交換レンズレビュー
LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.
絞り開放から良好な描写 800mm相当で気軽に手持ち撮影が楽しめる
Reported by 北村智史(2016/5/6 07:00)
この3月に発売されたばかりのLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.は、35mmフルサイズに換算して200-800mmに相当する。
マイクロフォーサーズ用の超望遠ズームとしては、パナソニックLUMIX G VARIO 100-300mm / F4.0-5.6 / MEGA O.I.S.とオリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIの2本が発売されているが、それらよりも焦点距離をさらに100mm伸ばしている。それでいながら、最大径83×長さ171.5mm、重さ985g(外付け三脚座は含まず)という携帯性、機動性の高さが持ち味となっている。
希望小売価格は税込24万8,400円で、レンズポーチと着脱式の外付け三脚座が付属している。大手量販店の店頭価格は税込みで20万円をわずかながら切る。スライド式のレンズフードを内蔵しているが、あまり効果は期待できそうにない短さなので、別売のレンズフードDMW-H100400(実勢価格は税込8,640円前後)を同時に購入することをおすすめしたい。
デザインと操作性
すっきりしたデザインの鏡胴は外装に金属を多用し、高級感、重厚感がある。防塵・防滴処理がほどこされており、不意の雨などにも強いのはありがたい。
ズームリングの動きはとても渋い。防塵・防滴処理の影響もあるかもしれない。
電子式のフォーカスリングはほどほどの重さがあり、こちらは気持ちよく操作できた。MF時の回転角はとても大きく、望遠端では無限遠から最短距離まで素早くまわして1周と1/3回転ほどだった。ゆっくりまわすとピントの移動するスピードも遅くなるタイプで、正確なピント合わせがやりやすい。ただし、近距離では被写界深度が非常に浅く、またブレやすくもなるため、相応に神経を使う作業となる。
公称の最短撮影距離は1.3mだが、広角端ではそれよりもかなり寄れる。ざっとではかってみたところ、撮像面マークからピント位置まで約0.65mだった。ちなみに、望遠端は約1.25mだった。最大撮影倍率は望遠端で公称0.25倍(実測では約0.27倍だった)。これは35mmフルサイズに換算すると0.5に相当する数字で、フィルム時代であれば、マクロレンズとして通用しそうだ。
訂正:最短撮影距離を約0.65mと記述していますが、これは本記事のために試用した発売前の貸出機のみの性能となります。記事公開後に判明したところ、発売後の市販品の最短距離は、公表の仕様通り1.3mでした。お詫びして訂正いたします。
取り外しのできない三脚座は90度だけ回転する仕様で、縦位置撮影時はグリップが上になる。バッテリーグリップ付きのLUMIX GH4などにはいいが、GX8のようないわゆるレンジファインダースタイルのカメラの場合、ファインダー接眼部の位置が下側になってしまう。のぞけなくて困るわけではないが、気持ちとしては接眼部を上側にしたい。できれば、三脚座を反対方向にもまわせるようにしておいてほしかった。
三脚座の回転角に制限があるのは、三脚座側にフォーカススイッチ(フォーカスリミッター)、AF・MFスイッチ、O.I.S.スイッチがあるからだ。通例、これらのスイッチ類は鏡胴側にあるため、縦位置にすると操作しづらくなる場合がある。
このDG 100-400mmは、スイッチ類が三脚座側にあるため、縦位置にしても操作部が隠れたり、指が届きにくくなったりすることがない。使い勝手的にはとてもありがたいことなのだが、その代わりに三脚座の回転角が制限されてしまっているというわけだ。
三脚座の雲台に接する面は小さく、また高さもないため、それをおぎなえる延長型の三脚座が付属している。これを装着すると、超望遠レンズらしい精悍なスタイルになる。背が高くなる分、縦位置撮影時やバッテリーグリップ装着時に、カメラが雲台に干渉することを避けられる。
個人的には三脚座の先端部分を左手に乗せるようにしてかまえるのが好みで、付属の三脚座はその要にぴったりなのだが、先端部の角がとがっていて、乗せた手のひらに食い込んでくる。これが非常に痛い。この部分は早急に改善されるべきだと思う。
手ブレ補正は、従来型のMEGA O.I.S.よりも効果の高いPOWER O.I.S.を搭載する。ボディ内手ブレ補正機構を持つLUMIX GX8との組み合わせでは、両方を併用するDUAL O.I.S.が利用できる。
その効果は絶大で、筆者の腕前ではゆっくりした揺れを抑えるところまではむずかしいが、超望遠レンズでの撮影に慣れたユーザーなら、ピンポイントでぴたりと止められるのではないかと思う。なにしろ、望遠端の手持ちでも画面を拡大してピントの確認ができるレベルの安定感なのだ。800mm相当とは思えない気楽さで手持ち撮影が楽しめるのだから素晴らしい。
ためしに、望遠端で1/50秒(「1/焦点距離」のシャッタースピードから4段遅い)、撮影距離約3m、立った状態での手持ち、という条件で、1コマずつ全押しして50枚撮って、それをピクセル等倍でチェックしたところ、「まあ、これならOKといってよさそう」と思えるカットが20枚だった。超望遠に慣れていない人間が、いきなり800mm相当の画角をかまえて成功率40%なら悪くないと思う。
遠景の描写は?
レンズ構成は13群20枚で、EDガラス非球面レンズが1枚、EDガラスレンズが2枚、蛍石に近い特性を持つUED(ウルトラED)ガラスレンズが1枚採用されている。
開放F値を欲張っていないこともあって、実写での画質は良好だ。大気の揺らぎの影響でややわかりづらいが、広角端は、画面中心部、周辺部ともに、絞り開放からF5.6付近がもっともシャープな描写となる。F11からは回折の影響が強くなってくるので、解像感を重視するのであれば、絞ってもF8までにしたい。
望遠端は、絞り開放ではわずかにアマい印象で、ピクセル等倍で見ると、コントラストの高いエッジ部分にハロが出ているのが確認できる。中心部、周辺部ともに、F11まで絞ったカットがもっともシャープだった。
周辺光量の低下はあまり大きくなく、「シェーディング補正」をオフにした状態でもそれほど目立たない。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
最短撮影距離は前述のとおり、広角端で約0.65m、望遠端で約1.25m(いずれもおおざっぱな実測値)。最大撮影倍率は望遠端では35mmフルサイズ換算で0.5倍相当となる。ブレの問題もあるので使いこなしは容易ではないが、小動物や昆虫を撮りたい人にとっては、かなり魅力的なスペックといえる。
ボケ味は、ズーム全域で非常に良好だ。広角端から望遠端まで、遠距離から至近距離まで、前ボケも後ボケもスムーズで気持ちがよい。神経質なところがなく、あつかいやすい印象だ。
作品
望遠端の絞り開放。これぐらいの撮影距離だと背景はあまり大きくボケてくれない。いかにも動物園で撮りました的な画になるのを好まないなら、背景の処理に困る場合もあるかもしれない。
やや逆光気味の条件だが、フレアっぽさはまったくなく、ヌケのよいクリアな画面に仕上がってくれた。シャープさも申し分ない。
特に意味があってここまで寄ったわけではないが、気軽にアップがねらえるのは楽しい。それと、DUAL O.I.S.の効果のすごさも見逃せない。被写体が動かずにいてくれれば、望遠端でも1/125秒で十分ねらえる。
補正なしの状態を確認できる現像ソフトでRAW画像を見ると、広角端、望遠端ともに弱いイトマキ型の歪曲収差がある。が、自動的に補正されるので、通常はまったく気にする必要はない。
被写界深度が深いマイクロフォーサーズでは、金網をぼかしきれないことが少なくないが、400mm相当ぐらいの画角になると気になりにくくなる。動物園を楽しむにはうってつけのレンズだ。
アップをねらっていたら、大あくびをしてくれた。軽快で手ブレ補正の効果も高いので、チャンスを待つのがあまり苦にならないのはありがたい点だ。
帰りがけに公園で巨大シャボン玉を作っているお兄さんがいたので、後ろ姿をぱちり。超望遠でのスナップ撮影というのも楽しい。
まとめ
ほんのちょっぴりとはいえ1kgを切る軽快さで、800mm相当の超望遠撮影が楽しめるというのは、まさにマイクロフォーサーズならでは。超望遠入門用レンズとしてのおすすめ度はかなり高い。
ライカと名乗るだけに、写りの面での不満はない。実売価格も、お手ごろとはいえないまでも、800mm相当の超望遠域までカバーすることを考えれば納得できる。手に入れる価値のある1本だ。