新製品レビュー

Canon EOS M100(外観・機能編)

上級機と同等のセンサーや映像エンジンを搭載した入門モデル

EOS M100は、キヤノンが10月5日に発売するAPS-Cサイズセンサー搭載のミラーレスカメラ。同社のミラーレスカメラ「EOS M」シリーズの中にあっては最も低価格な入門モデルに位置づけられる。

同じく入門モデルであるEOS M10の後継機で、先行して発売されているEOS M5、EOS M6の下位機種にあたるが、どちらかというと男性的なデザインの上位機種に対し、優しく女性的なイメージのデザインに仕上げられていることが特長。

しかし、そんな小柄でおしゃれな見た目とは裏腹に、画質や撮影機能などが大幅に強化された結果、上位機種にも迫るハイスペックなカメラに進化している。

ライバル

おしゃれなミラーレスカメラといえば同クラスのモデルが各社から発売されているが、初心者、特に若い女性から高い人気を得ているのがOLYMPUS PENシリーズであり、本機EOS M100の強力なライバルといえる。

デジタル一眼レフカメラでは高いシェアを誇るキヤノンの最新機種であるだけに、ミラーレスカメラのカテゴリーでどのようにユーザーの関心を集めていくのか、こちらも注目である。

大きさ、重さ

幅が約108.2mm、高さが67.1mm、奥行きが35.1mmで、重さが266g(本体のみ)となっている。前機種のEOS M10は、幅約108.0mm、高さ66.6mm、奥行きが35.0mmで、重さ265gなので、ほんのわずかだけ大きく重くなっている。

しかし、実際に手にしてみてもその差を感じることは難しく、事実上同等と言って全く問題がないだろう。“最もデイリーユースなEOS M”としての薄型軽量ボディは健在という訳である。

ボディデザイン

ボディデザインは、モダンでありながらもカメラらしさをもった、シンプルでおしゃれなEOS M10の形状を基本的に引き継いだものとなっている。

ただ、よく見ると細部の形状はいろいろと変更が施されており、EOS M10ではまだ鋭さを残していた各部のエッジが緩やかになり、全体的に曲線が強調されより優しい印象になった。

また、ボディ前面の表面処理には新たに布目パターンが採用され、滑りにくくグリップしやすくなった。丸みのある形状に布目パターンの組み合わせは、見た目と実用性を兼ね備えており、繊細な手を持つ女性にも喜ばれそう。

カラーバリエーションはホワイト、ブラック、グレーの3色が用意される。EOS M10でも同様の3色が用意されていたが、EOS M100のホワイトとグレーでは布目パターン部とカメラ上下部の色調が異なるツートンになっており、よりカメラらしさや新しさを感じることができる。

ブラック
グレー

キヤノンオンラインショップで限定販売されるフェイスジャケットを装着して、好みのスタイルを楽しむことができるのはEOS M10と同じ。

フェイスジャケットは9種類とEOS M10の7種類より増えたが、EOS M10には用意されていた後付けのグリップはなくなってしまった。自分だけの個性を演出できるフェイスジャケットの方が人気があったということだろうか?

フェイスジャケットの1つ「EH31-FJ」(ボーダーブルー)を装着したところ

ただ、フェイスジャケットにもグリップに相当する凹凸があるので、デザイン的な問題だけでなく、ホールディング性能が向上するという実用上の利点もある。

ただし、フェイスジャケットを装着するとバッテリー収納部の蓋までカバーされてしまうので、バッテリー交換の際にはいちいち外さなければならなくなってしまう。とはいえ、頻繁にバッテリー交換が必要になる状況は考えにくいので、それほど深刻な問題でもないだろう。

操作性

カメラ上面が前後に湾曲した形状となったため、モードスイッチ(撮影モードダイヤル)や電子ダイヤルは指のとっかかりがよくなり、EOS M10に比べて操作しやすくなった。

特に操作頻度の高い電子ダイヤルが、カメラ前面から人差し指で操作できるだけでなく、カメラ背面から親指でも操作できるようになった点は好印象。

小さなボディなのでボタン類は小さくなってしまうのは仕方がないが、その分、指面の当たり具合とクリック感がはっきりしており、使いやすさは良好だ。

カメラを構えた状態で、自然にシャッターボタンに指が誘導されるスプーンカットももちろん引き継いでいる。EOS M100が“EOS”らしさを主張している1つがここである。

また、本機はEOS M10同様にタッチパネルを搭載しており、タッチAFやタッチシャッターはもちろん、撮影モードやホワイトバランスの変更など、ほとんどのカメラ設定をタッチ操作で行うことができる。

本格的なカメラの操作に不慣れでも、スマートフォンの操作に慣れていれば、比較的馴染みやすいのではないかと思う。

また、本機はEOS M10同様にタッチパネルを搭載しており、AFやシャッターはもちろん、撮影モードやホワイトバランスの変更など、ほとんどのカメラ設定をタッチ操作で行うことができる。

本格的なカメラの操作に不慣れでも、スマートフォンの操作に慣れていれば、比較的馴染みやすいのではないかと思う。

撮像素子と画像処理関連

撮像素子には、デュアルピクセルCMOS AF対応の有効約2,420万画素CMOSセンサーを搭載。センサーサイズはAPS-Cサイズで、映像エンジンには最新のDIGIC 7が採用されている。

この仕様は、上位機種であるEOS M6、EOS M5、さらにはデジタル一眼レフカメラのEOS Kiss X9i、EOS 9000D、EOS 80Dなどと同等。

小さなボディながらも、キヤノンの現行APS-Cサイズデジタルカメラと同じように、大きな背景ボケや豊かな階調といった高画質を楽しむことが可能だ。

常用の最高感度はISO25600となっており、夜景や室内など暗い条件でも、ノイズの少ない綺麗な写真を手持ちで撮ることができる。優れた高感度特性も大型の撮像素子と最新の映像エンジンが搭載されたおかげである。

AF

AFの大きな進化点は、撮像素子がデュアルピクセルCMOS AFに対応したことであろう。デュアルピクセルCMOSセンサーは1つ1つの画素が位相差AFセンサーを兼ねるというキヤノン独自の技術。

これで、コントラストAF方式を併用する前機種EOS M10のハイブリッドCMOS AF IIよりもAF速度が速くなり、上位機種のEOS M5、EOS M6に並んだことになる。

AF枠を画面の最も端のに移動させたところ

約2,420万画素のすべてが位相差センサーとしても機能するため、撮像面の約80×80%の広い範囲で高速・高精度な位相差AFが可能となり、液晶モニターをタッチするだけで目的の箇所にAFエリアを簡単に移動できる。

連写

連写性能はAF追従(サーボAF)で最高約4コマ/秒、AF固定(ワンショットAF)で最高約6.1コマ/秒となっている。

EOS M10はAF固定で最高約4.6コマ秒だったので、連写性能は大幅に向上したといってよいだろう。

連写時の連続撮影可能枚数も、EOS M10ではRAWのみで約7枚、RAW+JPEG(ラージ/ファイン)で約4枚であったところ、RAWのみで約21枚、RAW+JPEG(ラージ/ファイン)で約19枚と大きく増加している。

ただし、JPEGのみの場合、EOS M10では約1,000枚までの連続撮影が可能であったが、本機ではなぜか約89枚に減少している。

とはいえ、最高約6.1コマ/秒で89枚以上の連続撮影をすることはまず考えられないので、実用上はまったく問題ないだろう。

クリエイティブアシスト

ライブビュー画面を見ながら「ぼかす←→くっきり」や「すっきり←→あざやか」といった効果をスライダーで調整できるクリエイティブアシストに、新たに「マゼンタ←→グリーン」を調整できる「色合い2」のスライダーが追加された。

「色合い2」のスライダーを調整したところ
ノーマル
マゼンタ側にしたところ
グリーン側にしたところ

EOS M10で好評だったという通り、撮影前からライブビュー画面で撮影機能の効果を確認できる、ミラーレス機の特性をよく活かした、初心者に優しい機能だといえる。

液晶モニター

背面の液晶モニターはワイド3型で約104万ドット。チルト式の可動モニターで上方向に約180度まで動かすことができる。

主に“自撮り”への対応を狙ったこの液晶モニターの仕様はEOS M10と同等だ。ただ、下向には展開できないためEOS M5やEOS M6のようにハイアングル撮影がやりやすいといえないのは少し残念なところ。

内蔵ストロボ

内蔵のストロボは手動でポップアップする仕様。ガイドナンバーは約5(ISO100・m)。標準ズームレンズEF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STMの広角24mm相当をカバーする。

動画機能

動画撮影機能も充実しており、高画質なフルHD/60pの動画を記録することもできる。APS-Cセンサーによる美しいボケ味はまさに動画撮影に定評のある「EOS MOVIE」のそれであり、デュアルピクセルCMOS AFによるなめらかなAF動作と高い追従性を両立している。

動画撮影時はボディ内での手ブレ補正(電子式)が働くため、光学式手ブレ補正機構を搭載するレンズと組み合わせた「コンビネーションIS」によって、より高い補正効果が可能となる。

通信機能

EOS M10にも搭載されていたWi-Fi通信機能に加え、Bluetooth(Bluetooth Low Energy)を利用した通信も可能となった。

Wi-Fiに比べて大幅に消費電力が少ないBluetooth接続によって、スマートフォンとカメラの常時接続が可能となり、撮影した画像を特別な操作をしなくても次々にスマートフォンに転送するなどの便利な使い方ができる。

また、無料のキヤノン純正アプリ「Camera Connect」とスマートフォンのGPS機能を利用することで、撮影画像に位置情報を追加できるようになった。

記録メディア

ボディ左側面(カメラを構えた状態で)にSDカードスロットを備えている。記録メディアは、SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカード(UHS-I規格に対応)に対応する。

小型化を優先した仕様であるため、ちょっとカバーが開けにくいなと思ったら、液晶モニターを引き上げると開けやすくなる。

端子

端子類はボディ左側面(カメラを構えた状態で)にある。カバー内には2つの端子が装備されており、ひとつがHDMI mini出力端子で、もうひとつがPC、PictBridge用端子(Hi-Speed USB相当)となっている。

電源

バッテリー室はボディ底面に独立して装備されている。

バッテリーは、バッテリーパック「LP-E12」を1個使用。付属のバッテリーチャージャー「LC-E12」を使用して充電する。

撮影可能コマ数(電池寿命)はCIPA規格準拠で)約295枚。動画撮影可能時間は、約1時間20分となっている。

まとめ

冒頭で述べた通り、おしゃれでかわいいデザインでありながら上位機種に迫るハイスペックを搭載しているところが、EOS M100の特長。

ますます洗練されたデザイン、撮像素子と映像エンジンの強化など、そのコンセプトは先代のEOS M10より大きく進化しているのは明らかだ。

特に、高度な知識や経験がなくてもスムーズに扱うことのできる操作系は、さすがキヤノンと感心してしまう。ボタン類を簡略化したスマートフォンのような簡単操作は、今の若い世代にとってもきっとわかりやすいことだろう。

Instagramの人気をふまえた「インスタ映え」という言葉をよく聞くようになった近頃、スマートフォンとの相性がよいBluetooth通信機能が加わった本機であれば、EOSクオリティの綺麗な写真を簡単にWebにアップできるところもポイントが高い。

あとは実際の使い勝手や画質が気になるところであるが、そちらはつづく「実写編」に譲りたい。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。