ミラーレスカメラ用メーカー純正レンズまとめ

富士フイルム編:怒涛の単焦点レンズ群 高品位なデザインにも注目

「ミラーレスカメラ用純正メーカーレンズまとめ」、第1回オリンパス編、第2回ソニー編に続き、第3回の今回は富士フイルム編をお届けします。(編集部)

※「〜mm相当」の表記は、すべて35mm判換算での数値になります。
※実勢価格の表記はすべて税込での価格です。

ラインナップの概要

富士フイルムの最初のミラーレスカメラは、2012年2月に発売されたX-Pro1だ。他のミラーレスカメラ各社はズームレンズ2本(パナソニック)またはズームレンズと単焦点各1本でのスタートだったのに対して、富士フイルムは3本の単焦点レンズをラインナップ。小型軽量さよりも画質と質感を追求する姿勢を前面に押し立てたのが特徴的だった。

その後、ズームレンズも登場したが、単焦点レンズのほうが数が多い状況は変わらず、現行の22本の交換レンズラインナップ(2本のテレコンバーターを含めると24本)のうち、単焦点レンズが13本もある。占有率にして約59%で、これはソニーの約44%(EとFEの合算)やオリンパスの約43%、パナソニックの約39%に比べてはるかに高い。

交換レンズのグレードはXFと入門者向けのXCの2シリーズにわかれているが、XCシリーズは2本しかない。

なお、名称に「WR」がつくものは防塵・防滴仕様、「LM」がつくものはAF駆動に音が静かなリニアモーターを搭載している。

ほかに、1.4倍と2倍のテレコンバーター(対応レンズはXF 50-140mm F2.8 R OIS、XF 100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS WR)、プロテクト/クロス/ソフトの3種類のフィルターを内蔵したフィルターレンズXM-FL(24mm F8)もある。

広角域:充実の単焦点レンズ群。ズームも高品質

ズームレンズ

広角ズームレンズは「XF 10-24mm F4 R OIS」(15-36mm相当)のみ。1本だけだが、画角域は十分だし、開放F4ならそう悪くはない。描写性能も良好だし、気になりやすい歪曲収差も電子補正が行き届いている。風景や建築物などにも使いやすい。

単焦点レンズ

広角域の単焦点レンズは多彩。純正レンズではほかにない画角の「XF 14mm F2.8 R」(21mm相当)や、大口径の「XF 16mm F1.4 R」(24mm相当)、「XF 23mm F1.4 R」(35mm相当)のほか、薄型の「XF 18mm F2 R」(27mm相当)、コンパクトタイプの「XF 23mm F2 R」(35mm相当)がある。

予算に余裕があるなら「XF 16mm F1.4 R」や「XF 23mm F1.4 R」でボケをいかした画づくりも楽しいし、軽快さ重視で「XF 18mm F2 R」や「XF 23mm F2 R」を選ぶのも手だ。なお、「XF 23mm F2 R」のみ防塵・防滴となっている。

XF 23mm F2 R
実勢価格:4万9,000円前後
交換レンズレビュー:XF23mmF2 R WR

標準域:キットレンズながら高級感あり

ズームレンズ

標準ズームレンズは、大口径の「XF 16-55mm F2.8 R LM WR」(24-84mm相当)、キットレンズにもなっている「XF 18-55mm F2.8-4 R LM OIS」(27-83mm相当)、高倍率ズームタイプの「XF 18-135mm F3.5-5.6 R LM OIS WR」(27-203mm相当)のほか、お手ごろタイプの「XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS II」(24-75mm相当)の4本がある。

24mm相当の広角端とズーム全域F2.8の明るさが欲しいなら「XF 16-55mm F2.8 R LM WR」しかないが、手ブレ補正がないのは泣きどころ。

携帯性や使い勝手のよさでは「XF 18-55mm F2.8-4 R LM OIS」を推す。外観も安っぽさがなく、画質面でも不満はない。

「XF 18-135mm F3.5-5.6 R LM OIS WR」はやや暗めだが、ワイドレンジなので旅行用にも使いやすい。

なお、「XF 16-55mm F2.8 R LM WR」と「XF 18-135mm F3.5-5.6 R LM OIS WR」の2本は防塵・防滴仕様だ。

単焦点レンズ

標準域の単焦点レンズは、薄型コンパクトな「XF 27mm F2.8」(41mm相当)と、王道スペックの「XF 35mm F1.4 R」(53mm相当)、スリムタイプの「XF 35mm F2 R WR」(53mm相当)の3本がある。

一眼レフスタイルのX-Tシリーズなら「XF 35mm F1.4 R」のほうが見ばえ的なバランスはいいが、X-ProやX-E、X-Aシリーズなら「XF 35mm F2 R WR」との組み合わせがレトロっぽくて楽しい。

ちょっと不思議なのは「XF 23mm F2 R」もそうなのだが、明るいF1.4ではなくて、F2だけ防塵・防滴仕様になっていること。どういう住み分けを考えているのか気になってしまう。

望遠域:ズームは幅広い選択肢。とろけるようなボケのAPDレンズも

ズームレンズ

製品数は多くはないが、バリエーションに富んでいる。大口径タイプの「XF 50-140mm F2.8 R OIS WR」(75-210mm相当)に超望遠域までカバーする「XF 100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS WR」(150-600mm相当)、お手ごろな選択肢の「XF 55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS」(83-300mm相当)と、エントリー向けの「XC50-230mm F4.5-6.7 OIS II」(75-345mm相当)の4本から選べる。

明るさと画角を両立させたいなら「XF 50-140mm F2.8 R OIS WR」がいちばんだ。画質もボケも素晴らしいが、重さがあるのとお値段が張るのは難点。

予算を抑えたいなら「XF 55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS」をおすすめしたい。近いスペックのソニー「E 55-210mm F4.5-6.3 OSS」と比べると重さおよび価格にびっくりさせられるが、しっかりしたつくりとシャープな描写は要チェックだと思う。

単焦点レンズ

望遠系の単焦点レンズは、3つの焦点距離で4本がラインナップ。携帯性のいいF2の明るさと防塵・防滴性を備えた「XF 50mm F2 R WR」(75mm相当)。明るさが魅力の「XF 56mm F1.2 R」(84mm相当)とほぼ同じ光学系にアポダイゼーション(APD)フィルターを組み込んでボケ味を追求した「XF 56mm F1.2 R APD」(84mm相当)。望遠らしい圧縮効果が感じられる「XF 90mm F2 R LM WR」(135mm相当)がある。また、画角的には「XF 60mm F2.4 R Macro」(90mm相当)も選択肢に入る。

とろける系のボケ味がお好みなら「XF 56mm F1.2 R APD」はとても魅力的だが、描写性能は通常モデルの「XF 56mm F1.2 R」も素晴らしいし、くっきりした玉ボケに目が慣れている人も多いのではないだろうか。この2本は富士フイルムユーザーにとって悩ましい存在だ。

一方、「XF 90mm F2 R LM WR」もこの画角の単焦点レンズはあまりない(オリンパスのM. ED 75mm F1.8がわりと近い)だけに気になる1本だ。

マクロ:小型ながら等倍撮影には非対応

Xシリーズの泣きどころのひとつが、「XF 60mm F2.4 R Macro」(90mm相当)の1本しかマクロレンズがないこと。

王道の中望遠マクロレンズでしかも小型軽量なのはいいが、最大撮影倍率は等倍ではなく0.5倍なのだ。その代わり、開放F値は少し明るめで普通の中望遠レンズとしても使い勝手はいい。とはいえ、等倍まで寄れるマクロもラインナップしてほしい。

まとめ

各社の交換レンズの平均質量を見ると、オリンパスが335g、ソニーEマウントが326g、ソニーFEマウントは646g、パナソニックは250g、富士フイルムは400gという数字(いずれもコンバーター類はのぞく)。フルサイズなのと、お高いレンズが多いぶん、ソニーFEが重いのは納得できるが、それを別にすれば、富士フイルムのレンズの重さは特筆ものだと思う。

重いレンズがいいレンズとはかぎらないが、性能重視でまじめにやれば重くなる傾向にはなる。平均価格もオリンパスが10万1,976円、ソニーEは8万9,563円、ソニーFEは17万2,217円、パナソニックは8万7,107円、富士フイルム11万5,091円と、やはり少し高めという結果。

だからなんだと思われるかもしれないが、こういう数字にも各社の特徴がそれなりにあらわれたりするので見ておいて悪いことはない。

また、富士フイルムはほかと比べて単焦点レンズの比率が高いので、そのあたりもレンズシステムを考えていくうえでは重要な部分。きちんと頭に入れておくと良いだろう。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。