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本体をスライドさせると冷却ファンが作動…スタイリッシュなUSB4対応ポータブルSSD

バッファロー SSD-PE2.0U4-SA

株式会社バッファローが、2023年12月に発売したポータブルSSD「SSD-PEU4A」シリーズ。最新のUSB規格である「USB4」(Gen 3×2)に対応した製品として、速度面をアピールするのが本来であろうが、もっと重要なことがある。見た目だ。

高速な「USB4」に対応

とはいえ、スペックも重要なので、まずはここで軽く触れておこう。

本製品は、接続インタフェースとして「USB4」(Gen 3×2)を採用し、最大転送速度40Gbps(規格値)を実現するポータブルSSDだ。容量の異なる1TB(税込3万6,800円)と2TB(税込4万9,100円)の2モデルで展開している。

外形寸法は63×16×118mm。質量は約190g。外部電源は利用せず、USBバスパワーで駆動する。

基本的には、付属のUSB4(40Gbps)対応ケーブルを利用。長さの問題でサードパーティ製を選ぶなら、対応をしっかり確認したい

なお、シーケンシャルリードは3,800MB/秒だが、シーケンシャルライトは2TBモデルが3,700MB/秒なのに対し、1TBモデルは3,600MB/秒なので注意したい。

理論値でいうと、USB4(Gen 3×2)の転送速度は5,000MB/秒(40Gbps)。昨今普及している「USB 3.2(Gen 2)」なら1,250MB/秒(10Gbps)となり、「USB 3.2(Gen 1)」ならその半分の625MB/秒(5Gbps)となる(1Gbpsでは、1秒間に125MBのデータ量を転送できる)。

規格的にこなれてくると、理論値に近い公称値の製品が出てくる。例えば、同社の「SSD-PHPU3A」シリーズなら、シーケンシャルリードは1,050MB/秒で、規格的な上限の1,250MB/秒に近い。

もちろん、それよりも遅い製品はあるし、速い製品だってある。小型を特徴とする「SSD-PSTU3A」シリーズなら、同じ「USB 3.2(Gen 2)」仕様だが、シーケンシャルリードは600MB/秒とさらに遅い。

とはいえ、これは速度よりも小型であることを評価するべき製品なので、なんら問題はない。むしろ、ほぼUSBフラッシュメモリサイズでありながら、SSDを実現したことを評価したい。

実測結果

そういった意味では、規格上の上限である5,000MB/秒に対し、シーケンシャルリード3,800MB/秒という数値はちょっと物足りないかもしれない……が、いやいや、外付け機器でここまでの速度が出れば御の字ではないだろうか?

実際に、2TBモデルを利用して、ベンチマークソフト「CrystalDiskMark」で速度を測ってみると、データサイズが「1GiB」(GiB=ギビバイト)の時、シーケンシャルアクセス(SEQ)のリードとライトが約3,197MB/秒と約3,025MB/秒だった。公称値よりも低い結果となったが、この速度なら使用時にストレスを感じることはないだろう。

ディスクユーティリティソフト「CrystalDiskInfo」で表示された内容

ランダムアクセス(RND)については、リードが約324MB/秒でライトが約254MB/秒と、こちらもまずまずといえそうだ。

データサイズを「4GiB」「8GiB」「16GiB」「32GiB」「64GiB」に設定して計測したが、「64GiB」の時に「SEQ1M Q1T1」のリードの値が不自然に下がったものの、全体的な数値でいえば、大きな変化はなかったといえる。

データサイズ8GiB
データサイズ16GiB
データサイズ32GiB

チェック環境

  • PC:ThinkPad X13 Gen2
  • OS:Windows11 Pro 22H2 64bit
  • CPU:Intel Core i3-1115G4
  • メモリ:8GB
  • 接続端子:USB4(Thunderbolt4対応)
  • 利用ソフト:ベンチマークソフト「CrystalDiskMark」
  • 備考:付属のUSB Type-Cケーブルを使用

USB4の実力を発揮させるには

極めて当たり前のことだが、接続先のPCがUSB4(Gen 3×2)または、Thunderbolt 4に対応していなければ、十全にスペックを生かし切れない。

また、Windows PCで同製品をUSB4接続する場合、OSの設定でデバイスの書き込みキャッシュを有効にする必要がある。この設定を行わないと、製品本来の速度が出ない仕様なのだそうだ。ちなみに、Windows PCでのUSB3.2運用および、macOSでの利用では設定は不要。

デバイスの書き込みキャッシュを有効化しなかった場合の結果

設定は、「デバイスマネージャー」の「ディスク ドライブ」にある製品名をダブルクリックし、「ポリシー」の「取り外しポリシー」で「高パフォーマンス」を選び、「書き込みキャッシュ ポリシー」の「デバイスの書き込みキャッシュを有効にする」にチェックを入れる。

Windows PCにUSB4接続する際、本来の速度で利用するためには「デバイス マネージャー」-「ディスク ドライブ」の「BUFFALO SSD-PEU4A」をダブルクリックして設定を行う必要がある
表示されたプロパティでは、「取り外しポリシー」で「高パフォーマンス」を選び、「書き込みキャッシュ ポリシー」で「デバイスの書き込みキャッシュを有効にする」にチェックを入れる

手動での設定が不安なら、同社が提供している「書き込みキャッシュ設定変更ツール」を利用すると、より簡単に設定が可能だ。「有効(高パフォーマンス)」を選択して、「変更する」をクリックし、再起動するだけで設定は完了する。

無料でダウンロードできる「書き込みキャッシュ設定変更ツール」。「有効(高パフォーマンス)」を選び、「変更する」をクリックして再起動するだけで設定は完了する

キャッシュ設定をせずに、付属のUSB4ケーブルで接続した場合(1GiBで比較)、シーケンシャルリードこそ健闘したが、シーケンシャルライトは約3,025MB/秒から約294MB/秒と、まさに桁違いの遅さとなった。

ランダムアクセスも、ライトが約254MB/秒から約5MB/秒と、こちらも大幅に遅くなっている。

さらに、キャッシュ設定をせずに、USB4ケーブルではない「Anker PowerLine III Flow USB-C & USB-C ケーブル」(データ転送速度最大480Mbps)を利用したところ、シーケンシャルリードも大幅に遅くなった。

本製品のポテンシャルを生かすなら、キャッシュ設定&USB4ケーブルは必須だろう。

「Anker PowerLine III Flow USB-C & USB-C ケーブル」で接続した結果

ちなみに、Windows用のファイルコピーソフト「CopyBooster」に対応しており、同ソフトの利用により、ファイルの転送速度はさらに高速化できるという。

取得したS.M.A.R.T.情報を活用して異常を検知する故障予測サービス「みまもり合図」にも対応。実際に壊れた際には、障害レベルに応じた固定料金でデータが復旧できる「バッファロー正規データ復旧サービス」が利用できる。

なお、保証期間内かつ、軽度の論理障害であれば、ユーザー登録を行うことで無料で復旧サービスが受けられるのもポイントだ。

このほか、パターン認証と暗号化方式「AES256bit」に対応した暗号化ソフト「SecureLock Mobile2」や、フォーマットソフト「DiskFormatter2」「DiskFormatter for Mac」、データ消去ソフト「データ消去ユーティリティー」などにも対応する。

なお、書き込みキャッシュを有効にしたことで、速度は確保されたが、その分デバイスを安全に取り外すために、タスクバーに表示された「ハードウェアを安全に取り外してメディアを取り出す」から取り出し操作を行う必要がでてくる。

書き込みキャッシュを有効にしたため、デバイスを安全に取り外すためには、タスクバーに表示された「ハードウェアを安全に取り外してメディアを取り出す」から取り出し操作を行う必要がある。

キャッシュを利用している関係で、不慮の事故でケーブルが抜けてしまった、あるいは停電などの障害によって、データ破損が発生する場合がある。このへんは、従来の外付けHDDなどと扱いは一緒だ。

余談だが、「USB4」には、Gen3×1のシングルレーン(20Gbps)とGen3×2のデュアルレーン(40Gbps)の2つの規格がある。つまり、「USB4ケーブル」には20Gbps対応と40Gbps対応の2種類あることになる。

ややこしくなるが、「USB4 Version 2.0」という80Gbpsのデータ転送を可能とする規格も発表されており、これに合わせて、現在の「USB4」は「USB4 Version 1.0」と称されることになる。正直、市場的に混乱しそうなのが怖い。

単なるストレージの域を超えたデザイン

さて、前置きが長くなったが、本製品の魅力はメカメカしいデザインにあると思う。

昨今流行のUSBタイプのSSDをはじめ、外付けSSD機器においては、発熱対策もしっかりしているし、温度を下げるためにわざと性能を低下させるサーマルスロットリングという機能が搭載され、発熱を原因とする認識エラーや故障などを抑える機能が搭載されている。

発熱対策としては、外装と一体化(あるいは密着)するヒートシンク構造あるいは、強制的に冷却するファンの搭載など、さまざまな対策がある。

本製品は、筐体に金属を採用し、「筐体の開閉によりファンがオン/オフできる」構造を採用。

筐体を閉じていても(つまり、ファンはオフ)動作はするものの、推奨する使い方ではなく、利用する時には筐体を開けるのが基本作法となる。

閉じた状態(ファンオフ)
開けた状態(ファンオン)

強度の事を考えれば開閉機構は不要だし、ファンの動作を推奨するなら強制的にファンを作動させればいい。わざわざ、パカっと本体を開かせる必要はないのだ。

だが、そこがいい。ほんのり光る青色のアクセスランプも悪くない。おそらく、メーカーもこの構造が必要なのか、不要じゃないのかと、やり合ったのは想像に難くない。

本来的には、ポータブルSSDという実用的な製品であるため、遊び心は蛇足だ。しかし、全ての製品が右に倣えで、全て同じようなデザインだとちょっと物足りない。

データ速度が遅い製品であれば、検討外になるだろうが、本製品はUSB4対応製品として十分に利用できるポータブルSSDとなっている。しっかりした下地をもっているからこそ、こういったユニークな製品は応援したい。

欲をいえば、同梱のケーブル(30cm)がやや固めなので、もう少し柔らかくなるか、長さがもうちょっとあると運用しやすくなると思う。

評判の良さそうなUSB4ケーブル(1m)が、およそ2,600円〜4,500円なので、同梱ケーブルももうちょっと頑張ってほしいなぁと。どうでしょう? メーカーさん。

飯塚直

(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。