気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

ライカM【第1回】

その進化、とまどいと可能性を感じて

 筆者にとって初めてのデジタルM型ライカである「ライカM9」を購入したのは2009年。以来、作品撮りのメインとして活躍してくれた。ローパスフィルターを持たない1,800万画素のCCDセンサーとライカレンズによる画質は満足度が高く、何よりフィルムのM型ライカをそのままデジタルにしたような使い心地が気に入っていた。

 それから約3年。巷では「そろそろライカM10が出るのでは?」とウワサされ始めた。筆者も次期モデルがどんなカメラになるのか気になる。そして2012年のフォトキナ。その開催前日に行なわれたライカカメラ社ブースでのイベントで、ついに姿を現した。それがライカM10、ではなく「ライカM」だ。

LEICA SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH.を装着したライカM

 筆者自身、会場でイベントの様子を見ていたが、最初の印象は「やっぱりな」という気持ちと、「こうなっちゃったか」という少々残念な気持ちが入り混じった複雑なものだった。これまでM型ライカはシンプルな機能で、レンジファインダーにこだわった撮影スタイルを受け継いでいるのが魅力だった。それはデジタルになっても同じで、筆者がライカM9を気に入っている理由のひとつだった。

 ところがライカMは、撮像素子がCMOSセンサーになり、ついにライブビューと動画機能が入ってしまった。筆者も完成度の高いライカM9の次期モデルは、CMOSになってライブビューや動画ができるかも、と予想していたので「やっぱり」だった。しかもEVFが装着できたり、別売の「マルチファンクションハンドグリップM」の使用で、GPS測位やパソコンと接続したテザー撮影もできるようになるらしい。だが多機能になったM型ライカは、これまで培ってきたM型ライカの伝統が薄れてしまった気がした。外観もLeicaの赤丸バッジが大きくなり、正面にデカデカと「M」と入っているのは、正直言ってカッコいいと思えない。それで「こうなっちゃったか」だったのである。

 第一印象はいまひとつだったライカM。だがフォトキナ取材でライカMを触っていると、だんだんその印象が変わってきた。握りやすいサムグリップや見やすくなった液晶モニターは、明らかに進化が感じられる。しかもシャッター音は静かで連写速度も速くなり、リズミカルに撮影できそうだ。LED式になったブライトフレームも視認性が良く、スッキリしたファインダーと見やすい距離計にはやはりライカを感じる。大きくなったライカバッジや「M」のロゴもだんだん気にならなくなってきた。

 そして同時にラインナップされた「ライカRアダプターM」を装着すれば、一眼レフのライカR用レンズが使用できる。筆者はライカRシステムも所有しているので、これは嬉しい。ライカMレンズとライカRレンズを組み合わせれば、作品だけでなく依頼仕事でも対応できそうだ。多機能になりながらも、ライカらしい伝統もしっかり受け継がれているのを感じた。

 どうやらライカMは筆者の撮影スタイルに合っていそうだ。フォトキナが終わる頃にはすっかりライカMに魅了されてしまい、帰国後に予約してしまった。

 予約したのは、ライカMボディ(ブラックペイント)、電子ビューファインダーの「ライカEVF 2」、GPS機能などを持たないシンプルな「ハンドグリップM」 、予備バッテリー、ライカRアダプターMだ。そのうち、まず手に入ったのはライカMボディとEVF 2。また、本稿執筆中の4月中旬現在、ハンドグリップMはマルチファンクションハンドグリップMに変更しようか検討中だ。

外箱はライカM9をはじめ、ライカのレギュラーモデルと同じシルバーを基本としたデザイン。

 待ちに待ったライカM。届いたとの連絡を受けて早速ライカ直営店に行くと、そこにあるのは大きな箱。この元箱が驚きなのだ。天面部を上げると、なんと外箱が四方にパタパタと開き、内箱が現れる。ちなみにライカM9の元箱は上から開けて中身を取り出す、ごく普通の方式だ。このパタパタと外箱が開くのは、同じくフォトキナで発表された限定モデルの「ライカX2 ポール・スミスエディション」も同じとか。

上ブタを開けると外箱が四方に開く。まるで花が咲くようだ。ダークグレーの内箱が現れる。内箱にもしっかりLeicaのロゴが入っている。

 内箱は上ブタを開けると、さらに箱が現れる。そしてその箱を開けると、ようやくライカMボディとご対面できるのだ。この上ブタは、閉じるとマグネットで固定される凝りよう。

内箱の上側のフタを開けると、また箱が出てくる。マトリョーシカ状態だ。この箱は、ライカM9と同じデザイン。
箱を開けると、ライカMのボディが出てくる。なお実際は、ライカMはビニール袋に入っている。

 さらに同じくマグネットで固定された正面のフタを開くと、今度は引き出しが2つ現れる。上段の引き出しには、取扱説明書や保証書、Adobe Photoshop Lightroomのダウンロードに関する説明書など、各書類が入っている。

内箱の下半分のフタを開くと、2つの引き出しが現れる。実に凝った造りだ。
上段の引き出しには、製品の点検証明書、取扱説明書、Adobe Photoshop Lightroomのダウンロードに関する説明書、保証書が入っている。

 下段の引き出しには、ストラップとLeicaのロゴが入ったポーチが3つ。各ポーチの中には、バッテリー、バッテリーチャージャー、チャージャー用ケーブル、カーアダプターなどが入っている。

下段の引き出しの中には、Leicaロゴ入りポーチが3つとストラップが入っている。
ポーチの中には、バッテリー、バッテリーチャージャー、チャージャー用電源ケーブル、カーアダプターが入っている。ポーチ自体もライカファンには嬉しい存在。予備バッテリーを入れたり、お気に入りの小物の収納にも便利そうだ。
電源ケーブルは、日本やアメリカ用のAタイプと、ヨーロッパで主に使われているCタイプの2種類が入っている。Cタイプなら、ヨーロッパを訪れたときに、ホテルのコンセントに直接差し込める。
カーアダプターは、車のシガーライターソケットからバッテリーをチャージすることができる。ただし取扱説明書には、なぜかカーアダプターに関する説明が記載されていない。日本のカメラメーカーとの違いを感じる。

 どちらかといえばシンプルな造りだったライカM9の元箱と比べ、ライカMの元箱はとても凝っていて、こだわりが感じられる。そこで思い出したのが、iPhoneやMacでお馴染みのアップルだ。アップル製品を購入したことがある人ならわかるだろうが、元箱のセンスの良さはピカイチ。非常に美しく収納されている。またそこから製品を取り出すときには、製品を手に入れた満足感に浸れる。ライカMの元箱も、それに近いものを感じた。ライカMボディを取り出し、引き出しから使用するアクセサリーを選んでいると、ライカMを手に入れた喜びが強く感じられた。

 カメラ本体をはじめ、必要なものを出してしまうと、元箱を開ける機会はほとんどないかもしれない。しかし、だからといって製品がちゃんと入っていればいい、ではテンションが下がる。しかもそれがライカならなおさらだ。高価なライカを手に入れて、元箱がショボかったらガッカリだ。こだわりを持った人たちが手にすることが多いライカ。ライカMの元箱もそれにふさわしい造りなのが嬉しい。まだ撮影する前から、ライカMへの愛着が沸いてきたのだった。

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
  • ・作例はRAW+JPEGのJPEGを掲載しています。
  • ・撮影データには実際にレンズで設定した絞り値を記載しています。

LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約9.9MB / 5,952×3,968 / 1/500秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約8.8MB / 3,968×5,952 / 1/500秒 / F2.8 / 0EV / ISO200
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約11MB / 3,968×5,952 / 1/180秒 / F4 / 0EV / ISO200
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約7.4MB / 3,968×5,952 / 1/1,500秒 / F2 / +0.3EV / ISO200
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約12.2MB / 5,952×3,968 / 1/180秒 / F8 / 0EV / ISO200
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約9.3MB / 5,952×3,968 / 1/250秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約4.5MB / 5,952×3,968 / 1/125秒 / F8 / -1EV / ISO1600
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約10.1MB / 5,952×3,968 / 1/1,500秒 / F11 / 0EV / ISO200

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。