フィルター活用術
秋に桜を撮る!? 小原町の四季桜と紅葉を目指して
秋の風景写真をワンランクアップ!
2016年10月14日 15:00
当たり前の話で恐縮だが桜は春に咲き、木々が紅葉するのは秋になる。ところがそんな“常識”を覆すような風景が愛知県の山間部で見られるのをご存じだろうか。
豊田市小原町では秋になると四季桜と呼ばれる桜が咲き、色づいた周囲の紅葉と相まって不思議な光景が広がる。東海道新幹線に揺られて名古屋駅に到着後、車で小原町へと向かう。1時間ほど走るとお目当ての「川見四季桜の里」に到着した。
町内では「小原ふれあい公園」などでも四季桜が咲いているが、「川見四季桜の里」には約1,200本もの四季桜があり、満開になると何とも壮観な眺めとなる。
訪れた日は青空が広がり、秋の光が差し込む絶好の撮影日和。四季桜の開花もピークを迎え、すぐ脇のモミジの色づきも上々。このようなシーンを撮影する時に欠かせないのがPLフィルターである。
PLフィルターで四季桜を鮮やかに写し取る
山の斜面いっぱいに咲く四季桜の様子を望遠レンズで切り取る。
フィルターを付けずに撮影すると桜や紅葉は本来の色が表現されず、全体的にメリハリのない印象の写真になってしまう。
こんな時にはPLフィルターを使いたい。ファインダーを覗きながらゆっくりと回転枠を回すと、反射が撮れて鮮やかな色合いが現れた。
桜の淡いピンク色、モミジの赤色、斜面に生える草の緑色が鮮やかに再現されて、意図通りの写真になった。
PLフィルターは桜や紅葉などの色を引き出せるだけでなく、青空の色をより鮮やかにしたい時にも有効だ。PLフィルターを効かせて青空の色を強めると、澄んだ秋の空気感が表現できる。
続いては、桜と黄葉に青空を絡めて撮影。
PLフィルターを装着しないと桜や黄葉がくすんだような色合いになる。
一方、PLフィルターを効かせると反射が取れて画面全体が鮮やかになる。青空も濃くなって秋晴れの雰囲気が伝わる写真に仕上がった。
もう1つ、青空をバックにした作例をお見せしたい。PLフィルターを使うことで空の青がグッと濃くなり、桜や紅葉との対比が鮮明になった。
ここで、今回使用しているPLフィルターについてご紹介しよう。PLフィルターにはさまざまな製品があるが、できるだけ色再現性の高いものを選びたい。僕が使っているPLフィルターはマルミ光機の「EXUS」である。
EXUSのPLフィルターには従来品よりも透過率の高い偏光膜が採用されているため、光学ファインダーを覗いた時にも明るく感じられ、画面の隅々までしっかりと被写体を確認できる。
また、帯電防止コーティングによってフィルター表面にホコリが付着しにくく、撥水コーティングも施されているので雨の日などの使い勝手も抜群だ。
川の流れには可変NDフィルター!
しばらく撮影を続け、ひと息ついている時に付近を流れる小さな川に視線を落とすと、落ち葉が岩の上に張り付いている光景が目に留まった。
そのシーンを撮影しようとカメラを向けたものの、晴れていて光量が多いため1/50秒と低速シャッターが得られず、水の流れが中途半端に描写されて美しさが感じられない写真になってしまった。
水の流れの速さや規模、使用するレンズによっても異なるが、一般的に1/4秒以下のシャッター速度を選ぶと流れる水を絹糸のように美しく描写できる。しかし日中は光量が多いため、スローシャッターでの撮影が難しい。
そんな時に使用したいのがNDフィルターだ。減光フィルターとも呼ばれ、装着するとレンズに入る光の量が減り、シャッター速度を遅くする効果が得られる。
今回この場面で使用したのは、マルミ光機の「CREATION VARI ND」である。
聞き慣れない製品かもしれないが、これは可変タイプのNDフィルターで、PLフィルターのような二重構造をした外枠を回すと濃度が変化していく。可変の範囲はND2.5~500相当の範囲だが、使用推奨範囲はND2.5~450相当となっている。
CREATION VARI NDの回転枠を回すと濃度が変化して1/2秒のシャッター速度が得られ、水の流れを柔らかく描写できた。
このCREATION VARI NDが便利なのは、レンズに取り付けたままフレーミングができることだ。フレーミング時は明るい状態にして、そのまま回転枠を回せば任意の暗さに設定できる。
通常NDフィルターを使用する場合、光学ファインダーではかなり暗くなって見えづらくなるため、フレーミング後にNDフィルターを取り付ける。
フレーミングを変えるたびにその作業を繰り返さなければならないが、CREATION VARI NDを使えば取り外しや装着の手間がなくなる。さらに何枚ものNDフィルターを揃える必要がなく、電車やバスの移動などで撮影機材を少しでも減らしたいような時にも重宝する。
CREATION VARI NDを使えば、日中の渓流や滝などの流れを美しく表現することはもちろん、例えば紅葉の季節なら池や沼などに浮かんでいる落ち葉を長時間露光でブラしたり、風が吹いていれば紅葉した木々をブラして幻想的に表現することも可能だ。
アイデア次第でさまざまに使えるCREATION VARI NDは、目には見えない“写真ならではの世界”を表現できるフィルターなのである。なお、スローシャッターでの撮影となるため、三脚やケーブルレリーズは必ず持って出かけるようにしたい。
レンズの口径に合わせて「EXUS」や「CREATION VARI ND」を何枚も揃えるのは予算的に厳しい、という人はステップアップリングを使ってみてはいかがだろうか。
ステップアップリングは、フィルターをサイズの異なるレンズに取り付けられるようにするためのアクセサリーだ。手持ちのレンズの口径で一番大きなサイズのフィルターを1枚購入しておけば、ステップアップリングを使うことで口径の異なるレンズにも取り付けられる。
PLフィルターで柿と桜が青空に映える
川の落ち葉を撮影後、「川見四季桜の里」の周辺を再び散策する。しばらく歩くと、実をつけた柿の木が四季桜と紅葉の間から顔を覗かせていた。これぞまさに“競演”と呼ぶに相応しく、小原町ならではの風景といえるだろう。
道路脇から標準ズームを使って四季桜、紅葉、柿の木をバランス良くフレーミングする。秋の日差しが強く、そのまま撮影すると被写体の表面が光って思い通りの色が得られない。
そこでPLフィルターを装着して反射を取り除く。桜の花びらが浮かび上がり、紅葉と橙色の柿の実も色鮮やかになった。
前述したようにPLフィルターは青空の濃度を落とすこともできるので、雲を強調するような時にも使いたい。
そのまま撮ると雲はあまり目立たないが、PLフィルターを強めに効かせると白く浮かび上がって雲の存在感が強まった。画面全体の鮮やかさも増し、メリハリのある画面になっている。
次の作例も柿をメインにしたものだが、PLフィルターを使うことで柿が鮮やかに描写されたのに加えて、桜の花のボリューム感もアップした。
風景撮影にはフィルターワークが欠かせない
今回使用したEXUSとCREATION VARI NDはいずれも高い性能を持っていて、風景を撮影する時には欠かすことのできないフィルターといえる。
これらのフィルターを使うと、写真の完成度を高められることがおわかりいただけたのではないだろうか。この秋はこれらのフィルターを使って、ワンランク上の写真を目指したい。
制作協力:マルミ光機株式会社