フィルター活用術
今年の桜は「城」と一緒に撮ってみよう!
PLフィルターの微妙な調整テクニックも紹介
2017年3月24日 11:49
今年もあともう少しで桜の季節がやってくる。今の時期からどこで撮影しようかと迷っている方も多いのではないだろうか。
そんな時にお勧めなのが、城のある場所での桜撮影だ。日本各地には城が点在し、その周囲には桜の古木が数多く植えられている。桜と城を組み合わせると日本的な情緒が感じられ、自然の中で咲く桜とはひと味違った雰囲気で表現できる。さらに城郭には堀や石垣などもあり、1カ所でさまざまな表情を捉えることができるのも魅力の1つといえるだろう。
城郭での桜撮影をする時に、カメラやレンズと一緒に持って行きたいアクセサリーが「PLフィルター」と「NDフィルター」である。
これらのフィルターを使うことで、平凡と思われるような風景でも魅力的な写真に仕上げることができる。今回は福島県の会津若松市にある鶴ヶ城と青森県弘前市の弘前城で撮影した写真をもとに、フィルターの上手な使い方をご紹介しよう。
水面の反射を無くして桜を浮かび上がらせる
約1,000本の桜が咲く鶴ヶ城。やや高い場所から堀をバックに桜の一部分を切り取る。そのまま写すと変化のない写真になるが、PLフィルターを使うと堀の水面の反射が取れて桜が美しく浮かび上がった。
水面のさざ波も表現されて、さざ波の斜めのラインによって動きを感じる写真に仕上げることができた。
空をより青くして桜との対比を強調
今回使用したのはマルミ光機の「EXUSサーキュラーP.L」だ。PLフィルターには反射を取り除く効果と、被写体の色を強調する2つの効果がある。晴れて青空が広がっている時は、青空の濃度を濃くして桜の淡いピンク色を強調することができる。
スッキリと晴れ渡った青空のもとで桜と弘前城の天守閣を入れて撮影する。PLフィルターを装着していないと青空の濃度は薄いが、PLフィルターを効かせると青空の色が濃くなって桜がクッキリと表現された。同時に花の赤味も強調されて印象的な写真になっている。
NDフィルターで風に揺れるしだれ桜を表現
城内を歩いていると、濃いピンク色をしたしだれ桜が咲いている光景が目に飛び込んできた。望遠レンズを使い、趣のある塀を入れて作画する。ところがこの日は弱い風が吹いていて、しだれ桜特有の長い枝が絶え間なく揺れていた。
桜に限らず他の被写体を撮る時でも同じだが、僕は状況に合わせた撮り方を常に心がけている。風が吹いていれば風を利用し、雨が降っていれば濡れた風情を大切にして表現する。柔軟に対応することで表現の幅が広がり、変化のある写真を数多く捉えられる。
この場面では風が吹いていたので感度を上げて桜を止めて写すのではなく、風を利用して桜がブレている様子を撮ろうと試みた。ところが風は中途半端な強さで、最小絞りにしても桜がブレるような遅いシャッター速度が得られない。
そんな時に使いたいのが、レンズに入る光量を減らせるNDフィルター(減光フィルター)だ。光量が減ればシャッター速度も遅くなり、桜をブラして表現できる。この場面では風が吹いている時の桜の揺れ具合を観察し、2秒前後のシャッター速度が最適と判断して撮影した。
濃いピンク色をした鶴ヶ城のしだれ桜。未装着時のシャッター速度は1/4秒だが、光量を自由に調整できるマルミ光機の「CREATION VARI ND」を装着してシャッター速度を2秒に設定した。
このような撮影方法ではブレるものだけを写すのではなく、静止している被写体も取り入れて画面を構成するのがポイントになる。
画面内のすべてがブレていると何が写っているのか判別しにくく、見る人の視点も定まりにくい。ブレていない被写体を入れることで、静と動の対比が生まれてより強く動きが感じられる。当然のことながらスローシャッターでの撮影となるため、三脚とケーブルレリーズは必ず準備しておこう(人出の多い時は三脚の使用を控えるなど、他の人に迷惑をかけないよう配慮してください)。
PLフィルターは細かい調整が重要
これまでPLフィルターとNDフィルターの基本となる使用方法をご紹介してきたが、ここからは応用的な使い方についてご紹介しよう。
下に掲載した写真は、冒頭のカットと同じように鶴ヶ城の堀をバックに桜を捉えたものだ。フィルターを装着していない場合は、水面の反射が強すぎて桜の存在感が弱まっている。そこでPLフィルターを最大に効かせて撮影すると、水面の反射が取れて桜の色も鮮やかになった。しかし同時に、堀の濁った水がそのまま表現されて美しさや清涼感が感じられない写真になり、画面下部の桜の映り込みも消えてしまった。
水面の濁った印象を払拭するために、PLフィルターの効きを少し弱めて撮影したのが左下のカットだが、やはり水が濁っているような印象が拭えない。そのためさらにPLフィルターの効果を弱め、反射を多く残して作画したのが右下の写真だ。画面手前の水面には桜も映り込み、花の赤味も強調されて自分のイメージに近い仕上がりになった。
一見するとこれで完成と思えるかもしれないが、このシーンでポイントになるのが水面部分に浮かぶ花びらだ。特に画面左下のスペースに浮かぶ花びらを目立たせたいので、PLフィルターを再度操作して反射を取り除く部分を左側に移動させた。反射の残し具合やその位置をしっかりと意識して作画すると、次の作品のように主題がより明確になる。
瓦屋根をしっかり描写したいときもPLフィルターが活躍
晴れて青空が広がっている時に欠かせないPLフィルターだが、スパイス的な使い方も覚えておきたい。
この場面では薄曇りの空の色を濃くする目的ではなく、鶴ヶ城特有の赤い瓦の色を引き出すためにPLフィルターを使用した。赤瓦の色をクッキリと再現したことで城の姿が引き締まり、上部の桜との一体感も強まっている。
NDフィルターは人を消すこともできる
一方、NDフィルターは超スローシャッターを用いることで、人の姿を消して表現することが可能になる。このカットでは8秒というシャッター速度で写すことで、来場者の存在を消している。
通過する人の速さに合わせて減光量を調節し、即座にシャッター速度を変えられるのも「CREATION VARI ND」ならではの写し方といえるだろう。
堀に浮かぶ花びらも長時間露光で幻想的に
弘前城の堀に浮かぶ大量の桜の花びら。肉眼で見て花びらがゆっくりと動いていれば、NDフィルターを使って表現してみよう。
5秒で写したカットでは、肉眼では決して見ることのできない世界が表現できた。このシーンでも画面右下に静止しているタンポポを入れて、花びらの動感を強めている。
風景撮影でフィルターワークは欠かせない
文中でも簡単に触れたが、今回使用したフィルターについて改めて整理しよう。「EXUSサーキュラーP.L」と「CREATION VARI ND」はいずれもマルミ光機の高性能フィルターだ。
「EXUSサーキュラーP.L」には色再現性が高く透過率の高い偏光膜が採用されている。また、フィルターの表面にはホコリが付着しにくい帯電防止コーティングや撥水コーティングが施されていて使い勝手に非常に優れている。
「CREATION VARI ND」は可変式のNDフィルターで、PLフィルターのような二重構造になっている。前枠を回転させると濃度が変化して、思い通りの減光量にセットできるのが特徴だ(使用推奨範囲はND2.5~450相当)。
通常、一眼レフカメラなどでNDフィルターを使って写す場合は、予めフレーミングを決めてからフィルターを装着しなければならない。というのもNDフィルターを装着すると光学ファインダーは暗くなり、厳密なフレーミングがしにくくなるからだ。フレーミングを変えるたびにその作業が発生して煩わしい思いをすることになるが、「CREATION VARI ND」ならフレーミング時は最小の濃度にセットして、写す直前に任意の暗さに調整できるので着脱の手間がかからずしっかりとチャンスをものにできる。
今回掲載した写真から、PLフィルターとNDフィルターを使うとより印象的な作品に仕上げられることがおわかりいただけたのではないだろうか。まもなく訪れる春本番の季節に備え、フィルターもしっかりと揃えて桜撮影の準備を万全にしておきたい。
制作協力:マルミ光機株式会社