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速さ自慢のRAW現像ソフト

Corel AfterShot Pro 3

「Corel AfterShot Pro 3」は11月2日にコーレル社から発売された画像管理・RAW現像ソフト。画像の読み込み操作なしで画像の閲覧、セレクト作業、調整などが可能な簡便性と高速な画像変換などを特徴とする。

販売形態はウェブサイトからのダウンロードのみで、販売価格は通常版が税別9,800円。Bibble ProまたはLite 5、Corel AfterShot Pro、Corel Paint Shop Pro Photo X2以降、Adobe Photoshop Lightroom、Apple Apertureからのアップグレード版は税別6,860円となっている。

画像の取り込み〜閲覧〜管理

AfterShot Pro 3は、おおざっぱにはAdobe Photoshop Lightroomなどのようなカタログタイプのソフトウェアで、「ライブラリ」に登録した画像に対して、閲覧や管理、調整作業を行なう。

が、PCに取り込んだ画像をすぐに見たいときなどには、いちいち「ライブラリ」に読み込むひと手間が面倒くさい。その点、AfterShot Pro 3は、カタログタイプのソフトでありながら、「ライブラリ」への読み込み操作なしで画像を閲覧できるところが新しい。

画面左側の「ファイルフォルダー」タブを選ぶと「フォルダービュー」が表示される。この画面で任意のフォルダーをクリックすれば、その中の画像を閲覧できてしまうのだ。しかも、この状態でセレクト作業も行なえる。

こちらは「ライブラリ」内の画像を一覧できる「サムネイルビュー」の画面。

選択した画像を大きく表示する「フィルムストリップ」つきの「標準ビュー」。「フィルムストリップ」は縦横切り替え可能。

1枚の画像を大きく表示できる「画像ビュー」。

左右のパネルを閉じた状態。右側には「R」キー、左側には「L」キーが割り当てられている。

画像の仕分けには、「評価」(「★」から「★★★★★」のレーティング)や「ラベル」(5色のカラータグ)、「フラグ」(セレクトと却下の旗)が利用できる。

また、検索性を高めるのに役立つ「キーワード」の入力もできる。画面右側の「メタデータ」タブの「キーワード」パネルに直接入力するか、「キーワードセット」パネルの候補をクリックすればいい。

設定したキーワードは画面左側の「メタデータブラウザー」の「キーワード」で確認できる。こんなふうにキーワードを選択することで(複数選択可能)、そのキーワードがつけられた画像だけを表示するようにできる。

画像のメタデータを基準に絞り込むことも可能だ。

初期状態では「ライブラリ」内の全画像を対象にした表示となるが、「カタログのリンク」オプションをチェックしておくと、選択しているフォルダー内の画像に対応する項目だけが表示されるようになるので、目当ての画像を探しやすい。

現時点では、Windows版は外部ストレージの画像も閲覧できるが、Mac版ではユーザーフォルダー内の画像しか表示できないという、ちょっと残念な仕様となっている。

輸入代理店に確認したところ、画像を選択して表示する方法を教えていただいた。「ファイル」メニューの「ファイルを開く」から、見たい画像を選択して表示させることで、閲覧やセレクト作業が可能になる。暫定的な対処法ではあるが、これなら外部ストレージに保存してある画像の閲覧のほか、「評価」や「ラベル」付け、画像の調整なども行なえる。

ただし、すでに「ライブラリ」内にある画像を「ファイルフォルダー」モードで編集すると、その画像が表示されなくなる場合があるとのことなので、読み込み済みの画像の調整は「ライブラリ」で行なうように習慣づけるといいだろう。

現像

画像の調整は、画像に直接的に変更を加えない非破壊編集方式。画像の調整は画面右側の「標準」「色」「トーン」「ディテール」の4つのタブで行なう。

「標準」タブには「ヒストグラム」「基本調整」「設定」パネルがある。

「色」タブにあるのは「カーブ」「色補正」「カラーバランス」「ホワイトバランス」「色の管理」のパネル。

「トーン」タブは「露出」パネルのみ。

「ディテール」タブには「シャープニング」「RAWノイズ」「Perfectly clearノイズ除去」「レンズ補正」「左右反転と階調の反転」パネルがある。

基本操作はスライダーを動かす、数値を入力するなど。RAW現像ソフトを使った経験のある人なら、見ただけでだいたいわかるはずだ。

各パネルの右上にあるピンのアイコンをクリックすることで、タブを切り替えたときにも固定表示にできる。よく使うパネルを固定表示にしてまとめておくと効率よく作業ができる。

個人的に注目したいのはレイヤーがあつかえる点。画面全体に影響をおよぼす調整レイヤーとしても使えるし、レイヤー上で範囲選択を行なうことで部分的な調整もできる。覆い焼きや焼き込みといったテクニックはもちろん、主要な部分だけ彩度を上げたりなどの操作も容易だ。

レイヤー機能の例。彩度を落としてモノクロに近い雰囲気にしたが、中央上部から見える背景部分のグリーンがやや目立つ。

調整レイヤー上でその部分を選択して彩度をさらに下げたもの。

Pro 3からは新しく「透かし」機能を装備。画面右側の「透かし」タブで、文字または画像を画像上にレイアウトできる。撮影者や著作権者の名前を入れて不正利用を防いだり、イラストなどを書画の落款のように使って作品を仕上げるなどにも利用できる。

画像に著作権者の名前などを入れられる「透かし」機能も搭載。

「プリセットライブラリ」機能も新しい。「標準」タブの「設定」パネルに、さまざまな画面効果が楽しめるプリセットが用意されている。クリックするだけで「銀残し」「クロス処理」「セピア」といったエフェクトが適用できる。

自分で調整したパラメーターだけをプリセットとして保存しておくこともできる(前述の「透かし」も同様)。調整内容や「透かし」などをプリセットとして保存しておけば、ほかの画像にも簡単に適用できるので便利だ。

そのほか、白飛びを抑える「ハイライトリカバリ」や、小じわなどをきれいにする「シミ修復」などの機能の強化もはかられている。いずれもRAW現像ソフトとしてはポピュラーな機能だが、あると便利な機能が充実してきているのは歓迎できる。

無調整で現像した画像。

「ハイライト」のスライダーをめいっぱい振った状態(数値は「100」)で現像した画像。

こちらはシャドウ部の階調を引き出す「フィルライト」機能。影響する範囲を「フィル範囲」で設定できる。

無調整で現像した画像。

「フィルライト」でシャドウ部のトーンを持ち上げた画像。

まとめ

動画の表示や管理ができない、「レンズ補正」のためのプロファイルがあまり豊富でない(新しいレンズやサードパーティー製品のプロファイルが少ない)など、価格を手ごろに抑えた製品だけに、Lightroomなどの大御所と比べると機能的にはものたりない面もある。

が、RAW現像ソフトとして押さえるべきポイントはきっちり押さえてあるうえに、読み込み操作なしで閲覧や画像管理、調整までカバーできるところは強み。お手ごろ価格のRAW現像ソフトをお探しなら候補に入れていいと思う。

最後にセールスポイントのひとつとなっているスピードについても触れておきたい。画像のブラウジングや拡大縮小などの操作や、調整時のスライダーの動きに対する追従性などは良好で、大半のメーカー純正RAW現像ソフトよりも快適にあつかえる。びっくりするのは画像の書き出しで、キヤノンEOS 80D(2400万画素)のRAW画像140枚を最高画質のJPEGで出力するのに要した時間はLightroomでは9分22秒ほどだったのが、AfterShot Pro 3では4分20秒ほどと、素晴らしい速さを見せてくれた(2.6GHz Intel Core i5、16GBメモリーのMac mini、macOS Sierraで計測)。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら