気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

ライカM【第2回】

気になる高感度画質は?

 ライカMの撮像素子は、ご存知の通りM型ライカでは初めてCMOSを採用している。ベルギー、CMOSIS社の2,400万画素フルサイズセンサーだ。そして画像処理エンジンは、ライカSシリーズと同じ「ライカ マエストロ」を搭載している。ライカM9シリーズと比べ、画素数は増えながら連写は2コマ/秒から3コマ/秒にアップ。キビキビした撮影が可能だ。

SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH.とEVF 2を装着したライカM。

 さて、気になるのは、新型CMOSセンサーによる画質だ。ベース感度ISO200は、すでに「新製品レビュー」や「長期レポート第1回」でお伝えした通り。解像力や階調再現は申し分ない。それでは高感度はどうだろうか。新製品レビューでもサンプルは掲載したが、ここではあえて高感度だけで撮影した写真を載せてみた。

 使用したのはISO800、ISO1600、ISO3200。筆者はこれまでM9を使ってきて、ベース感度のISO160を中心に、暗い場合はISO400、さらに暗い場合はISO800まで上げていた。M9はISO2500まであるが、筆者自身はISO800までが実用的と判断していた。しかしISO800まで上げられれば、意外と不満はない。

ライカMの通常感度の最高はISO3200。
(参考)ライカM9のISO感度設定表示。ライカM9の最高感度はISO2500。
背面のISOボタンだけでなく、SETボタンからISO感度設定にアクセスすることもできる。

 それは筆者が所有しているライカMレンズは、F1.4やF2、F2.8などの明るさなので、かなり暗い場所でも速いシャッターが切れるためだ。また筆者はフィルムのライカではISO400のフィルムを常用していたため、デジタルになってもほぼ同じ感覚で撮影できるというのもその理由だ。とはいえ、高感度に強いのに越したことはない。Mを手にして、高感度の画質は気になることのひとつだった。

 実際にMの高感度を試したところ、M9より画質が向上しているのを感じた。ISO800は常用域といえるし、ISO1600も実用的だ。通常感度の最高であるISO3200でも、よほど拡大しなければ使用できる。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・ライカM

ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200

・ライカM9

ISO400
ISO800
ISO1600
ISO2500

 ただし等倍で見て、ノイズが感じられるのはISO1600から。それでも無理にノイズ除去をしていないせいか、被写体のディテールがしっかり残っている。ノイズ自体も拡大しないと目立たず、そのため不自然に感じないのだ。もし気になるようならRAWで撮影し、LightroomやAdobe Camera Rawでノイズ軽減を行なうとほぼ気にならなくなる。

MのRAWデータをAdobe Camera Rawでストレート現像。
MのRAWデータをAdobe Camera Rawでノイズ軽減をして現像。

 Mは他のデジタルM型ライカと同様、手ブレ補正機構を持たない。しかも画素数がM9シリーズの1,800万画素から2,400万画素になり、わずかなブレも目立ちやすい。高感度に強くなると、積極的にISO感度を上げて手ブレを防止できるのだ。暗い場所に有利なのはもちろん、明るい場所でも絞り込んで、被写界深度を深くしたい場合にも有効だ。なおM9もISO1600は健闘している。しかしシャドー部のノイズはMの方が少ないようだ。

 Mは高感度に強くなった、とはいっても、日本メーカーのデジタルカメラにはもっと高感度の強い機種がある。ただフィルムのM型ライカの伝統を受け継ぐ性格からすると、これで十分満足できると感じた。ライカMの画質は、やはり進化しているのだ。

・ISO800の作例

LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.8MB / 5,952×3,968 / 1/1,500秒 / F2 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約6.1MB / 5,952×3,968 / 1/4,000秒 / F1.4 / -0.7EV / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.6MB / 5,952×3,968 / 1/500秒 / F1.4 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.9MB / 5,952×3,968 / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.8MB / 3,968×5,952 / 1/60秒 / F1.4 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.8MB / 5,952×3,968 / 1/90秒 / F1.4 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm

・ISO1600の作例

LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5MB / 5,952×3,968 / 1/4,000秒 / F11 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約6MB / 5,952×3,968 / 1/180秒 / F8 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約6.7MB / 5,952×3,968 / 1/180秒 / F16 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.9MB / 5,952×3,968 / 1/60秒 / F8 / -1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.7MB / 3,968×5,952 / 1/180秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.4MB / 5,952×3,968 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 50mm

・ISO3200の作例

LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.4MB / 5,952×3,968 / 1/3,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO3200 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約8.4MB / 5,952×3,968 / 1/125秒 / F11 / 0EV / ISO3200 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約6MB / 3,968×5,952 / 1/360秒 / F4 / 0EV / ISO3200 / 絞り優先AE / 50mm
LEICA M (Typ 240) / SUMMILUX-M f1.4/50mm ASPH. / 約5.9MB / 3,968×5,952 / 1/90秒 / F4 / 0EV / ISO3200 / 絞り優先AE / 50mm

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。