インタビュー

パナソニック「LUMIX G9 PRO」(前編)

静止画のために磨き上げられた機能とデザイン

パナソニックが1月25日に発売したマイクロフォーサーズ機「LUMIX G9」(DC-G9)の開発者インタビューをお届けする。日本市場ではプロ向けに"G9 PRO"として展開する狙いなどについて聞いた。(編集部)

パナソニック株式会社アプライアンス社の面々。前列左からAP社直轄デザインセンター パーソナルデザイン部 PA3課 主任意匠技師の佐々木厚氏(デザイン)、商品設計部 商品設計三課 主任技師の堀江悟史氏(開発リーダー)、商品企画部 第一商品企画課 主務の角和憲氏(商品企画)、外装設計部 外装設計二課 係長の玉置亮輔氏(外装設計)、後列左から商品企画部 第一商品企画課 主務の渡邊慎治氏(レンズ企画)、ソフト設計部 ソフト設計六課 課長の澁野剛治氏(AF)、商品設計部 商品設計二課 主任技師の岡本晃宏氏(画質設計)、ソフト設計部 ソフト設計六課 係長の櫻井幹夫氏(手ブレ補正)

商品コンセプトについて。フラッグシップ「GH5」との違いは?

——まずは今回のG9 PROの開発コンセプトから教えてください。

角:当社LUMIXのフラグシップ機には「LUMIX GH5」がございますが、GHシリーズは静止画と動画のハイブリッド機として展開させていただいているものの、GH4、GH5とカメラが進化するに従ってどうしても動画機能に重点を置いたものになってきました。そのような状況において、やはりカメラとしては静止画に重点を置いた柱となるものを作りたいという考えから、今回のG9 PROを企画しました。

G9 PROは静止画のフラグシップ機として、風景やポートレート撮影などはもちろん、マイクロフォーサーズの特徴でもある交換レンズを含めたシステムでの小型軽量を活かせるフィールド撮影、具体的には野鳥や動物など、撮影者が動き回って撮影するような撮影シーンにおいて特に有効にご活用いただけると考えています。また、野鳥や動物をはじめ鉄道、航空機、スポーツシーンなどの動く被写体に対しても対応可能な「一瞬を逃さないカメラ」というコンセプトのもとに開発を進めました。

商品企画担当の角和憲氏

——G9 PROの「PRO」をつけているのは日本国内のみだそうですが、これはどうしてですか?

角:製品の品番としましては「DC-G9」で全世界共通なのですが、G9の「9」は一桁の最大数ということで、Gシリーズの最高峰という意味づけをしております。それに加えて国内では「PRO」の名称を冠することで、プロ写真家の使用に耐えるカメラであるということをよりわかりやすく訴求させていただいています。海外ではヨーロッパや米国など地域ごとにマーケティング戦略が異なりますので、「PRO」の名称は特に使用していません。

2017年11月16日の発表会レポートより

——先行して発売されているGH5とのコンセプトや、主な機能の違いは?

角:GH5は「静止画と動画のハイブリッド」というのに対して、G9 PROは「静止画」に注力しているというコンセプトの違いがあります。

機能的にGH5と異なる点としては、まず画質面が挙げられます。イメージセンサーと画像処理エンジンはGH5と同じものを使っていますが、G9 PROではLUMIXの絵作り思想を定義するとともに、その思想に基づいて絵作りを進化させています。

次に、ファインダーの性能が異なります。約368万ドットの有機ELパネルはGH5と同じですが、ファインダー倍率を0.83倍に大型化しています。動画撮影の場合は背面液晶モニターを見ながら撮影されるお客様が多いのですが、静止画の場合はファインダーを中心に使って撮影されるお客様が多いということで、特に拘りました。また、単純にファインダー倍率を0.83倍に大きくしているというだけでなく、ファインダーの右上に新設したV.MODEボタンを押していただくことで、ファインダー倍率を0.83倍、0.77倍、0.7倍の3段階で切り替え可能にしています。あとは、表示フレームレートは120fpsに対応し、表示タイムラグを約0.005秒に短縮している点も、ファインダー性能へのこだわりを示す特徴になっています。

ファインダー部のV.MODEボタン。

撮影機能面では、まずボディ内手ブレ補正機能が進化しています。GH5ではCIPA基準でシャッタースピード5.0段分の補正効果があったのですが、G9 PROでは6.5段まで補正可能にしています。また連写機能では、電子シャッターでの撮影になりますが、ピント固定のAF-Sモードで60コマ/秒、被写体追従のAF-Cモードで20コマ/秒という高速連写を実現しました。

そしてデザインおよび操作性の部分ですが、まずグリップ部分をより深くしっかりと握れるものにしていますので、超望遠ズームの100-400mm(LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.)ですとか、同時発表の200mm F2.8(LEICA DG ELMARIT 200mm / F2.8 / POWER O.I.S.)といった大きめのレンズと組み合わせた場合でも優れたホールド感が得られるようにしています。また、ファインダーを覗きながら右手だけで操作できる点に拘りつつ、シャッターフィーリングといった部分も拘って作り込んでいます。

LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.を装着

——やはり動画用途がメインの場合はGH5のほうが向いているのですか?

角:静止画に注力しているとはいえ、G9 PROも4K・60p画質で10分まで撮影可能ですので、動画撮影も十分高機能です。ただ、お仕事で動画撮影をされる場合など、それ以上の性能をお求めの場合はGH5や、つい先日発表しましたGH5Sのほうが適しているかと思います。

——日本市場では、静止画主体のユーザーは動画をあまり撮影しないということですが、静止画主体のユーザーにはG9 PROのほうをお勧めするということでよろしいでしょうか?

角:そうですね。G9 PROは静止画機能に注力したモデルに仕上げていますので、主に静止画のお客様にお使いいただきたいですね。

——Gシリーズの位置付けは、初代「LUMIX G1」の頃は女性のエントリーユーザーがターゲットでしたが、カメラのクラスとしては今の感覚で初級と中級の間くらいだったでしょうか。その後GHシリーズは機能の向上とともにクラスが上がる一方、Gシリーズはエントリー色を強調する時代がありました。その後G7、G8でややクラス的にはやや上がり、そして今回のG9 PROは位置付けがハイエンドのプロ機になったということですが、なぜこのようにモデルごとにコンセプトが変遷してきたのでしょうか?

LUMIX G1(2008年10月発売)

角:Gシリーズの当初からの開発コンセプトは、ハイアマチュアからエントリーユーザーをターゲットとして、小型軽量とタッチAFなどの革新的な操作性をテーマにしながら、AF性能や画質という基本性能をしっかりと押さえたカメラを作るというもので、これをシリーズ共通の開発コンセプトとして進化させてきました。

ただ、おっしゃるようにシリーズの途中でマーケティングの訴求上、ターゲットユーザーをややエントリーに振った時期もありました。しかしカメラ自体の機能や性能に関しては一貫してハイアマチュアのお客様にも十分お使いいただけるレベルのものを搭載してまいりました。その延長上にG7やG8があり、今回のG9 PROではそれをさらに大きく進化させたことにより、ようやく念願のプロ写真家にも使っていただけるレベルに達したかなということで、「PRO」の名称をつけさせていただきました。

——プロユーザーがターゲットというなら新シリーズを立ち上げるなどの手法もあったと思いますが、あえてエントリーのイメージが残るGシリーズで「PRO」とした理由は?

角:正直、開発段階では「新シリーズを立ち上げてはどうか?」という意見もありました。しかし、世界初のミラーレス機であるG1の発売から今年で10年ということもあり、これまで積み上げてきた技術の集大成という意味合いを込めたモデルとしたいという思いがありました。また、「これからの10年はこのG9 PROを起点としたい」という思いもありましたので、Gシリーズでいくことにしました。

——従来は新しいモデルが出ると数字が上がってきたわけですが、最近はGX7など、同じ型番の「Mark II」モデルが出てきています。G9 PROも同様に同じ型番を大事に使う方向になるのでしょうか?

角:そう考えていただいて結構です。

——そうしますとG9 PROが、今後Gシリーズのフラッグシップ機を意味するブランドになるのですか?

角:そうですね。Gシリーズの集大成を意味するモデルとなります。

——ところで、フォーマット的にも他社ではプロ機のセンサーサイズは年々大型化しており、現在では35mmフルサイズが主戦場であり、次世代では中判をも睨む展開になってきていると思います。このようなフォーマットの大型化の時代にあえて、マイクロフォーサーズフォーマットでプロ機市場に打って出る理由を教えてください。

角:マイクロフォーサーズシステムは、交換レンズを含めたシステムで小型軽量が達成できるという点で十分メリットがあると考えています。例えば先ほどから申し上げている100-400mmや200mmなど、ボディも含めまして全体の大きさはマイクロフォーサーズだから実現できたサイズ感だと思いますし、プロの仕事の中でもこのサイズ感だから撮影できるという分野も十分あると思いますので、これまで培ってきた技術を活かしながらプロの市場に打って出たいと考えました。

——G9 PROだから撮影できるプロ仕様の撮影領域とは、具体的にどんなシーンが考えられますか?

角:小型軽量や当社が得意とする高速AF、機動力が発揮できる分野として、例えば野鳥、動物、風景などのフィールド系が適していると考えます。

——今回のG9 PROを拝見していますと、要素技術は非常に先進的で優れています。しかしフォーマットの選択肢がマイクロフォーサーズ1つしかないのは、ユーザーの選択肢を狭めていますし、もったいないと思います。

角:ありがとうございます。現時点ではマイクロフォーサーズでもまだまだ進化させて磨いていく技術はあると考えております。今後そのようなユーザーのお声がたくさんあるようであれば、様々な選択肢を検討する必要が出てくるかもしれませんが、フォーマットを立ち上げるとなると全てのシステムを俯瞰しながらということになりますので、なかなかハードルは高いと思います。

——協業されているライカはパナソニックとは対照的に非常に多くのフォーマットのレンズ交換式カメラを出していますが、かつてのライツミノルタCLのように、より大きなフォーマットのライカ・パナソニック共同ブランドのカメラがあると大いに魅力的と思いますが、そうした企画はないのでしょうか?

角:実現するのはなかなか難しいと思いますし、特に計画はありません。

——パナソニックの交換レンズにおけるライカの役割とは?

渡邊:弊社のライカブランドレンズに関しましては、こちらで設計したものをライカカメラ社に提出し、主にレンズ設計の画質面でフィードバックを得るという方式で認証を得ています。更に製造段階でも厳しい検査基準が設定されており、それに沿うような形で統一するようにしています。

交換レンズの商品企画を担当する渡邊慎治氏

——話は変わりますが、今回のG9 PROはプロ機を謳う以上、プロサポートが重要になると思います。プロサポートのサービスは一足先に昨年オープンされていたのですね。プロサポートの開始以降、反響や動向はいかがですか?

角:これまでルミックスプロフェッショナルサービス(LPS)の対象モデルはGH5のみだったのですが、当初の想定を上回る方々のご加入をいただいており、動画関係の方々が比較的多いのではないかと考えております。今後、G9 PROも対象モデルになる予定ですので、動画中心のプロユーザーに加えて、静止画中心のカメラマンの方々にもご加入いただければと考えています。

ルミックスプロフェッショナルサービス(LPS)の会員向けストラップ

静止画フラッグシップながら、動画撮影機能も充実

——LUMIX GH5の登場以来、ミラーレスカメラで4K・60p記録ができるのは現在もパナソニックだけですね。G9 PROでも、動画機能の見どころはありますか?

角:G9 PROでも4K・60pの記録が可能ですが、GH5が放熱設計のため時間無制限で記録可能なのに対して、G9 PROでは10分までという制限を設けています。しかし、この画質の動画が記録できること自体が大きなアドバンテージかなと考えています。また、それ以外の画質(4K・30pやフルHD)の記録では最大29分59秒まで撮影いただけるということで、十分な動画撮影機能を備えていると言えます。

また、最近は静止画のお客様でもスローモーション撮影を行いYouTubeなどにアップされてお楽しみいただいている場合もあるということで、ハイスピード動画の機能も搭載しています。4K画質の場合は60pで撮影して30pで再生することで2倍のスロー、フルHD画質では180pで撮影し30p再生することで6倍のスローになります。

ファインダーと操作性へのこだわり

——約368万ドットの有機ELパネルを使ったEVFは見やすいですね。こだわりを教えてください。

堀江:業界最高解像度の有機ELパネルを採用するとともに、業界最大クラスの0.83倍というファインダー倍率の接眼光学系を新たに開発し、静止画機らしく撮影への没入感を重視して開発しました。倍率のほかにも、120fpsの高フレームレートや0.005秒と短い表示タイムラグなどを実現し、光学ファインダーに近い見え方を実現するというところにこだわりました。

LUMIX G9開発リーダーの堀江悟史氏

——反面、ファインダー像に糸巻き型の歪曲収差があるのが気になりました。

堀江:新規の光学系ということで、デザインやサイズなど色々な制約がある中で、大きなファインダー表示やファインダー内の目振り(接眼位置を微妙に動かした際の見え方の変化)性能なども考慮した結果、優先する性能を重視して今回のような仕様になっています。

——ところで、今お伺いしたファインダーの表示タイムラグ0.005秒というのは、パネル自体のスペックですか?画像処理を含めた実際の表示タイムラグですか?

堀江:画像処理の時間も含めた実際の測定値になります。

——ここまで早くなると、光学ファインダーと比べても遜色ないですね。

堀江:違和感のない見え方だと言っていただける機会が増えました。

——ファインダー倍率をワンタッチで変更できるのがユニークですが、これは表示パネル内での画像サイズを変更しているだけですか?

堀江:基本的にはその通りで、電子的な表示のリサイズを行なっています。ただし、単純に小さくしているということではなく、アイコンや表記文字などのサイズは維持しながら、画面サイズだけを小さくして視認性を確保するなどの工夫を行なっています。

——ファインダーやモニター表示の「ナイトモード」というのはユニークな機能ですね。暗い状況では通常のモニターがまぶしく感じられるので親切だと思います。表示を赤にしているのはどうしてですか?

堀江:暗所で瞳孔が開かない赤色が目に優しいということで選択しています。弊社のナイトモードはEVFと背面モニターの双方で利用可能なのが特長です。

デザインに込められた視覚的・機能的なこだわり

——今回のG9 PROで印象的なのはボディデザインです。いかにも精悍で男性的なデザインになっていますが、デザインコンセプトは?

佐々木:我々デザインチームでプロの方々に事前リサーチを行った結果、「MACHINED AGILITY」というデザインコンセプトに行き着きました。"機械仕掛けの俊敏さ"と直訳できますが、これをキーワードとして正確無比な機械と写真家の求める高い機動性が融合された堅牢感のある造形を目指しました。

先ほど男性的と言われた部分ですが、実際のボディデザインのインスピレーションは、古代ギリシャのある彫刻から得ています。具体的にはバチカン美術館にあるベルヴェデーレのトルソという彫刻で、かのミケランジェロも影響を受け、「最後の審判」には一部似た人物が描かれているほど有名な彫刻作品です。私も実際に実物を拝見してその迫力に大変感銘を受け、いつか形にしたいと考えていたモチーフでした。

そして今回、G9 PROのデザインを担当することになり、ベルヴェデーレのトルソから受けたインスピレーションと、先ほどの「MACHINED AGILITY」というコンセプトを基にデザインをしてみようと考えました。

デザインを担当した佐々木厚氏

実際の造形は、プロやハイアマチュアの写真家がカメラに求めるものを吟味し、継続的にヒアリングを行いながらデザインを進めました。その中でも、スムーズに撮影できる操作性とレンズ装着時の重量バランスが今回のモデルのキーになるのではないかと考えました。具体的にはLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.などの大きめのレンズを装着した場合にもしっかりと握れるグリップを実現するべく、グリップ部分だけでも20種類以上ものモックアップを作成し、全体の造形ディテールと共に徐々に磨き上げました。

検討されたモックアップの一部。

その結果、大型のレンズを装着して1日持ち歩いても疲れない理想的な形が出来上がりました。疲れない事が機動性とシャッターチャンスを向上し、より良い撮影結果に繋がると考えております。もちろん小型化にはこだわっているのですが、多くの撮影状況を考慮すると、やはりある程度しっかりしたグリップを持つモデルがハイエンド機にはふさわしいと考えました。

ファインダー頭頂部のデザインに関しましては、例えばこういったスケッチを描きながら造形のイメージを膨らませました。業界最高クラスの性能を誇るEVFに対して、レンズに入った光がそのまま流れるように到達するイメージをデザインで表現し、「トリプルエッジライン」と名付けました。実際に構えた時もストレートなエッジが照準のように被写体に向かっていき、撮影に対するモチベーション向上も考慮しました。

ファインダー頭頂部のデザインスケッチ。

——グリップがしっかりしているのはいいですが、全体にやや大型でマイクロフォーサーズの小型システムというメリットが活かされていない気がします。

佐々木:確かに小型のレンズと組み合わせると、グリップがやや目立つという面もありますが、手にかかる負担という観点で考えると、中指がかかる部分を深くすることで全体のバランスが良くなるように配慮しています。実際に女性や手が小さめの方にも持っていただいて確認しながら造形しています。

3Dプリンターで作られた初期段階の試作。

——全体のサイズ感は、内部機構の都合で決まっているのか、それともデザイン優先でこうなっているのですか?

佐々木:全体のサイズ感は内部のデバイスにより決まってきます。例えばグリップ部分の内部にはバッテリーとそれを固定するキャッチャーや他の部材が配置されており、そのままデザイン面で覆うと箱っぽい形になってしまいますので、機構設計者と話し合いながら肉付けをしたり、コンマ何ミリ単位で削るという作業を繰り返して造形してゆきます。

——黒のツヤありの梨地塗装は独特ですね。その辺りも含めてデザインでのこだわり点を教えてください。

佐々木:今モデルは外装の造形はもちろんですが、質感にもトコトンこだわろうということで、機構設計者と色々と検討しました。外装の黒の質感に関しましても、ライカブランドのレンズの黒が比較的深い黒ですので、これにぴったりと合うものということを目標にしました。また、プロ機を標榜するのであれば、まずは漆黒の黒のカメラを作ってみたいという気持ちもありました。これは、塗装メーカー様と共同で作ったサンプルの一部ですが、マットなものやもっと艶があるものなど色々と試した中で、最終的に造形とも合うツヤありの塗装を選択しました。この部分のチューニングだけでも数カ月の時間をかけて、慎重に選択しています。

検討段階の梨地塗装

——グリップ部分のラバーなどはどうですか?

佐々木:グリップは極限状態の撮影ほど重要になるということで、革シボのパターンも新たに色々と試作したものの中から選択しています。

シボの試作パターン

玉置:例えばゴムのシボ深さも従来機では100μmほどであったものを、270μmと深くすることで、表面の凹凸をはっきりとさせ、なおかつ手に馴染みやすく、引っかかりをよくしています。

外装設計を担当した玉置亮輔氏

佐々木:「手袋をした時でも引っかかりが良い」という評価をいただいていますので、方向性としては正しかったのかなと考えています。

——モードダイヤルの赤ライン(リング)がアクセントになっていますね。

佐々木:これが初期のスケッチで、「レッドショルダー」という名前をつけていました。カメラに限らず、自動車やバイクなど様々なジャンルでハイパフォーマンスを表現する色はやはり赤であり、今回のモデルでもハイパフォーマンスを表現する上で、どこかに赤を入れたいと考えました。しかし、大々的に赤を使うのではなくて、持つ喜びが感じられ、カメラへの情熱が感じられる色としてこの部分に入れることにしました。

入れる場所は色々と検討しましたが、どのスタイルで撮影されていても肩の部分はよく見えるということで決定しました。今後は"肩の部分に赤が入っているカメラはLUMIXである"と認識していただければ幸いです。

——先日発表された「LUMIX GH5S」にも赤ラインが入っていますね。

角:今のところはこの2機種のみですが、今後発売されるハイエンドのLUMIXには、その象徴として赤のアクセントを入れていきたいと考えています。

(後編に続きます)

杉本利彦

千葉大学工学部画像工学科卒業。初期は写真作家としてモノクロファインプリントに傾倒。現在は写真家としての活動のほか、カメラ雑誌・書籍等でカメラ関連の記事を執筆している。カメラグランプリ2017選考委員。