交換レンズレビュー

Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary

世界初・20mmスタートのフルサイズ対応10倍ズームレンズ

「Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary」は、超広角20mmから望遠200mmまでを1本でカバーする、35mmフルサイズセンサー対応の10倍高倍率ズームレンズ。超広角から望遠まで繋がる画角変化は想像以上にインパクトが強く、風景からスナップ、ポートレートまで幅広い被写体に対応する。その割に小型軽量であり、日常使いから旅先まで、安心して持ち出せる1本だ。

今回試用したソニーEマウント用の他に、Lマウント用が用意されている。

サイズ感

外形寸法は約Φ77.2×117.5mm、質量は約540g(ソニーEマウント用)。写真だと伝わりにくいかもしれないが、超広角20mmから始まる高倍率ズームレンズとは思えないほどコンパクトかつ軽量に仕上がっている。本レンズが届いたとき、最初はAPS-Cサイズ用のレンズではないかと錯覚したほどだった。

もちろんテレ端までズーミングすれば、鏡筒は大きく伸びる。それでもフルサイズ対応の20-200mmという焦点域を考えると、このサイズと重量には驚かされる。徹底した小型・軽量化も、本レンズの特徴の1つといえるだろう。

操作性

レンズ先端から順に「フォーカスリング」と「ズームリング」を備えており、高倍率ズームレンズとしてはごく一般的な操作系だ。

鏡筒左側には「フォーカスモード切換えスイッチ」と「ズームロックスイッチ」を備えている。「フォーカスモード切換えスイッチ」はAFとMFを切り換えるためのもの。

先の画像では少し確認しづらかった「ズームロックスイッチ」は、移動中に不用意に鏡筒が伸長してしまわないようロックするためのものだ。

同梱のレンズフードは花型の「LH756ー02」。本レンズのような高倍率ズームレンズでは、特に超広角域のような有害光を拾いやすいシーンで効果を発揮するため、ぜひ装着しておきたいところだ。

解像性能

あえて開放絞りに設定し、広角端と望遠端で遠景を撮影してみた。結果は上々。画面全体にわたり高いコントラストとシャープネスが得られた。高倍率ズームレンズとしては驚くほど優秀な解像感といえる。

広角端20mm、開放絞り値F3.5での撮影。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/20mm/絞り優先AE(1/125秒、F3.5、±0.0EV)/ISO 100
中央付近を拡大

中央付近の解像感は本当に素晴らしい。周辺に行くほど解像感は甘くなるが、唐突でなく自然に推移するので、ほとんど違和感を覚えることはないだろう。

望遠端200mm、開放F6.3での撮影結果も良好だ。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/200mm/絞り優先AE(1/100秒、F6.3、−0.3EV)/ISO 100
中央付近を拡大

こちらも中央付近で解像感は高く、周辺にいくに従い甘くなるのは変わらない。しかし、その変化はさらに緩やかなため、広角端に比べてより解像性能の高さが感じられる。

全体として、高倍率ズームレンズとは思えないほど安定した解像性能を示している。

近接撮影性能

広角端20mmでの最短撮影距離は25cm。超広角レンズとしては優秀な数値で、ここまで寄れると被写体に大きく迫りながら背景を広く取り入れる、いわゆる「広角マクロ」的な撮影が可能になる。花や小物を印象的に写し込み、背景描写を生かした表現にも役立つだろう。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/20mm/絞り優先AE(1/30秒、F3.5、±0.0EV)/ISO 320

一方、望遠端の最短撮影距離は33cmとなっている。最大撮影倍率は公称されていないが、試写した印象ではおよそ0.25倍程度はありそうに思えた。数値はともかく、望遠端でもかなり寄れる印象で、被写体との距離をとりつつ大きく写したい場面で有効に活用できる。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/200mm/絞り優先AE(1/250秒、F8.0、+0.3EV)/ISO 10000

また本レンズは、焦点距離28〜85mmのときに最大撮影倍率0.5倍を実現するという、やや特殊な仕様になっている。0.5倍といえば、もはや本格的なマクロレンズの領域であり、高倍率ズームレンズとしては極めて高い近接撮影性能を備えているといってよいだろう。逆に言えば、この仕様を理解しているかどうかで、本レンズの活用範囲は大きく変わってくる。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/28mm/絞り優先AE(1/30秒、F4.0、+0.7EV)/ISO 800

作例

広角端で背景を広く取り入れながら、トンボにできるだけ近寄って撮影してみた。高倍率ズームレンズでありながら、超広角20mmの世界が味わえるというのは想像以上に新鮮だ。最短撮影距離が短く、開放F値もF3.5と明るめに設定されていることもあって、今回の試写では実用性の高さを実感することができた。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/20mm/絞り優先AE(1/125秒、F4.0、±0.0EV)/ISO 800

望遠端200mmでネコを撮影してみた。20mmから200mmへ一気にズームすると、想像以上に画角が変化し驚かされる。AF駆動にはシグマ独自のリニアモーターHLAが採用されているため、望遠での動体撮影でも素早く、かつ正確にピントを合わせることが可能だ。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/200mm/絞り優先AE(1/125秒、F6.3、±0.7EV)/ISO 2500

質感の描写性も、高倍率ズームレンズとは思えないほど秀逸だ。花弁の微妙な凹凸までしっかりと再現しており、植物の生命感が見事に伝わってくる。この距離感で見せる背景ボケもまた素晴らしく、素直で柔らかく自然な表現に好感がもてる。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/51mm/絞り優先AE(1/60秒、F5.6、±0.3EV)/ISO 800

焦点距離123mmで撮影。中望遠域での描写も良好で、果実の表面の艶や筋のディテールの細かさから、立体感が見事に表現されている。広角端や望遠端だけでなく、中間域の描写にも一切の妥協が見られない。よく練られて設計された高倍率ズームレンズであることが分かる。

ソニー α7R V/Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary/123mm/絞り優先AE(1/125秒、F6.3、−0.3EV)/ISO 8000

まとめ

実際に使ってみると、画角変化の大きさは想像以上に印象的で、同じ10倍ズームでも24mmや28mmスタートのズームとは明確に異なる表現領域をもっていると実感できる。

それでいてコンパクトかつ軽量に仕上げられており、携行性の高さにも驚かされる。カメラ側のデジタル補正を前提に設計されていることは想像できるが、それを差し引いても描写性能とサイズ感のバランスは絶妙の一言。

静止画はもちろん、超広角域を生かした動画撮影でも活躍が期待できるだろう。時代の要求に応えた、新世代の高倍率ズームレンズだ。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。