交換レンズレビュー

FEレンズ初の大口径標準レンズをポートレートで試す

Planar T* FE 50mm F1.4 ZA 解像感とボケの両立が見事

前回紹介したポートレートの王道レンズであるFE 85mm F1.4 GMでは、圧倒的なボケ味と解像感を堪能していただいたことだろう。今回は、カールツァイス銘を冠する50mmの標準レンズPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAを紹介したい。

50mmは85mmレンズに比べて画角が広いため、背景を活かした撮影にも向いている。被写体との距離も近くコミュニケーションをとりながら撮影できるのも50mmレンズの魅力と言って良いだろう。撮影する距離によってもレンズのキャラクターが変わるので楽しめる1本だ。

発売日2016年7月29日
実勢価格税込18万6,300円前後
マウントEマウント
最短撮影距離0.45m
フィルター径72mm
外形寸法83.5×108mm
重量約778g

デザインと操作性

レンズ構成は高度非球面AA(advanced aspherical)レンズ1枚、非球面レンズ1枚とED(特殊低分散)ガラス1枚を含む9群12枚。それにより像面湾曲や歪曲収差を低減。プラナーの名に相応しい像面平坦性を実現している。なおPlanarは、平坦を意味するPlan(ドイツ語)が名称の由来とのことだ。

それに加え、レンズにはT*コーティングが施してあるので逆光の撮影の多いポートレートでも安心だろう。

α7R IIに装着したところ

実写してみて感じたことは、自然なとろけるようなボケと高い解像感の両立だ。これまでプラナーの印象は開放ではふんわりというのが筆者の印象だったのだが、本レンズは違う。絞り開放でもピント位置はキリッとシャープでまつげの1本1本までしっかり解像しているのだ。

ハイライト部分に出やすい色収差もなく、安心して撮影できた。コントラストは高めで全体的にクリアでヌケが良い。絞り羽根は11枚なので少し絞っても綺麗な丸ボケになる。また、F5.6くらいまで絞れば周辺までしっかりと解像する。

ピント合わせもストレスなく行え、静音性にも優れている。α7R IIの高画素記録でも苦労すること無くしっかりとピント合わせできた。もちろん、絞り開放付近はシビアになるのでコサイン誤差などにも注意して撮影していただきたい。

操作系に関しては、MF時のフォーカスリングのトルク感は適度にあるので、合わせやすい。絞りリングも搭載されており、撮影しながら直感的に絞り値を変更できる。

ムービーで使用する際は「クリックON/OFF切り換えスイッチ」を使い、スムーズに絞り値を変更することも可能だ。

作品

商店街が背景になるようにウエストアップで撮影。絞り開放でも解像感は高くコントラストも高め。背景のボケはとろけるようなボケでとても印象がよい。50mmは背景も活かせるので街でのスナップやポートレートには最適だ。

α7R II / 1/500秒 / F1.4 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

バストアップで店先の緑をバックに撮影。被写体に近づくとボケはさらに大きくなる。背景にはツタや葉が重なっているが、しっかりとボケており線も気にならない。

α7R II / 1/500秒 / F1.4 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

バストアップで背景まで約1m位の場所で撮影。背景が近くなるとボケにくくなるが、F1.4で撮影したことで十分なボケが得られた。

α7R II / 1/2,000秒 / F1.4 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 50mm

一般的に、全身を入れると被写体から離れる必要があるので、50mmでは大きなボケは得られにくい。しかしF1.4を活かすことで、背景を活かしながらもボカすことができた。

α7R II / 1/2,000秒 / F1.4 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 50mm

バラや葉を前ボケに撮影した。ボケの質感もよく綺麗にボケている。茎などは変に滲む場合があるが、このレンズはにその心配は無さそうだ。

α7R II / 1/1,000秒 / F1.4 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 50mm

手前の緑を少し入れて撮影。路地のボケ感もよい。背景の点光源は中央付近に配置しているので、絞り開放でも綺麗な円形になっている。

α7R II / 1/1,000秒 / F1.4 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 50mm

最短撮影は45cmだ。そのため、最短まで寄ると画面いっぱいに顔を写すことができる。近接域でも画質はほとんど落ちることはなく、まつげの1本1本までしっかり解像している。

α7R II / 1/125秒 / F1.4 / +1.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

F5.6まで絞り、レンガの壁前で撮影。F5.6では解像感が増し、レンズ周辺までしっかりと解像していることがわかる。

α7R II / 1/100秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO400 / 絞り優先AE / 50mm

F4まで絞り、大型ストロボを光源に撮影している。ジーンズの繊維までしっかりと解像している。

α7R II / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO100 / マニュアル / 50mm

まとめ

本レンズは防塵防滴構造を採用しているので、海辺などでのポートレート撮影でも安心だろう。

サイズはミラーレスカメラのレンズとは思えないほど大きい。全長は108mmで最大径は83.5mm。重量は約778gととてもヘビーなのだ。ポートレート撮影では苦にはならなかったが、スナップ撮影などで持ち歩くにはやや大きく感じるかもしれない。

今回、本レンズを使い様々なシーンでポートレートを撮影したが、本レンズの圧倒的な解像感とボケ感の両立には驚かされた。絞り開放でも十分満足できる画質のレンズは多くない。絞り開放で解像感とボケ両方を楽しみたい方には最適だろう。

モデル:☆AiAi☆

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/