気になる(国産カメラメーカーブランド以外の)現像ソフトレビュー
伝統の「DxO光学モジュール」が秀逸!DxO OpticsPro 11を試す
ノイズ低減処理もクオリティ高し
2016年8月10日 08:00
カメラメーカー以外の著名現像ソフトを試用する本連載。まず最初は、通好みのDxO OpticsPro 11をチェックしてみよう。
DxO OpticsPro 11(以下、DxO OpticsPro)は、カメラとレンズを組み合わせた特性にマッチした「DxO光学モジュール」によって最適な補正を行なう方式を古くから採用しているRAW現像ソフトだ。
ベーシックな機能を持つESSENTIAL版が1万2,900円(ダウンロード版、税込み)、もややスモッグを除去できるDxO ClearView、モワレ補正、カラーレンダリングなどの機能も備えたELITE版は19,900円(同)。パースペクティブの矯正を行なうDxO ViewPoint 2(9,900円)、銀塩フィルムライクなエフェクトがえられるDxO FilmPack 5(ESSENTIAL:9,900円、ELITE:14,900円)を、プラグインソフトとして活用できる。
試用環境
Mac mini(Late 2014)
CPU:2.6GHz Intel Core i5
メモリ:16GB(1600MHz DDR3)
ストレージ:1TB Fusion Drive(内蔵)、4TB HDD(外部・画像保管用、USB 3.0接続)
基本操作
起動はゆっくりめで、ウィンドウが開くまでに8秒ほど、画像が表示されるまでに10秒ほどかかる。ほかのRAW現像ソフトに比べるとやや遅いが、我慢できる範囲ではある。
初期設定の状態では、選択したフォルダー内の画像を一覧できる「画像ブラウザ」がウィンドウ下部にドックされているが、1,920×1,200ピクセル表示の画面では8コマ半しか表示できない。
「画像ブラウザ」をアンドックして別ウィンドウにすると表示できる画像の数はぐっと増えるが、フォルダーを選択する操作はメインのウィンドウ側で行なわないといけないのであまり便利ではない。マルチモニター環境であればほぼ問題はないが、慣れるまでシングルモニター環境では、他のソフトより煩雑に感じるかもしれない。
画像を1枚だけ表示したときの「補正のプレビュー」という表示が消えるまでの時間は、画像によって4秒から8秒ほど。画像をダブルクリックするとその位置を中心にピクセル等倍表示に切り替わる(再度ダブルクリックすると画像全体の表示にもどる)。
ピクセル等倍表示用のプレビューイメージを生成するのにも4秒前後かかり、スライダーをドラッグ操作したときも同じぐらい時間がかかる。
画像の調整は「設定」タブで行なう。画面右側のエリアに各種「補正パレット」が並び、その中にさまざまなツールがある。
各パレットの内容は好みなどに合わせて自由にカスタマイズできるのは便利な点だ。実体のない「バーチャルコピー」の作成や、さまざまなエフェクトを楽しめる「プリセット」を適用したりもできる。
なお、調整内容を記述した「.dop」ファイルが画像と同じフォルダー内に保存されるので、画像ファイルを移動したり、リネームする際には注意する。
作例
解像力
「アンシャープマスク」は初期設定ではオフになっていて、そのままでは解像感は低めの仕上がりとなる。「強さ」「半径」「しきい値」のほか、「エッジオフセット」という項目がある。これは画面周辺部の効果を高くするパラメーターで、周辺部のアマさが気になるときに利用するといい。
歪曲、周辺光量
歪曲収差と周辺光量は「DxO光学モジュール」によって自動的に補正される。それぞれオフにしたり、補正の度合いを弱めたりもできる。
なお、「DxO光学モジュール」は、画像に応じて対応するものをダウンロードして組み込むようになっていて、新しいモジュールが必要になったときに自動的にダウンロードをうながすダイアログが表示される。
高感度ノイズ低減
「ノイズ除去」は「輝度ノイズ」の初期設定値が「40」、処理アルゴリズムは「高画質)」が選択されている。「PRIME」に切り替えるとより高度なノイズ低減処理が行なわれるが、ファイル出力時の処理時間が大幅に長くなるので注意したい(掲載した6つの画像を出力するのに「高画質)」では2分15秒だったのが、「PRIME」では8分6秒もかかった)。
ただし、その効果は素晴らしく、ほかの3本の仕上がりと比べてもかなりの違いがある。大量に現像する際にはつらい思いをするだろうが、待つ甲斐のある仕上がりだと思う。
ハイライト・シャドウ補正
白飛びや黒つぶれの軽減には「選択的トーン補正」の「ハイライト」「シャドウ」を利用する。ここでは「ハイライト」を「−100」、「シャドウ」を「50」にしたものを掲載する。
この設定では若干白飛びは残っているものの、階調がない部分はとても狭いうえに、階調がある部分とも滑らかにつながってくれていて好感の持てる仕上がりだ。また、暗い部分は「ノイズ除去」を「PRIME」で処理したため、無理やり持ち上げているにもかかわらず、ノイズはまったく感じられない。
特徴的な機能
いちばんの特徴は、カメラだけ、レンズだけではなく、カメラとレンズの組み合わせに対して最適な補正が行なえる「DxO光学モジュール」だ。同じレンズでもボディが違えば特性も微妙に違ってくるのだから、この考え方は理にかなっている。
その代わり、3万にもおよぶカメラとレンズの組み合わせに対応する「DxO光学モジュール」が必要になってしまうわけだが、それを全部組み込んでしまうと大変なことになるので、必要な分だけダウンロードするシステムが採用されている。選択したフォルダー内の画像に対応する「DxO光学モジュール」がない場合には、その画像を読み込んだ時点で自動的にその項目だけをダウンロードできる。無駄がなくていい。
お気に入りの度合いをしめす「レーティング」は「0」から「5」のショートカットキーで素早くマークできる。処理を行なうかどうかを緑または赤でマークする「処理タグ設定」も備えている(こちらはショートカットキーはない)。
強烈な色表現を楽しめる「マルチポイント カラーバランス」といったユニークな機能を持つ一方、Lightroomの「段階フィルター」「円形フィルター」「補正ブラシ」のような部分的な補正を行なうツールはない。
おもな非対応機種
膨大な数の「DxO光学モジュール」が必要となる関係で、新しい機種への対応は遅めにならざるをえないようだ。原稿執筆時点ではパナソニックLUMIX GX7 Mark II、PENTAX K-70が未対応の状態だった。
また、シグマと富士フイルムはほぼ全滅(FinePix S5 Pro、S3 ProはOK)。ペンタックスQシリーズ、Nikon 1 Sシリーズにも対応していない。該当機種のユーザーは、まずデモ版を入手して確認することをおすすめする。
まとめ
「DxO光学モジュール」による自動補正機能は魅力的だし、「PRIME」アルゴリズムによるノイズ低減能力は一見の価値がある。また、かすみやスモッグなどを低減できる「DxO ClearView」、部分的なコントラスト調整によって明瞭感を出す「マイクロコントラスト」といった新機能も役に立つ。
気になるのは動作がややゆっくりめなのと、新機種への対応状況といったところ。
発売当初のキャンペーン版(税込み1万4,900円)を在庫しているショップが残っているようなので、購入希望なら探してみるといいだろう。
機能対応表
ソフト名 | DxO OpticsPro 11 ELITE |
バージョン | 11.1.0 |
販売形態 | パッケージ/ダウンロード |
税別価格 | 14,900円/19,900円(税込み) |
対応OS | Mac/Win |
閲覧時表示モード | 画像ブラウザ/設定タブ |
レーティング | ● |
カラーラベル | − |
フラグ | 処理可能/非処理 |
顔認識 | − |
キーワード | − |
場所 | − |
マップ表示 | − |
タイトル/キャプション | − |
JPEG画像の調整 | ● |
カメラプロファイル(仕上がり) | − |
調整内容のコピー/ペースト | ● |
調整内容の保存 | 新規プリセット |
ホワイトバランス/オート | − |
ホワイトバランス/プリセット | 6種 |
ホワイトバランス/スライダー | 色温度/色相 |
ホワイトバランス/クリック | ● |
ホワイトバランス/肌色指定 | − |
露出補正 | ±4、0.01ステップ |
コントラスト調整 | ● |
白飛び軽減 | ハイライト/DxO Smart Lighting |
黒つぶれ軽減 | シャドウ/DxO Smart Lighting |
部分的な階調補正 | ハイライト/中間トーン/シャドウ/ブラック |
明瞭度 | ● |
彩度 | 自然な彩度/彩度 |
トーンカーブ | ● |
個別色補正 | 色相/彩度/明度(6色) |
シャープの種類 | アンシャープマスク |
シャープのパラメーター | 強さ/半径/しきい値/エッジオフセット |
ノイズ軽減のパラメーター | 輝度ノイズ |
レンズプロファイル対応 | ● |
歪曲収差補正 | DxO光学モジュールによる自動 |
周辺光量補正 | DxO光学モジュールによる自動 |
色収差補正 | 自動 |
フリンジ軽減 | パープルフリンジ |
パースペクティブ補正 | −(プラグインが必要) |
ヴィネット効果 | − |
粒子効果 | −(プラグインが必要) |
かすみの除去 | ● |
操作の取り消し/やり直し | ● |
調整履歴 | − |
仮想コピー | ● |
外部エディター連携 | ● |
切り抜き(トリミング) | ● |
アスペクト比変更 | ● |
ダスト修正 | ダスト除去 |
赤目軽減 | ● |
部分補正機能 | − |
現像プリセット | ● |
調整前後の比較 | ● |