色再現も豊かに感じられる。もちろん1.2倍の「28mm」相当、1.5倍の「35mm」相当でも同等の画質を得られる。
まとめ
発売されてそろそろ1週間が経つが、望遠カメラを中心に「iPhone 15 Pro Max」を使ってきた。どのカメラも問題のない写りだが、前述のように望遠カメラの挙動には注意が必要だと感じた。一般的には「iPhone 15 Pro」の3倍望遠カメラの方が、ポートレートやテーブルフォトで使いやすいのではないだろうか。もし「iPhone 15 Pro Max」を手に入れたら5倍120mmの描写を堪能するべきだろう。
使っていて残念に感じたのは「アクションボタン」だ。位置が上方すぎて指が届きづらいのと長押しが必要なのでカメラ起動を割り当てても使いづらいのだ。ケースによってはボタンのアクセスができないものもあった。
またゴーストとフレア対策もまだまだだと感じた。もちろんシチュエーションによっては低減効果が見られることもあるが納得できる感じではない。加えて、長時間撮影していると冷却をうながすダイアログも出現したので、PreResやシネマティック、48MP撮影時には注意したい。
とは言え万人がパッとシャッターを切って美しいカットが撮影できるスマートフォンには間違いない。USB Type-C採用によるデジタルカメラとの相性もよくなった。円安で販売価格も高いので、実機を触ってから「iPhone 15 Pro Max」か「iPhone 15 Pro」を判断することをオススメしたい。
なお本機をガシガシと使うべく、Peak Designの「EVERYDAY CASE」を現在テストしているが、フォトグラファーにはなじみのあるブランドだけあってさまざまなアクセサリーが揃っていて撮影が楽しい。
ストラップも両吊りにできるし、アルカスイス互換になるクリエイターキットや、写真のモバイルトライポッドなどで撮影領域が大いに拡がるだろう。