交換レンズレビュー
TTArtisan AF 23mm F1.8
扱いやすい35mm相当でF1.8 質感・コスパも自慢の大口径単焦点レンズ
2025年7月15日 07:00
今回取り上げるのは、銘匠光学の「TTArtisan AF 23mm f/1.8(富士フイルムXマウント用)」です。APS-Cフォーマットの焦点距離23mmは、35mm判換算で約35mmに相当します。スナップ撮影では定番ともいえ、多くのファンに支持されている画角といえるでしょう。
この記事では富士フイルムXマウント用を試用していますが、ソニーEマウント用、ニコンZマウント用もラインナップされています。
外観・仕様
外形寸法は約φ65×60mmで、開放F値1.8の大口径ながらコンパクトな設計です。鏡筒には航空機グレードのアルミ素材が用いられており、手にすると価格以上の質感が得られます。質量も約210gと軽量な点も魅力です。
操作性
操作系はフォーカスリングのみとシンプルで、ボタンや絞りリングはありません。フォーカスモードの切り換えや絞り値の設定はカメラボディ側で行うため、実用上の不便は感じにくいでしょう。
花型と角型を融合させたような、こだわりの感じられるデザインのレンズフードが付属します。積極的に装着して撮影したくなるユニークな形状です。
特徴的なのは、リアキャップにUSB Type-C端子が搭載されている点でしょう。リアキャップ側の電子接点を介して、レンズのファームウェアアップデートを行います。レンズ本体ではなく、リアキャップを利用する仕様に独自性を感じます。
作例
解像性能は、画面中央部で高く、周辺部に向かって穏やかに描写が甘くなるオーソドックスな特性です。このクラスのレンズとしては自然な描写傾向と言えるでしょう。絞り込んでも周辺の甘さは若干残りますが、それがかえって往年のレンズを思わせる味わいにつながっています。
レンズ構成は9群11枚で、その中にはED(特殊低分散)レンズ2枚と高屈折レンズ1枚が含まれる贅沢なものです。これにより色収差は効果的に補正されており、安心して撮影できます。
AF駆動にはステッピングモーターを採用し、静粛かつ高速な合焦を実現。カメラボディ側の被写体検出AF(瞳AFなど)にも的確に追従します。
最短撮影距離は0.3mと、このクラスの単焦点レンズとしては標準的です。最新レンズの中にはより近接性能に優れたものもありますが、一般的なスナップ撮影では十分なクローズアップが可能です。
ボケ味は、ピント面から滑らかにつながる自然な描写です。 ただし、条件によっては背景が渦を巻くようにボケる、いわゆる「グルグルボケ」の傾向が見られることもあります。 完璧な描写性能を追求したレンズではなく、こうした個性を表現にどう活かすかが、このレンズを使いこなす鍵となるでしょう。
まとめ
35mm相当という扱いやすい画角を持つ大口径単焦点レンズでありながら、コストパフォーマンスに優れる1本です。カメラボディの性能を生かせば妥当なAF性能といえますし、アルミ製の鏡筒は価格以上の高級感を感じさせます。
面白いのは、EDレンズなどの特殊硝材を採用しつつも、必ずしも完璧なシャープネスを目指していない点です。ピント面の現代的な解像感と、オールドレンズのような味わい深い描写の両立を狙った設計思想なのかもしれません。
比較的手に取りやすい価格設定も魅力であり、明るい35mm相当の単焦点レンズを探しているユーザーにとって、有力な選択肢の1つとなるでしょう。