気になる(国産カメラメーカーブランド以外の)現像ソフトレビュー

伝統の「DxO光学モジュール」が秀逸!DxO OpticsPro 11を試す

ノイズ低減処理もクオリティ高し

カメラメーカー以外の著名現像ソフトを試用する本連載。まず最初は、通好みのDxO OpticsPro 11をチェックしてみよう。

DxO OpticsPro 11(以下、DxO OpticsPro)は、カメラとレンズを組み合わせた特性にマッチした「DxO光学モジュール」によって最適な補正を行なう方式を古くから採用しているRAW現像ソフトだ。

ベーシックな機能を持つESSENTIAL版が1万2,900円(ダウンロード版、税込み)、もややスモッグを除去できるDxO ClearView、モワレ補正、カラーレンダリングなどの機能も備えたELITE版は19,900円(同)。パースペクティブの矯正を行なうDxO ViewPoint 2(9,900円)、銀塩フィルムライクなエフェクトがえられるDxO FilmPack 5(ESSENTIAL:9,900円、ELITE:14,900円)を、プラグインソフトとして活用できる。

試用環境

Mac mini(Late 2014)
CPU:2.6GHz Intel Core i5
メモリ:16GB(1600MHz DDR3)
ストレージ:1TB Fusion Drive(内蔵)、4TB HDD(外部・画像保管用、USB 3.0接続)

基本操作

起動はゆっくりめで、ウィンドウが開くまでに8秒ほど、画像が表示されるまでに10秒ほどかかる。ほかのRAW現像ソフトに比べるとやや遅いが、我慢できる範囲ではある。

「設定」タブの画面。右側に補正パレットが表示される。

初期設定の状態では、選択したフォルダー内の画像を一覧できる「画像ブラウザ」がウィンドウ下部にドックされているが、1,920×1,200ピクセル表示の画面では8コマ半しか表示できない。

「画像ブラウザ」をアンドックして別ウィンドウにすると表示できる画像の数はぐっと増えるが、フォルダーを選択する操作はメインのウィンドウ側で行なわないといけないのであまり便利ではない。マルチモニター環境であればほぼ問題はないが、慣れるまでシングルモニター環境では、他のソフトより煩雑に感じるかもしれない。

「画像ブラウザ」をアンドックして画面いっぱいに広げたところ。このウィンドウにフォルダーツリーがくっついていたら、もう少し操作しやすくなるんじゃないかと思う。

画像を1枚だけ表示したときの「補正のプレビュー」という表示が消えるまでの時間は、画像によって4秒から8秒ほど。画像をダブルクリックするとその位置を中心にピクセル等倍表示に切り替わる(再度ダブルクリックすると画像全体の表示にもどる)。

ピクセル等倍表示用のプレビューイメージを生成するのにも4秒前後かかり、スライダーをドラッグ操作したときも同じぐらい時間がかかる。

画像の調整は「設定」タブで行なう。画面右側のエリアに各種「補正パレット」が並び、その中にさまざまなツールがある。

各パレットの内容は好みなどに合わせて自由にカスタマイズできるのは便利な点だ。実体のない「バーチャルコピー」の作成や、さまざまなエフェクトを楽しめる「プリセット」を適用したりもできる。

なお、調整内容を記述した「.dop」ファイルが画像と同じフォルダー内に保存されるので、画像ファイルを移動したり、リネームする際には注意する。

補正パレットの右上をクリックすると表示されるメニュー。ここで選択した補正パレットに入れる項目を選択できる。もちろん、新しい補正パレットをつくったり、既存の補正パレットを消したりもできる。
調整前後を並べて見比べることもできる。

作例

解像力

「アンシャープマスク」は初期設定ではオフになっていて、そのままでは解像感は低めの仕上がりとなる。「強さ」「半径」「しきい値」のほか、「エッジオフセット」という項目がある。これは画面周辺部の効果を高くするパラメーターで、周辺部のアマさが気になるときに利用するといい。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF50mm F1.8 STM / 1/40秒 / F5.6 / ISO 100 / 50mm
DxO OpticsPro 11で現像(自動調整)

歪曲、周辺光量

歪曲収差と周辺光量は「DxO光学モジュール」によって自動的に補正される。それぞれオフにしたり、補正の度合いを弱めたりもできる。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF50mm F1.8 STM / 1/40秒 / F5.6 / ISO 100 / 50mm
DxO OpticsPro 11で現像(自動調整)

なお、「DxO光学モジュール」は、画像に応じて対応するものをダウンロードして組み込むようになっていて、新しいモジュールが必要になったときに自動的にダウンロードをうながすダイアログが表示される。

色収差

倍率色収差の補正も初期設定で自動になっている。「パープルフリンジ」補正のオプションもある。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)E-P5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 / 1/2,500秒 / F4 / ISO 400 / 9mm
DxO OpticsPro 11で現像(自動調整)

発色

今回試用したRAW現像ソフトの中ではもっとも同時記録のJPEG画像に近い仕上がり。見比べるとややコントラストが高く、白や肌色が明るめに再現される。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)D610 / SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM / 1秒 / F22 / ISO 100 / 150mm
DxO OpticsPro 11で現像(自動調整)

高感度ノイズ低減

「ノイズ除去」は「輝度ノイズ」の初期設定値が「40」、処理アルゴリズムは「高画質)」が選択されている。「PRIME」に切り替えるとより高度なノイズ低減処理が行なわれるが、ファイル出力時の処理時間が大幅に長くなるので注意したい(掲載した6つの画像を出力するのに「高画質)」では2分15秒だったのが、「PRIME」では8分6秒もかかった)。

ただし、その効果は素晴らしく、ほかの3本の仕上がりと比べてもかなりの違いがある。大量に現像する際にはつらい思いをするだろうが、待つ甲斐のある仕上がりだと思う。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM / 1/100秒 / F5.6 / ISO 6400 / 220mm
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ0 高画質・高速)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ0 PRIME)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ25 高画質・高速)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ25 PRIME)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ40 高画質・高速)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ40 PRIME)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ50 高画質・高速)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ50 PRIME)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ75 高画質・高速)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ75 PRIME)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ100 高画質・高速)
DxO OpticsPro 11で現像(輝度ノイズ100 PRIME)

ハイライト・シャドウ補正

白飛びや黒つぶれの軽減には「選択的トーン補正」の「ハイライト」「シャドウ」を利用する。ここでは「ハイライト」を「−100」、「シャドウ」を「50」にしたものを掲載する。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM / 1/80秒 / F8 / ISO 100 / 250mm
DxO OpticsPro 11で現像(ハイライト-100 シャドウ50 PRIME)

この設定では若干白飛びは残っているものの、階調がない部分はとても狭いうえに、階調がある部分とも滑らかにつながってくれていて好感の持てる仕上がりだ。また、暗い部分は「ノイズ除去」を「PRIME」で処理したため、無理やり持ち上げているにもかかわらず、ノイズはまったく感じられない。

ホワイトバランス

ホワイトバランスはプリセットが6種類でオートはない。「ソースの色を選択」ツールでグレー点をクリックすることもできる。また、細かい調整は「色温度」と「色相」のスライダーで行なえる。ここでは「撮影時設定」のまま出力した画像を掲載する。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)LUMIX GH4 / LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. / 1/15秒 / F2.5 / ISO 800 / 15mm
DxO OpticsPro 11で現像(無調整)

特徴的な機能

いちばんの特徴は、カメラだけ、レンズだけではなく、カメラとレンズの組み合わせに対して最適な補正が行なえる「DxO光学モジュール」だ。同じレンズでもボディが違えば特性も微妙に違ってくるのだから、この考え方は理にかなっている。

その代わり、3万にもおよぶカメラとレンズの組み合わせに対応する「DxO光学モジュール」が必要になってしまうわけだが、それを全部組み込んでしまうと大変なことになるので、必要な分だけダウンロードするシステムが採用されている。選択したフォルダー内の画像に対応する「DxO光学モジュール」がない場合には、その画像を読み込んだ時点で自動的にその項目だけをダウンロードできる。無駄がなくていい。

お気に入りの度合いをしめす「レーティング」は「0」から「5」のショートカットキーで素早くマークできる。処理を行なうかどうかを緑または赤でマークする「処理タグ設定」も備えている(こちらはショートカットキーはない)。

強烈な色表現を楽しめる「マルチポイント カラーバランス」といったユニークな機能を持つ一方、Lightroomの「段階フィルター」「円形フィルター」「補正ブラシ」のような部分的な補正を行なうツールはない。

選択した部分の色相や彩度を変えて強烈な色表現が楽しめる「マルチポイント カラーバランス」を備えている。
補正パレットの各項目の右上にある小さな「?」マークをクリックすると、その項目の説明が表示される。こういう親切はうれしい。

おもな非対応機種

膨大な数の「DxO光学モジュール」が必要となる関係で、新しい機種への対応は遅めにならざるをえないようだ。原稿執筆時点ではパナソニックLUMIX GX7 Mark II、PENTAX K-70が未対応の状態だった。

また、シグマと富士フイルムはほぼ全滅(FinePix S5 Pro、S3 ProはOK)。ペンタックスQシリーズ、Nikon 1 Sシリーズにも対応していない。該当機種のユーザーは、まずデモ版を入手して確認することをおすすめする。

まとめ

「DxO光学モジュール」による自動補正機能は魅力的だし、「PRIME」アルゴリズムによるノイズ低減能力は一見の価値がある。また、かすみやスモッグなどを低減できる「DxO ClearView」、部分的なコントラスト調整によって明瞭感を出す「マイクロコントラスト」といった新機能も役に立つ。

気になるのは動作がややゆっくりめなのと、新機種への対応状況といったところ。

発売当初のキャンペーン版(税込み1万4,900円)を在庫しているショップが残っているようなので、購入希望なら探してみるといいだろう。

機能対応表

ソフト名DxO OpticsPro 11 ELITE
バージョン11.1.0
販売形態パッケージ/ダウンロード
税別価格14,900円/19,900円(税込み)
対応OSMac/Win
閲覧時表示モード画像ブラウザ/設定タブ
レーティング
カラーラベル
フラグ処理可能/非処理
顔認識
キーワード
場所
マップ表示
タイトル/キャプション
JPEG画像の調整
カメラプロファイル(仕上がり)
調整内容のコピー/ペースト
調整内容の保存新規プリセット
ホワイトバランス/オート
ホワイトバランス/プリセット6種
ホワイトバランス/スライダー色温度/色相
ホワイトバランス/クリック
ホワイトバランス/肌色指定
露出補正±4、0.01ステップ
コントラスト調整
白飛び軽減ハイライト/DxO Smart Lighting
黒つぶれ軽減シャドウ/DxO Smart Lighting
部分的な階調補正ハイライト/中間トーン/シャドウ/ブラック
明瞭度
彩度自然な彩度/彩度
トーンカーブ
個別色補正色相/彩度/明度(6色)
シャープの種類アンシャープマスク
シャープのパラメーター強さ/半径/しきい値/エッジオフセット
ノイズ軽減のパラメーター輝度ノイズ
レンズプロファイル対応
歪曲収差補正DxO光学モジュールによる自動
周辺光量補正DxO光学モジュールによる自動
色収差補正自動
フリンジ軽減パープルフリンジ
パースペクティブ補正−(プラグインが必要)
ヴィネット効果
粒子効果−(プラグインが必要)
かすみの除去
操作の取り消し/やり直し
調整履歴
仮想コピー
外部エディター連携
切り抜き(トリミング)
アスペクト比変更
ダスト修正ダスト除去
赤目軽減
部分補正機能
現像プリセット
調整前後の比較

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら