交換レンズレビュー

SG-image 50mm F1.4

1万2,000円前後で手に入る大口径F1.4の中望遠レンズ

今回取り上げるのは、「SG-image 50mm F1.4(富士フイルムXマウント用)」です。APS-C対応のレンズなので、35mm判換算での焦点距離は75mm相当。いわゆる中望遠レンズです。MF(マニュアルフォーカス)専用ですが、1万2,000円前後の低価格でF1.4の明るさを楽しめるのは興味深いところです。

この記事では富士フイルムXマウント用を試用していますが、ソニーE、キヤノンRF、マイクロフォーサーズ、ニコンZ用も用意されています。

外観・仕様

Xマウントの場合、外形寸法は約Φ58×42.5mmで、質量は約255g。AF機構を備えていないことを考慮しても、F1.4のレンズとしてはコンパクトに仕上がっています。

金属製の鏡筒は十分な剛性感があり、使用時にも安心感があります。富士フイルムのフラッグシップモデル「X-H2S」と組み合わせてもバランスは良好で、違和感を覚えることはありませんでした。

操作性

フォーカスリングがレンズのほぼ中間に、絞りリングはレンズ先端付近に配置されています。レンズ全体のサイズの割にフォーカスリングの幅は十分にあり、指がかりも良好です。回転操作には適度なトルクも感じられます。

今回は富士フイルムXのフラッグシップボディ「X-H2S」と組み合わせて試用しましたが、本レンズのコンパクトさを生かすなら「X-S20」「X-E5」「X-M5」といった、より小型軽量なモデルとの組み合わせも悪くなさそうです。

作例

絞り開放のF1.4では画面全体にハレっぽさが出て、ピント面のシャープネスもやや弱まります。想像するに最高性能を追求したレンズではなく、こうした描写も味わいのひとつと捉えるのが良いでしょう。昔ながらに、絞り込むことで画質が向上するレンズと割り切って楽しむのが得策だと思います。

富士フイルム X-H2S/SG-image 50mm F1.4/絞り優先AE(1/60秒、F1.4、±0.0EV)/ISO 160

F5.6での撮影です。ピント面での解像感の高さはなかなかのもので、画面の広い範囲で安定した描写を見せています。周辺部にはやや像の乱れが残っていますが、実用上大きな支障を感じることはありません。

富士フイルム X-H2S/SG-image 50mm F1.4/絞り優先AE(1/50秒、F5.6、−1.3EV)/ISO 200

最短撮影距離は0.5mと、APS-C対応の中望遠レンズとしては標準的ですが、花や小物を撮るには十分で、テーブルフォトにも活用できます。作例では多少の軸上色収差が見られますが、厳密な用途でなければ気になるほどではなく、自然な雰囲気のまま被写体を表現できます。

富士フイルム X-H2S/SG-image 50mm F1.4/絞り優先AE(1/750秒、F2.8、−0.7V)/ISO 160

まとめ

F1.4という明るさながら約255gと非常にコンパクトに仕上げられており、気軽に持ち歩けるのが大きな魅力です。MF専用ですが、ミラーレスカメラのピント拡大機能も活用でき、瞬間的に動く被写体でなければ十分対応できるでしょう。

絞り開放では柔らかく、絞り込むことで安定していくという昔ながらの大口径レンズの描写傾向を見せます。周辺部の乱れや軸上色収差などもありますが、価格を考えれば大きな欠点とはいえず、むしろ個性として楽しめそうです。

実売1万2,000円前後で入手できることもあり、大口径中望遠レンズでの撮影を体験したい方や、個性的な描写を表現に取り入れてみたい方は、試してみてはいかがでしょうか。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。