新製品レビュー

Peak Design エブリデイメッセンジャー13L V2

ファーストモデルとの違いを軸に使い勝手をレポート

左側が旧モデル。右が新モデルのV2

Peak Designのカメラバッグが「エブリデイラインV2」としてリニューアル。現行モデルの多くがモデルチェンジされた。リニューアルにあたって、バックパックやスリングなど、従来のイメージを踏襲しているものや、がらっと雰囲気が変わったもの、新しいタイプの発売など、実にたくさんのモデルがリリースされた。

今回、リニューアルしたバッグの内、エブリデイメッセンジャー13L V2について長期間使用する機会を得た。ふだんの撮影や取材時など、さまざまなシーンで使用していった内容をもとに使用感をお伝えしていきたい。

印象や手触りが大きく変わった

エブリデイメッセンジャー13L V2は、2月に発売された同名カメラバッグのリニューアルモデルだ。ファーストモデル「THE EVERYDAY MESSENGER」は2016年2月に発売されたモデルで、2017年12月にローリングケース用のパススルーを装備した仕様にマイナーチェンジされるなど、長く親しまれてきている同ブランドのアイコンともいえるバッグのひとつとなっている。ちなみに、このパススルーは本モデルでも踏襲されている。

ファーストモデルは、13Lと15Lのモデルがラインアップしていたが、今回のリニューアルに伴い、ラインアップが13Lモデルに絞られている。

ファーストモデル(左側。色はヘリテージタン)と並べたところ。新モデル(右側)はアッシュカラー。一見しただけでは製品のイメージに大きな変更はないと感じさせられる

では、何が変わったのか。外観を見ていくとすぐに気づかされるのが素材の変更だ。新モデルでは、外側の生地に100パーセントリサイクル素材の400Dナイロンが採用されている。ざらざらした手触りのあるファーストモデルに対して、より滑らかな感触を覚える部分だ。

新モデルを表側からみたところ

デザインで見ていくと、外観がころんとした丸みを帯びたシェイプになっている。生地が滑らかな印象のタイプに変わっているということも大きいが、全体に角ばったところがなくなっており、より優しい趣きになっている印象だ。これまでもカメラバッグ然としていないところが好評だったが、より中性的な風貌になっていると感じさせる。

エッジが丸みを帯びているため、実際のサイズよりも小さく見えるところもポイントだ。ブラックモデルであれば、視差効果でぐっとコンパクトに見えるため、街中での使用に適するのではないだろうか。バッグとしての“強さ”が丸みのある形状で吸収されているため、男女問わず使いやすいカメラバッグの数少ない選択肢になってくることと思う。

新モデル

実際の使い勝手は

外観形状自体には大きな変更はみられないが、細かな使い勝手には大きな違いがある。

筆者はふだんファーストモデルの13Lタイプを使用しているが、もっとも気になった違いが機材アクセスの方法だった。ファーストモデルでは天面側にジッパーが設けられており、すばやく機材を出し入れできる構造となっていたが、新モデルではフラップを開けなければ機材はもとより、PCの出し入れもできない構造になっている。

新モデル

バッグを斜めがけにしてカメラを出したり入れたりして使用する分には、その使い勝手に大きな差はない。なぜなら、ある程度の大きさのあるカメラの場合、フラップを大きく開けないと出し入れがしづらいからだ。これは機材室にジッパーが設けられているファーストモデルでも同じで、小物類の出し入れを別にすれば、機材の出し入れは結局フラップを開けておこなっていた。

ファーストモデルの天面ジッパーを開いたところ。フラップの固定金具を最もタイトになる位置にしていると、開口部もタイトになる。生地自体もハリのあるものであることが手伝って、少し大型の機材になってくると出し入れがしづらくなる
ファーストモデル。手前側の青い部分はスリットタイプのポケット

余談だが、フラップの開閉で使用するラッチはマグネットが仕込まれており、ファーストモデルも新モデルも、どちらもしっかりしたつくりとなっており、パチンと小気味よく固定できるので、使っていて気持ちがいい。こうした数値にあらわれてこない部分であっても、しっかりと踏襲されているということは、前モデルから完成度が高かったということでもあるし、ユーザーからの支持が高い機構であることの証左だろう。

ちなみに、このラッチ金具も長方形に近い形状となっていたファーストモデルに対して、新モデルではより丸みのある台形になっている。ブランドロゴが彫り込まれており、控えめながらアイコニックな主張がデザインに織り込まれている。

新モデルのラッチ部分

フラップ裏側には、薄マチのポケットが配されている。ここではモバイルバッテリーを収納しているが、厚みが1cmくらいのものであればスムーズに出し入れできる印象だ。

新モデルのフラップ内側ポケット

フロント側には、薄マチのポケットが配されている。予備バッテリーなどを入れておくのに丁度いいサイズの伸縮性のあるポケットも備えつけられている。これとスマホを入れておくくらいが容量的にはちょうどよいバランスだと感じる。

新モデルのフロント側ポケット

また、ファーストモデルからの仕様だが、荷室上側の左右に、生地が少し余るようにして余裕がもたせてあり、内部へ向かって畳み入れるようなつくりになっている。これにより、しっかりと閉まるフラップとあわせて水や埃、砂塵などがバッグサイドから侵入してくる不安が大きく軽減されている。この安心効果は大きい。

さて肝心の機材収納量や使い勝手だが、同社おなじみのFlexFoldディバイダーにより、仕分け能力は相変わらず高い。APS-Cサイズのカメラとしては比較的大型の部類に入る富士フイルムのAPS-CミラーレスカメラX-H1にXF50-140mmF2.8 R LM OIS WRを装着した状態で縦方向に収納したところ、ほぼジャストなサイズ感で収まった。

新モデルのFlexFoldディバイダーを非展開→展開したところ。折り曲げ位置で折り開くことができ、両サイドの板がしっかりと支えてくれる構造のため、ある程度重量のあるものを置いても耐えてくれる

このほか、XF35mmF2 R WRを装着したX-T1、GR DIGITAL、50mmの単焦点レンズなどが収納できた。このほか、予備バッテリーやモバイルバッテリー、ブロワー、LEDライト、2.5インチサイズのSSD、各種ケーブル類など、細々としたものもしっかりと区分けして収納できる。ちょっとした撮影行なら十分に対応できるレベルだ。

あれを出すために、これをよけてといった、煩雑な収納の仕方をしなくてもこれだけの機材が収まる利点は大きいはずだ。何よりも、詰め込んでもバッグがふくれあがらず、前記したような“シュッ”とした見た目になるところも好感がもてる。ひろげてみると、よくもまぁ、これだけ持ち出したね、といった量が収まっていたなんてことも。小ぶりな見た目だが、収納はさすがの合理設計が光っている。

新モデル。収納した機材をすべて出したところ

ミラーレスカメラを主体にした使用例をお伝えしてきたが、縦位置グリップつきの一眼レフカメラの収納も可能だ。さすがにレンズを装着した状態だとボディの高さで収納は難しかったが、レンズを外した状態であれば、難なく収納できる。深さもあるので、70-200mm F2.8の望遠ズームと、24-70mm F2.8クラスであれば、あわせて持ち運べると感じた。

新モデル。収納しているのは、EOS-1D X Mark IIIとEF70-200mm F2.8L IS III USM。

PC収納など

PCの収納部は、機材室の背面に位置している。薄い仕切りが備えつけられており、PCと紙資料を分けて収納しておきたい場合にも便利だ。薄い仕切りではあるけれども、PCを引き出した時に、いっしょになって紙資料やクリアファイルが出てこないので、これがあるとないとでは大きな違いがある。

新モデル。PCの収納は機材室の背面側

PC収納部にアクセスするためにはフラップを全開にする必要がある。ここがファーストモデルとの一番の違いであり、同モデル使用者が新モデルに合うかどうかが分かれる部分だと思う。そう、ファーストモデルでは天面のジッパーを開くことで、PCポケットに独立アクセスができていたのだ。

この天面ジッパー廃止は、おそらく意見が分かれるだろう。止水タイプとはいえ、開口部には違いないので、完全に水濡れを防止できるとは限らないため、ジッパーの廃止は、前記したような雨水や埃の侵入から機材を守るという点で歓迎できる部分だ。しかし、PCや資料だけを取り出したい場面であったり、フラップを大きく開けない場面は実際のところ多々ある。こうしたシーンでは、ひとつしか機材アクセスの方法がないことに閉口させられた。

旧モデル。独立してPCを取り出すことができる

とくに、取材時などでカメラを首から下げていて、PCや紙資料の出し入れを頻繁にしたり、予備バッテリーへの交換などで、それぞれの荷室に独立してアクセスできないことは、思いの外ストレスだった。細かな収納ポケットが複数箇所に設けられていて収納機材がごちゃごちゃにならない利点は大歓迎なのに、アクセスするためにはフラップを全開にしなければならないという使い方は、両モデルを併用していることで余計に強調されて感じられた。

ただ、救済措置がないわけではない。バッグ外側にもポケットが2つ用意されているのだ。隠しジッパー仕様となっているため、一見ポケットがあるとは気づかないデザインとなっているが、両側面に薄めのポケットがある。

新モデル側面。ジッパーは止水タイプ
新モデル。スマホくらいであれば余裕でおさまる

ファーストモデルでも同様のポケットはあるが、開口しっぱなしで収納物の落下という不安が常につきまとっていた。フロントキャップなどの小さなものであればそこまで不安は覚えないものの、ちょっと厚みがあったり、大きめのものであったりすると、落としそうで収納するのをためらうほどだった。

旧モデル。開口部は閉まらない構造
旧モデル。ポケットの深さは2.5インチのSSDが少しきついくらい

ここがジッパー式となっているため、例えばスマートフォンや小銭入れなど、ちょっとしたもの、それでも常に携帯するようなものを安心して収納しておくことができる。アクセス性もいいため、予備バッテリーなどの収納にも良いだろう。

片側にはドローコードつきのアンカーリンクスも仕込まれているため、複数種類のものを収納していても、こぼれ落ちる不安が軽減されるところもポイントだ。

肩下げでのバランス感が良くなった

ファーストモデルでバッグの両側面につけられていたショルダーストラップは、新モデルでバッグ背面側に直接縫い付けられるかたちに、付け位置が変更されている。また、ストラップの素材自体も全体にしっかりとした固さのあったファーストモデルに対して、新モデルではやわらかな素材感になっている。このストラップの仕様は、他のリニューアルしたモデルでも共通の仕様となっている。

旧モデル。ストラップ基部が側面についている
旧モデル。ストラップは幅がひろくすべりが良いタイプ
新モデル。全体がやわらかに曲げられるソフトな素材感となっている

このストラップ基部位置と素材感の変更により、肩下げした状態と斜めがけした状態で、よりバッグが身体に沿った位置にくるようになっており、持ち重り感が軽減しているように感じる。少なくとも、移動時にバッグがバタつくことが明らかに減っているため、持ち運び時に疲れづらくなった印象だ。バッグが身体側に寄ってくる位置にストラップの基部がきているため、肩下げ時の重力のかかり方がより直線的になっているのだと思う。ストラップ自体も柔らかい素材になっており、身体に沿った形状になってくれるため、そうした効果がより得やすくなっているのではないだろうか。

三脚の固定も可能だ。バッグ底面側には4箇所アタッチメントを固定できるループが設けられており、付属のフックつきのストラップを取りつけることで固定できる。今回装着した三脚はGITZOのトラベラータイプでサイズは1型。コンパクトタイプだが、雲台を装着した状態でもすこしはみ出る程度で固定できた。これ以上大型になってくると、公共の乗り物などで他の乗客に当たってしまうだろう。固定はフリーベルトタイプなので、敷物や上着などを丸めて固定してもよさそうだ。

新モデルを斜めがけしたところ
新モデルを片方の肩に下げたところ。重力方向にすなおに重量がかかってくるイメージだ

雨天での使用感など

雨濡れでの不安が少ないと前記していたが、実際のところはどうなのだろうか。比較的風の強い、斜め降りの雨の日に持ち出してみたが、レインカバーなしでも内部への浸水はみられなかった。水を弾くとまではいかないが、しっとりと水を含んだ印象で、撮影中のごく短い時間でいつの間にか乾いているほどだった。過信は禁物だとは思うが、かといって心配しすぎる必要はなさそうだ。

雨にぬれた直後の状態の新モデル。天面側に雨粒がついているのがわかるだろうか

底面は直接地面に置くシーンを想定しているのだろう、濡れや汚れ防止の加工が施されている。面積も広めで扱いやすい印象だ。汚れた際も拭き取りやすいフラットな形状であるため、衣類などを固定する場合にも、すばやく汚れを拭き取ることができて便利だ。

新モデルを底面側からみたところ。ベルト固定用のループは外側に広がるようなイメージで取りつけられている。スリットのように見える部分はパススルー構造になっている部分だ

まとめ

外観形状自体はファーストモデルから大きな変更があるとは感じていなかったエブリデイメッセンジャーだが、日常的に持ち歩くに従い、新旧それぞれの良さがわかってきた。ファーストモデルでは柔軟に運用できる点に魅力があるが、新モデルでは、そうした使い勝手はそのままに、機材の保護や重心のバランスなど、細かな体感面でのレベルアップが図られていると感じた。

拡張性やユーザビリティはそのままに、よりそのモデルでのコンセプトを強化してきたというべきだろうか。ブランドや製品のコンセプトがそれだけ練りこまれてきたということなのだろう、それは確実な熟成感を製品にもたらしているようだ。

あとはどのように使用していくかだが、重量バランスが良くなった点は大歓迎だ。機材量が増えてきた際に重量の分散バランスが悪いと疲れやすさが増すが、モデル撮影などで関係者の荷物や様々な撮影小物を持った状態でも、ファーストモデルとは疲れ方が違っていた。柔らかくなったストラップが身体に沿った形状になることで、ファーストモデルのように滑りづらくなくなったことも大きい。

ファーストモデルのストラップは、ハリとコシのあるタイプで、衣類にもよるだろうが、すべりやすかったのだ。これはこれで利点がたくさんあるのだけれど、移動のたびにバッグが暴れやすくて疲れやすかったのだ。今回のリニューアルで他のモデルでも同じストラップ生地に変更が入っているが、他のモデルの試用が楽しみとなった。それくらいの違いがあることは、あらためて強調しておきたい。

いま、コンセプトが練りこまれてきたのではないか、と感想をお伝えしたが、それは、全体のデザインイメージにも及んでいる。パッと見てもわかるとおり、新モデルでは全体的にすっきりとした印象に仕上げられているが、理由を考えていくと、生地素材の変更のほかにも、縫製のステッチがより細かく、目立たなくなっていることも、そうした印象を抱かせることを手伝っているのではないか、と思い至った。フラップの部分を見ても、かなりキワキワの部分で縫製のステッチが走っており、かなり気を配ったデザインコンセプトで製品づくりがなされていることが伝わってきた。

全体に丸みを帯びた形状であったり、なめらかな生地感は、よりファッションアイテムとしての見え方に配慮した結果だろう。ちょっと無骨なイメージを伴っていたファーストモデルから、より中性的な趣になり、デザイン面でも使いやすい仕上がりになった新モデル。これも受け止め方次第ではあるけれども、ユーザーの間口をひろげる一手となっていくのではないだろうか。

本誌:宮澤孝周