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スマートフォンで天体撮影できる組立式望遠鏡

サイトロンジャパン「NEWTONY DIY」

株式会社サイトロンジャパンが発売する組立式望遠鏡「NEWTONY(ニュートニー) DIY」を紹介する。2023年8月4日に発売された組立式の天体望遠鏡。同社オンラインショップ「シュミット」では税込7,920円で販売する。

天体望遠鏡の仕組みを組立ながら学べる学習キット。対象年齢は14歳以上となる。安価なだけに実際に天体観測が可能なのかと気になるところではあるが、サイトロンジャパンによると月面のクレーターや木星のガリレオ惑星などの観測に適しているという。

数多くの天体望遠鏡を製造するサイトロンが出す製品なだけに期待が高まる。今回はそんな天体望遠鏡を組立から実写まで試していこう。

組み立ててみた

本体は軽量かつコンパクト。すべて組み立てた場合の重量は、接眼アイピースを含めない場合約500g。組立式の三脚も付属し庭先やベランダなど気軽に天体観測を楽しめる。キットには本体となる鏡筒と3種類のアイピース、天体撮影用のスマートフォンアダプター、卓上三脚キットが付属する。

アイピースは3つ付属。10mmフォトアイピース、スクリーンアイピース、中の構造が見られる10mmアイピースが同梱される。

アイピース3種と右側はスマートフォンアダプター

部品毎に組立方法が書かれた取扱説明書が付属するので、組立が苦手な人でも問題はないだろう。プラモデルのような切って貼ってといった作業もほぼなく、既存の部品を取り付けて形にする。

まずは本体から。鏡筒にアイピースやレンズ部分を取り付けていく。まずは副鏡を貼り付け、主鏡を主鏡セルに取り付ける。鏡筒の溝に併せてはめ込むため、向きが異なるといった心配もない。

左が副鏡、右が主鏡
本体への取り付けは溝に合わせて取り付けるのみ

光学系はニュートン式反射望遠鏡方式を採用する。最も広く望遠鏡で使用されている方式だという。

鏡筒には側面カバーを備え、着脱が可能。これにより組立後にも望遠鏡の仕組みを学ぶことができるのが、同製品の最大の特徴と言えるだろう。あとは使用用途にあったアイピースを取り付けて、本体の組立は完了となる。

側面カバーを外した様子
すべての部品を取り付けた状態でも内部を観察できる

三脚はコンパクトな自由雲台式を採用。自由雲台も仕組みも学べるよい機会。

三脚も取扱説明書を読みながら作れば難しいことはない
自由雲台式

本体下部には三脚穴を備え、付属品以外のカメラ用の三脚に取り付けも可能だ。

天体撮影に挑戦

まずは付属のスマートフォンアダプターを準備。今回はiPhone 14 ProとXperia 1 IVを用意して撮影していく。いずれも多眼カメラのため、カメラを起動したままスマートフォンアダプターに設置。使用するズーム倍率に設定してから、カメラの位置とアダプターの位置を調整することでカメラ位置を間違える要素も取り除ける。

その後は、アイピース横にある照準器を使い、観測対象物に本体の位置を合わせる。観測用のアイピースでピントを合わせて、スマートフォンアダプターを切り替える。そうするとカメラに被写体が写りこんでくる。

撮影日は風が強く、軽量なボディでは弱ブレを起こしやすい環境が揃っていたため、実際の観測する際は無風な日にチャレンジすることをおすすめする。

何枚かチャレンジした中の1枚。月面のクレーターが観測できる。弱ブレがなければもう少し鮮明に見られるだろう。そのほか、星空に向けてシャッターを切ってみた。

iPhone 14 Pro/(1/33秒/F1.78)/ISO 200
Xperia 1 IV/(1/1.3秒/F1.7)/ISO 3200

撮影にはそれなりのコツが必要。望遠鏡側でピントを合わせたのちにスマートフォンを本体に取り付けるのだが、ピントが合わなかったり、マクロモードになり元に戻らない現象が多々発生した。カメラであればMF設定にすることで回避できるトラブルだが、スマートフォンではそういうわけにいかない。

本体から外してマクロモードを解除するなどといった事が必要になる。

少し違った使い方にも挑戦

日中でも撮影にチャレンジしてみた。近所の川にいるカモを対岸から撮影。iPhoneの望遠カメラを使用したため、ケラレ部分は切り抜きされた。

iPhone 14 Pro/(1/121秒/F1.78)/ISO 80

こちらは標準カメラのため、ケラレ部分がそのまま記録される。

iPhone 14 Pro/(1/147秒/F1.78)/ISO 64

こうした使い方をしてみると、望遠レンズとしても楽しめる製品。もちろんニュートン式反射望遠鏡の特性上、アイピースを通して見える像はすべて上下左右反転するため、構図あわせなどが大変な点もある。日中使う注意点としては、失明の恐れがあるため太陽を絶対に覗かないことだ。

じっくり使って、色々な挑戦がしたくなる製品

天体撮影が安価かつスマートフォンで気軽に体験できるのは魅力的な製品だ。なにより自身で組立をすることで製品への理解も深まる。学習用といいつつも大人でも十分に楽しめる。

筆者も今回の経験を通してカメラでの天体撮影にも興味が湧いた。天体観測を始めて見たい人が手にする製品としては良い選択となるだろう。

【2024年3月4日】記事初出時、日本のすばる望遠鏡にも同様のニュートン式望遠鏡方式を採用すると記載しておりましたが、正しくは経緯台式反射望遠鏡(リッチー・クレチアン方式)となります。お詫びして訂正させていただきます。

本誌:佐藤拓