交換レンズレビュー

SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary(キヤノンRFマウント)

素直なボケと画角が魅力 テーブルフォトでも活躍する大口径標準レンズ

シグマから、キヤノンRFレンズに対応した交換レンズ「30mm F1.4 DC DN|Contemporary」が発売されました。

すでにキヤノンEF-M、ソニーE、ニコンZ、マイクロフォーサーズ、富士フイルムX、Lの各マウント用に提供されている製品ですが、新たにRFマウントでの登場です。キヤノンのAPS-Cセンサーを搭載するカメラに装着すると、焦点距離48mm相当となる標準域のレンズとなります。

外観と仕様

開放F1.4の大口径レンズというと、大きくて重いイメージがありますが、本レンズはコンパクトで携帯性に優れています。APS-Cセンサー用ということもありますが、今回試用したRFマウント用も285gという軽さです。

外観は幅広のピントリングのみというシンプルさ。EOS R10とのバランスも良い印象です。

最短撮影距離は30cmで最大撮影倍率は1:7。被写体にも寄れる方なので、スナップのほか、テーブルフォトにも重宝します。最短撮影距離付近の描写もかなりシャープで、絞りを開けているとややソフト感はあるものの、芯はしっかり描写されています。クローズアップするほどボケは大きくなりますから、少し被写体に近づいてF1.4のボケをぜひ味わってみて欲しいものです。

絞り羽根は9枚で、円形絞りを採用しています。絞りを変えながら丸ボケを写してみたところ、F5.6付近まで絞るとやや角が現れはじめました。大口径ゆえに絞り開放では四隅のボケはレモン型になりますが、中心部はきれいな丸いボケになります。

丸型のレンズフード「LH586-01」が付属します。フードにもラバーや溝があるのは、フードを持って撮影することを想定しているとのこと。小さいレンズということで、よく考えられています。

作例

ベンチの上に落ちたモミジの根元付近にピントを合わせました。上から見下ろすように撮っているのですが、クローズアップしているためにわずかについた角度でも前後のボケが作り出せます。

EOS R10/SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary/30mm(48mm相当)/絞り優先AE(1/400秒、F2.0、+0.7EV)/ISO 100

主役の大きさはカメラからの距離で調整できますが、背景の写る範囲は焦点距離によって決まります。背景の雰囲気を感じさせつつも、うるさくらない程度にぼかせるのがいいですね。ボケもなめらかできれいです。

EOS R10/SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary/30mm(48mm相当)/絞り優先AE(1/60秒、F1.8、+0.7EV)/ISO 125

中・遠景の描写も良好です。F8まで絞ったためか、街灯の金属の質感、建築物の塗装の様子まで、細やかに描写されているのがわかります。

EOS R10/SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary/30mm(48mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 100

素直な画角で最短撮影距離も程よく短く、F1.4なのでボケも作れる。料理やスイーツなどのテーブルフォトにも使いやすいレンズです。

EOS R10/SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary/30mm(48mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F1.4、+0.3EV)/ISO 100

絞っていることもあり、全体的にくっきりと写っています。幹や枝先の細やかな凹凸、葉の1枚1枚もシャープに写されていることがわかります。

EOS R10/SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary/30mm(48mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F11、−1.0EV)/ISO 100

円形絞りのおかげで、イルミネーションのボケがきれいな丸い形に写っています。絞りの開放F値がF1.4と明るいので、夜景でも低感度で撮影することができました。

EOS R10/SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary/30mm(48mm相当)/絞り優先AE(1/125秒、F1.4、−0.3EV)/ISO 100

まとめ

スタンダードな画角ながら、大きなボケが得られるのが大口径標準レンズの面白さ。中距離でも絞りを開ければ背景をぼかすことができますし、最短撮影距離近くまでクローズアップすると、被写界深度は極めて浅くなります。レンズを通して写し出される世界が視覚と大きく違って見えるので、とても新鮮に感じることでしょう。望遠レンズのボケとも、標準ズームレンズのボケとも違う、大口径標準レンズならではの魅力があると思います。

キヤノン純正にも近い焦点距離の大口径単焦点レンズがありますが、コストパフォーマンスを含め、比較検討できる選択肢が増えるのは嬉しいことです。単焦点レンズに初めて挑戦するにも手頃ですし、明るい標準レンズを常用レンズとして持ち歩くのも楽しそうです。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。