Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真

雪中の撮影でもびくともしないタフネス設計

林明輝さんが語る「LA-324CL+LH-40R」

倒木更新の一本木の先に雲海が広がる。雪上へ三脚を設置して、長時間露光をおこなう。LAシリーズでないと安心して撮影に臨むことができないロケーションだ
LeicaSL2/LeicaVario-Elmarit-SL24-90mmf/2.8-4ASPH./37mm/絞り優先AE(F16、20秒、-2.0EV)/ISO100/WB:昼光

数ある撮影用品の中でも、三脚・雲台ほど親しまれたアイテムはないでしょう。しかし近年のデジタルカメラの進歩により、その存在感が薄れているのも確か。優秀な手ぶれ補正機構や高感度画質の向上により、三脚・雲台を使わなくなった方もいるかもしれません。

とはいえ三脚・雲台は、失敗が許されないプロの現場において、いまだ欠かせない撮影用品であり続けています。

この連載ではプロの写真家に、使用しているレオフォトブランドの三脚・雲台について綴っていいただきます。

今回寄稿いただいた写真家は林明輝さんです。

林明輝

日本の絶景を写真の力で世に問うことをモットーとし「新しい風景」を発表していく風景写真家&ドローンパイロット。写真集『DesignScape』で写真の町・東川賞ファイナリストに。写真教室輝望フォトグラファーズは20年目。レオフォトLS-284CLinやKaniフィルター風景写真セット林明輝モデルをプロデュース

※本企画はデジタルカメラマガジン2022年2月号より転載・加筆したものです。


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冷たい雨が絶え間なく降り続いていた。やがて未明になって雨は雪に変わり、車中はやっと眠ることができる静けさに包まれる。だが、早朝に訪れる束の間の晴天を予測してスタンバイしているので寝付くことができない。目をつむり、翌朝に展開されるであろう光景を想像する。

ベールのように背景を覆い隠す雲海を望遠側で切り取る。2本の三脚を持っていける重さなので、短いチャンスでさまざまなアプローチにトライできる
Leica SL2 / Leica APO-Vario-Elmarit-SL 90-280mm f/2.8-4/90mm / 絞り優先AE(F22、15秒、-2.0EV) / ISO 100 / WB:昼光

寒気の影響で北風が生み出す流れ雲、画面の左から右下方向に流れる雲を長時間露光で捉えたい。この山を初めて訪れたときに目に留まった倒木更新(倒木の上に若木が育つ状態)の一本木を象徴的に配置して、風景をデザインする。

迎えた翌朝、この木に対峙するため、数十mほど斜面を降りる。雪の吹きだまりは、表面からでは深さが分からない。そのため、2本の三脚を杖代わりにして斜面を降りていくのだ。

気が付くと三脚の下半分は雪と水と、林床の泥にまみれていた。だが、LA-324CLは防塵・防水仕様であり、まったく不安を感じない。むしろ、過酷に使ってくれてありがとうと三脚が語っているようだ。

このLA-324CLは私がプロデュースした三脚で、以前プロデュースしたLS-284CLinと同様、LA-324Cのロングモデルとなる。全高が42.5ほどcm長く、三脚が深く沈みこんでしまう降雪後の不安定な林床でも、抜群の安定感とアイレベルを確保することができる。しかも、ジョイント部分が高度な防水仕様なので、不安定な傾斜の雪原や泥地に設置しても、安定かつ迅速な撮影が可能だ。

LA-324CL
価格:8万300円(税込)/伸長:1,725mm/収納高:600mm/最低高:85mm/段数:4段/最大脚径:32mm/耐荷重:15kg/質量:1,625g
LH-40R
価格:41,800円(税込)/高さ:90mm/ベース径:57mm/耐荷重:20kg/質量:540g

長時間露光の撮影時は三脚は2本以上で臨む。なぜなら、霧の形や光が刻々と変化する中で、カメラ1台では、数十秒に一度しかシャッターを切れないからだ。三脚が2本あれば、レンズや構図を変えながら交互にシャッターを切れるので少ないシャッターチャンスをものにできる。LA-324CLのパイプはカーボン製なので、2本を携えても重さがネックにならない点もポイントだ。

この日は、雲を流すためにND32の装着に加え、明暗差を抑えるために最大ND8の効果を得られるハーフNDフィルターをセットして撮影した。ハーフNDの境界が分からない自然な仕上がりを心掛けるには、念入りなフィルター位置の調整が重要だが、それも三脚の安定性が確保されなければなし得ない。

風景をデザインするスタンス「DesignScape」を具現化するために、雪や雨、渓流や海辺など、ロケーションを選ばず瞬時に対応できるLA-324CLの安定感はハイアマチュアの必需品と言えよう

雲海に朝日が当たり始めると、雲はまた異なる表情を描き出す。質量を感じる厚みのある雲とその下に降り注ぐ光芒を迅速な構図変更によって切り取った1枚
Leica SL2 / Leica Vario-Elmarit-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH. / 90mm / 絞り優先AE(F22、1/2秒、-2.0EV) / ISO 100 / WB:昼光


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深紅が目を引く防水三脚にロングモデルが登場

ワインレッド調の深みのある赤が目を引くLA(アテナ)シリーズ。カラーリングが異なるだけでなく、防塵・防水性が大きく向上している。

従来モデルは海水や泥水がパイプ内に入った場合、脚を分解し、清掃して乾かしていた。このモデルは各所にシーリングが施されているので、脚を伸ばして流水するだけでメンテナンス可能だ。

LA-324CLは、LA-324Cより42.5cmほど全長を伸ばした特別なモデル。雪中や海辺で三脚を設置すると雪や砂にもぐり込む分、アイレベルの確保に必要な高さが増すが、このモデルなら安心だ。それでいて、収納高は600mmと飛行機の機内持ち込みサイズに抑えた。全天候型で条件を選ばない風景写真向け三脚といえる。

とにかく水に強い脚部

脚部は浸水防止機構が採用されていて、水中や雪中に三脚を設置するようなロケーションでも安心して使用可能だ。腐食に強いチタンパーツなどが使われている。

目立つだけではない“赤い塗装”

赤い塗装は、寒中撮影のモチベーションを上げてくれるだけでなく、傷や摩耗への耐性も高められている。また、ロックナットはぬれていても回しやすい設計が採用されている。

制作協力:株式会社ワイドトレード

林明輝