交換レンズレビュー
ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
圧倒的な画質と取り回しの良さを両立 新しい基準となる大口径標準ズームレンズ
2025年9月28日 12:00
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は、35mmフルサイズセンサーに対応した、ニコンZマウント用の大口径標準ズームである。
前モデルからのフルモデルチェンジにより、世界最軽量という取り回しの良さや、ボイスコイルモーター採用によるAFの進化が加わった。描写性能や近接性能も向上しており、ポートレートからスナップまで幅広く楽しめるレンズといえるだろう。
サイズ感
外形寸法は約Φ84×142mmで、質量は約675g。ズーム全域開放F2.8の標準ズームレンズとして世界最軽量となっている。
インターナルズーム方式のためズーミングしても全長は変わらず、動画撮影でジンバルを使う際にバランスを一定に保ちやすいのがメリットだ。
左から「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」(本モデル)、「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」(前モデル)、「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」。この状態では全長が前モデルより長く、携帯性において優位性があるわけではないことが分かる。
しかしテレ端までズームすると状況は一転する。携行性では従来方式の方が勝るが、使い勝手の良さではインターナルズーム方式の方が有利といえるだろう。
操作性
レンズ先端から順に「フォーカスリング」「ズームリング」「コントロールリング」を備えている。「コントロールリング」にはフォーカス(M/A)のほか、絞り、露出補正、ISO感度などを割り当てることができ、よく使う設定を手元で操作できる。
鏡筒左側には「フォーカスモードスイッチ」と「フォーカス制限切り換えスイッチ」を備える。さらに「L-Fnボタン」も配置されており、任意の機能を割り当て可能だ。縦位置・横位置のどちらからでも押しやすく、実際の撮影で扱いやすい。
新たに搭載された「コントロールリングクリックスイッチ」は、このレンズの特徴の1つ。ON/OFFでクリックのあり/なしを変更できる。例えばOFFにすることで、動画撮影で連続的な絞り操作を求められる場面などで利用できる。静止画ではON、動画ではOFFといった使い分けが考えられるだろう。
同梱のレンズフードは花型の「HB-117」。ロックスイッチにより不用意に外れる心配がなく、フィルター操作用の小窓も設けられている。造りは堅牢で、プロユースにも耐える仕様だ。
解像性能
広角端の24mmで建造物を、あえて開放F2.8に設定して撮影してみた。結果は大変素晴らしい解像感で、画面全体にわたり高いコントラストとシャープネスが得られている。特に中心から周辺にかけての描写は力強く、細部のレンガ模様や窓枠のラインも明瞭だ。
四隅では像がやや甘くなるが、その程度はわずかなもの。1段ほど絞り込めばほとんど解消され、隅々まで均質な描写が得られる。標準ズームの広角端としては非常に優秀で、絞り開放から安心して使用できるだろう。

望遠端70mmにおける絞り開放F2.8での撮影でも、画面全体で高い解像感を得ることができた。細部の建材や窓枠の輪郭も引き締まっており、建築物の質感を的確に描写している。

特筆すべきは、画面の四隅においても像が安定していること。広角端ではわずかに甘さが見られたが、望遠端ではその傾向がほとんど感じられず、より優れた解像性能を発揮している。標準ズームの望遠端として、十分以上に信頼できる描写力だといえるだろう。
解像性能はズーム全域で高い水準を維持しており、最新のミラーレスカメラ用標準ズームとして、相応しい描写を発揮していると言える。
近接撮影性能
広角端24mmでの最短撮影距離は0.24mとなり、前モデルの0.38mから大幅に短縮された。広角端で被写体に大きく迫りながらも、背景を広く取り入れる、いわゆる「広角マクロ」的な撮影が積極的にできるようになった。花や小物を印象的に写し込み、背景の広い環境描写を活かした写真表現に役立つ。
一方、望遠端の最短撮影距離は0.33m、最大撮影倍率は0.32倍。こちらも前モデルの最短撮影距離0.38mよりも被写体に近づけるようになり、最大撮影倍率も約0.22倍から約0.32倍へと向上した。個人差はあるだろうが、0.25倍を超えると「大きく写せる」という実感がわく。
本モデルの近接撮影性能は大きく進化しており、同クラスの標準ズームと比べても優れたレベルにある。これらの進化は、ミラーレスカメラ専用の設計技術向上によるものだろう。
作例
ポートレート撮影においてもAF性能の進化が感じられる。従来のステッピングモーターからボイスコイルモーター(VCM)へ刷新されたことで、合焦は体感的により素早く、滑らかになった。静音性や精度の高さはしっかり継承されており、モデルの動きに自然に追従するのも頼もしい。動画撮影でも違和感のない駆動を味わえるだろう。
望遠端付近で開放F値に設定し、全身を収めて撮影した。瞳が小さく写るため、アップよりもピント合わせが難しくなるが、レンズのAF性能と被写体認識機能が相まって、正確に合焦してくれた。雰囲気を強調するため、ホワイトバランスを冷調に設定している。
焦点距離41mmは自然な遠近感で個人的に好きな画角。ここでも良好な描写傾向が際立ち、ピント面はシャープかつハイコントラストでありながら、背景は柔らかく自然に溶けている。ボケ味が硬さを感じさせないため、被写体を引き立てつつ周囲の空気感も損なわない。最新の高性能標準ズームに求められる条件をしっかりと満たしている。
本レンズは描写の安定感が際立っており、それほど絞り込まずとも、画面全体で均質なシャープネスと高いコントラストが得られる。ズーム全域で安定した描写が得られるため、ニコンらしい描写傾向がより一層、風景の奥行きを再現していると感じた。
野外展示の埴輪のレプリカを撮ってみた。単なる記録写真のつもりでも、本レンズを通すと質感や立体感が鮮明に描写され、印象的な1枚へと昇華してくれる。高いコントラストと均質な描写性能に、最新の高性能レンズならではの強みを実感する瞬間だ。
まとめ
本レンズの大きな特徴は、標準ズームとしては珍しくインターナルズームを採用している点にある。さらに同クラスでは世界最軽量というアドバンテージを誇り、実際の試写でもその軽快さを存分に実感できた。
ボイスコイルモーターの採用によるAF性能の向上は素晴らしく、ポートレートからスナップ撮影、動画撮影まで広範囲にわたって確実に効果を発揮するだろう。
描写性能に関しても、最新設計らしい高い解像力と均質な描写が特徴。ズーム全域でそれらを得ることができる。
間違いなくトップクラスといえる本レンズ。その描写力と操作性は、多彩な撮影シーンに応えながら高水準の画質を約束してくれるはず。ニコンユーザーにとって選択する意義の大きい1本となるだろう。
モデル:透子