新製品レビュー
α9(外観・機能編)
操作部材を大幅に見直し EVFの見えもトップクラス
2017年6月13日 07:00
ソニーの35mmフルサイズミラーレスカメラで7機種目となるα9は、約2,400万画素の解像度をもってして秒間20コマの連写がRAW記録でも可能で、しかも進化した電子シャッター機能を用いることで露光時のブラックアウトが出ない「新世代ミラーレスカメラ」といえる画期的な製品だ。
AF/AE追随しながら高速連写が必要な、スポーツなどの動体を捉える用途に向けたカメラだが、これまでキヤノン、ニコンの両フラッグシップ機がしのぎを削りながら開拓してきた市場を切り崩しにかかろうとする意図がハッキリと伺える。
α9の高速連写、像面位相差AF、高画質、そしてブラックアウトフリーのいずれをも実現させたのは、ソニーが長年培ってきたイメージセンサー技術だ。その結晶の成果を今回の「外観・機能編」と次回の「実写編」の2回に分けてお届けする。
デザイン
背面レイアウトの変更や、厚みの増加はあるが、遠目に見るとα7 IIシリーズと区別が付かず、ソニーのフルサイズミラーレスが採用してきた、EVFファインダーを光軸の垂直上に配置して、ボリュームのあるグリップ、複数個の操作ダイヤルを搭載するなど、一連のα7 IIのデザインと同列ではある。しかしながら、各種ボタン類は再配置され、操作感が少なからず向上している。
装着レンズにもよるがバッテリーグリップをつけない場合は、ミラーレスの小さなボディゆえ、薬指から下、小指にかけての架かりの悪さは否めない。本体の発売と同時にグリップエクステンションGP-X1Mがオプションで用意されたので、バッテリーグリップ装着時の重量増加を避けたい場合は、こちらを装着すると良いだろう。
70-200mmや100-400mmの望遠レンズを装着する際は、バッテリーグリップVG-C3EMを付けると圧倒的にバランスが良い。キヤノンEOS-1D X Mark IIやニコンD5等の縦長のボディに慣れている手のひらには、違和感なく握ることができた。
ボタン類
ボディ上面向かって右側は、露出モードダイヤルと露出補正ダイヤルの存在が目を引く。α7から続くレイアウトだが、あくまで静止画を撮るカメラであることを主張している。
シャッターボタン周りのリングスイッチが電源のON/OFFで、右手人差し指での操作はブラインド状況でもクイックに行える。
2つ並ぶカスタムボタン(C1、C2)は各種の割り当てが可能で、私の場合は撮像範囲のクロップON/OFFやAFエリアモード変更、ホワイトバランスを割り当てることが多かった。
上部左側は、α7シリーズにはなかった連写(ドライブ)モードダイヤルと、同軸下にAF動作モードダイヤルが設けられた。ドライブモードは1枚撮影、電子シャッター時最高20コマ/秒のH、同じく10コマ/秒のM、同じく5コマ/秒のL、セルフタイマー、ブラケット撮影と6つのパターンが、メニュー画面に入ることなく、メカニカルに切り替えるられる。
AF動作モードは、動く被写体を追い続けるAF-C、一度の合焦で止まるAF-S、AFモード中にレンズのピントリングでマニュアルフォーカスができるDMF、そして通常のマニュアルフォーカスのMF。これら4モードがメカニカル動作で切り替えられる。
そして、α7シリーズから数々の変更点があるのがこの背面のボタン類。AF-ONボタンが独立し、フォーカスエリアを動かすジョイスティック型のマルチセレクターが適度な位置に配置された。動画のREC-ONボタンも右角からファインダー横に移され、キヤノン一眼レフカメラのレイアウトに近づいた。
背面左側は、α7シリーズではメニューボタンが1つだけだったのに対し、カスタムボタンのC3がそのメニューボタンの左に追加された。
撮像素子
α9がα9たる要のデバイスである撮像素子。35mmフルサイズで有効約2,420万画素センサーには、フォーカス検出用の位相差画素も組み込まれている。
そのイメージセンサーをシフト(動かして)させて5軸手ブレ補正を機能させている。受光したデータを素早く画像生成エンジンへと導くためにメモリーを撮像面裏に内蔵させており、同社では積層型CMOSセンサー「Exmor RS」と呼んでいる。
スチール写真での記録画素数は約2,420万画素。EOS-1D X Mark IIやD5が採用する2,000万画素クラスより多く、350dpiが標準となる商業印刷の場合に拡大補間することなくA3での出力が可能となる数値だ。
電子シャッター時に最高20コマ/秒の撮影が、無音、無振動、ブラックアウトなしで可能となり、その間にもAF/AE追随を実現させるべく、秒60回の読み出しを繰り返して演算を続けている。
設定可能な最高感度は電子シャッターの場合でISO25600。メカシャッターの場合でISO51200となる。これに加え、拡張設定では+2段分となるISO204800相当に設定可能。最低感度は電子、メカシャッター共にISO100。拡張設定で-1段分のISO50相当が可能。
拡張設定とは、メーカーは推奨はしないが使えないわけではないという緊急用途と考えておくといい。
画像処理エンジンは新採用された「BIONZ X」。従来比で1.8倍に高速化され、スチール画像生成では、中・高感度域でのノイズリダクションと解像感・質感再現の向上を両立させたとしている。
連写性能
電子シャッター使用時、H設定で最高20コマ/秒、Mで最高秒10コマ/秒、Lで最高秒5コマ/秒。メカシャッター使用時、H設定で最高秒5コマ/秒、Mで最高5コマ/秒、Lで最高2.5コマ/秒となる。
連続撮影可能枚数は、JPEGのL・エクストラファインで362コマ、非圧縮のRAWで128コマとなる。バッファ性能上は十分なものであるが、残念ながらバッファが解放されてもSDカードへの書き込みが終了しておらず、その書き込み中は画像確認やメニュー操作ができなくなってしまう。
AFシステム
撮像センサー面に配置された位相差検出センサーがAF検出を行う像面位相差式のオートフォーカスに加え、撮像センサーで受け取ったコントラスト情報を併用させる「ファストハイブリッドAF」を搭載。
また「フルサイズEマウント機初の4Dフォーカス」と謳われる所以は、位相差センサーを撮像面の93%にあたる広範囲に693点分布させながら、これまでの「ファストハイブリッドAF」に加えて、メカシャッターを動かさずブラックアウトフリーとなったことで、撮影時でも測距をし続け、さらに精度を上げたAFを使った高速連写が可能となったことにある。
ファインダー
約0.78倍(50mmレンズ、無限遠、-1mディオプター時)、1.3cm(0.5型)の電子ビューファインダーは、369万画素の有機ELパネルに、ツァイスのT*コーティングを施した4枚の両面非球面の接眼レンズで構成された「Quad-VGA OLED Tru-Finder」を名乗る。
60fpsもしくは120fpsでの高速表示レートも相まって、ミラーレスカメラが搭載するファインダーの中ではかなりクリアでリニアな画像を得ることができる。
目や眼鏡が触れるゴム製のアイカップはロックが付いて脱落しにくい仕組みで、接眼部に近づいた際に液晶モニターが消灯し、ファインダー側が表示される、アイセンサーが付いている。さらには明るさ、色温度の調整も可能となっている。
液晶モニター
7.5cm(3型)TFTモニターは144万画素で、上面へ107度、下面へ41度のチルトが可能。カメラ前面への反転や横方向へのスイングはできない。タッチ操作も可能で、フォーカスエリアの直接変更なども行える。明るさは変えることができるが、色温度の変更はできない。
動画
最高で4K(3,840×2,160)30p、ビットレート100Mbpsの記録が可能。
4K出力は撮像素子が持つ長辺6,000ピクセルからの情報を凝縮させ、長辺3,840ピクセルとなる4K映像を生成させている。
4Kを選んだ際、XAVC S 4K24p、ビットレートが60Mbpsか100Mbpsの設定時は、装着するFEレンズの画角通り(16:9にクロップされる)の撮影ができるが、XAVC S 4K30p/60Mbpsの設定では1.2倍相当のクロップ画角となる。また、APS-C/Super 35mmモードでは1.5倍相当のクロップとなるが4K記録が可能だ。
FHD(2K)ではビットレート100Mbpsでの120pハイスピードも撮影可能。他、1fpsからのタイムラプス動画にも対応し、4K動画からの切り出し静止画も作成が可能だ。
動画撮影時は連続記録時間は、スチールカメラの扱いを受け約29分までと制限される。
通信機能
Wi-Fiの内蔵はもちろん、静止画のみになるものの有線LAN端子RJ-45を搭載し、指定のFTPサーバーへと高速転送が可能。他にBluetoothやNFCにも対応しており、スマートフォンへの画像転送などに使える。
端子類
スタジオなどでの大型ストロボを発光させられるよう、有線LANのRJ-45の下に、シンクロターミナルが付いた。
他は動画撮影時の音声マイク端子、音声確認用のヘッドフォン端子、動画出力やディスプレー表示の際のHDMIマイクロ端子、画像や動画をパソコンに転送するマルチ/マイクロUSB端子が付く。
記録メディアスロット
SDXCメモリーカードのスロットが2つ。下段がスロット1でUHS-IIに対応し、上段がスロット2でメモリースティックデュオにも対応する。下段が1、上段が2とややこしいことと、片方のスロットのみがUHS-II対応なのが少々残念なところだ。
バッテリー
ボディ底面の蓋を開けてバッテリーNP-FZ100を1つ挿入する。キヤノンやニコンであればラウンド形状になっている方をグリップサイドに持ってくるが、α9では直線形状の面をグリップサイドにもってくる。
撮影可能枚数は、公称でファインダー使用時で約480枚、液晶モニター使用時で650枚とのことだが、実写時の一例からするとAF固定、ファインダー使用、Hモードでの高速連写で、およそ6,000カットを撮影した後でも残量が28%と表示されていた。
付属の充電器BC-QZ1での充電は、およそ空のNP-FZ100を約2時間半で充電完了できた。
まとめ
現在、市場を賑わす高速連写機は、ミラーレスカメラではマイクロフォーサーズのOLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIのAF/AEを追随18コマ/秒、APS-Cのソニーα6500が11コマ/秒、一眼レフではEOS-1D X Mark IIが14コマ/秒、D5が12コマ/秒と並ぶ。これら並み居るライバル機種を凌駕しながら、ファインダー像がカクカクしないブラックアウトフリーとなれば使ってみないわけにはいかない。
と思いつつも、α7シリーズでの操作性に苦渋をなめた経験もあり、ソニーのカメラは厄介だという先入観があった。さらには電池の持ちも心配の種で、実際の現場でどれほどのパフォーマンスが期待できるか、期待半分、心配半分で臨むこととなった今回のレビュー。
実地撮影を前に操作性の確認などで触れているうち、心配の種も少しずつ減ってきたのだが、果たしてこれまでに慣れてきた一眼レフカメラのフラッグシップ機を置き換える存在となりうるのか……。次回は、このα9での実写レビューをお届けする。