デジカメアイテム丼
Wi-Fi非搭載の一眼レフをスマホからコントロール!
ゼスティーシステムズ「Pinout」
2016年9月14日 07:00
今回はゼスティーシステムズから登場したアクセサリー、Pinoutをご紹介したいと思う。Pinoutはスマートフォンの専用アプリを使用して、Pinout本体を装着したデジタルカメラを操作することができる通信ユニットである。
ニコンから発売されているワイヤレスモバイルアダプターWU-1a/WU-1bや、最近ではPinoutと同じくBluetoothを利用してスマートフォンやタブレットとの常時接続を可能にしたSnapBridgeといった機能を搭載したモデルが登場している。
一方Pinoutは画像転送機能こそないものの、多彩なレリーズ方式に加え、SnapBridgeやWU-1a/WU-1bにはない「損失/窃盗防止機能」や設定した距離を移動する度にレリーズを行う「ディスタンスラプス」(ProKit、Full Kitのみ)といった非常にユニークな機能も搭載しているのが特徴となっている。
またニコンD2シリーズの様なWi-Fi機能を搭載していないボディまで幅広く対応していることもPinoutの魅力と言えるだろう。
Pinoutの対応OSはiOS9.0以降、もしくはAndroid 4.4/5.0/6.0以降となっており、Bluetooth Low Energyをサポートしている必要がある。
ニコン製のカメラに対応しており、機種に応じてType AとType Bがある。
対応機種は、Type AがD5、D4S、D4、D3X、D3S、D3、D2XS、D2X、D2HS、D2H、D810A、D810、D800E、D800、D700、D500、D300S、D300、D200、FUJIFILM S5 Proに対応。
Type BはDf、D750、D610、D600、D7200、D7100、D7000、D90、D5500、D5300、D5200、D5100、D5000、D3300、D3200、D3100、COOLPIX A、COOLPIX P7800、COOLPIX P7700となっている。
またPinoutは、「Basic Kit」「Pro Kit」「Full Kit」と呼ばれる機能の異なる3機種がラインナップされている。
それぞれのモデルの違いであるが、まず「Basic Kit」に搭載されているのが「盗難/紛失防止」、「シンプルリリース」、「長時間露出」、「カウントダウンリリース」の4つの機能となっている。
「Pro Kit」には「Basic Kit」の機能に「タイムラプス」「ディスタンスラプス」「スタートレイル」「ジオタグ」「ジオログ」の5つの機能を加えた9機能。
「Full Kit」ではさらに、「Pro Kit」に「バルブランピング」「HDR」「HDRタイムラプス」「複数カメラコントロール」を加えた13機能が利用できる。
導入は簡単
Pinoutの導入方法だが特に難しい部分はない。まずはスマートフォンでPinoutの保証書に書かれたQRコードにアクセスし、Pinoutのアプリをインストール。カメラにPinout本体を接続し、スマートフォンのBluetoothをオンにすればPinoutを認識するので接続する。その際特にパスワードやIDなどを入力する必要はない。
Pinoutのアプリを起動すると初回はログイン画面が出てくるので新規登録するか、Facebookのアカウントを持っていればFacebookのアカウントでもログインすることができる。
次回以降はスマートフォンのBluetoothさえオンになっていれば、Pinoutのアプリを起動するだけで構わない。Pinoutを使用する際、フルに機能を使いたいのであれば、スマートフォン側でPinoutアプリの通知機能や位置情報の利用などを許可しておこう。
音に反応してシャッターを切る機能も
では各機能を紹介していきたいと思う。先にお断りしておかなければならないのだが、Pinoutには取り扱い説明書が付属しておらず、アプリに関しても日本語化されていない部分がある。
また日本語化されている部分も翻訳間違いが散見されるものの、とりあえずこのレビュー中はアプリに表示されている言葉をなるべくそのままで書かせて頂きたいと思う。
また今回実際に使用したのは「Full Kit」であるため、「Basic Kit」や「Pro Kit」には搭載されていない機能も含まれる。
Pinout全てのKitに共通する盗難/紛失機能は、「敏感」「ディフォルト」「無効」の3つから選択できる。「敏感」はカメラとスマートフォンのBluetoothリンクが切れた場合やカメラとスマートフォンの距離が30m以上離れた場合にスマートフォン側にメッセージと音によって警告が行われる。
「ディフォルト」を選ぶとカメラとスマートフォンのBluetoothリンクが切れた場合にメッセージと音が出る。ただ、Bluetooth自体がそれほど遠距離まで届くものではないため、「敏感」「ディフォルト」どちらを選んだ場合にも10m程度離れるとBluetoothのリンクが切断され、警告メッセージと警告音が出た。盗難や紛失に役立つ機能ではあるが、煩わしいという方は「無効」にすることもできる。この盗難防止機能はBluetooth Low Energyに対応しているため、カメラ側の電源がオフになっている場合にも、待機電力で動作するようになっている。
シンプルリリース(Simple Release)
「シンプルリリース」は、アプリのS(シャッター)ボタンをタップするとカメラ側のフォーカス後シャッターが切れるシンプルなレリーズ機能となっている。
スマートフォンで拾った音に反応してシャッターを切ることもできるため、パーティー会場などで笑いや拍手が起きた際に自動でシャッターを切ることもできる。またこの際反応する音量を設定することも可能。また、設定メニューの「シェックしてシャッター」をオンにしておくと、カメラを振る動作(シェイク)でシャッターを切ることもできる。
長時間露出(Long Exposure)
長秒露光に対応したモードで、カメラ側をバルブモードに設定し、アプリのS(シャッターボタン)をタップすると露光開始、Stopボタンをダブルタップするとシャッターが閉じる。
カウントダウンリリース(Timed Release)
カメラ側がバルブモードの際動作するモードで、S(シャッターボタン)を押すと設定した秒数を露光後、自動的にシャッターが閉じて露光を終了する。カウントダウンと言ってもセルフタイマーとは異なる。
タイムラプス(Time-lapse)
「撮影枚数」「撮影間隔」「撮影開始日時」を設定しインターバル撮影を行う。これだけでタイムラプス動画が記録されるわけではないが、タイムラプスの素材画像を撮る際には重宝するだろう。
ディスタンス ラプス(Distance Lapse)
スマートフォンのGPSによる位置情報を得て「設定した距離を移動するたびにシャッターが切れる」という面白いモードとなっている。車載動画などでタイムラプス撮影を行う際などに活用できる。設定可能な移動距離は10m以上となっている。
ジオ タグ(Geo Tagging)
スマートフォンのGPS機能を利用して、撮影データに位置情報を付与させることができる。
また地図上の赤いピンをドラッグすることで位置情報を修正して記録することもできるため、例えば「東京から望遠レンズで富士山を撮影した」というような場合でも、富士山の場所にピンを移動して記録することもできるようになっている。
ジオ ログ(Geo Logging)
撮影した場所を自動的に記録し、アプリの地図上でマッピングすることができる。ただ実際に使用してみたところ、屋外でも途切れてしまうことが多く、また同じルートを再度通った際にルート表示が消えてしまったりと今回はうまく動作してくれなかったのが残念だった。
バルブ ランピング(Bulb Ramping)
開始時と終了時の露光時間、撮影枚数などを設定することで、露光時間を段階的にシフトさせながらインターバル撮影することができるモード。夕暮れ時など刻々と明るさが変わっていく場合の撮影などに使用すると良いだろう。カメラ側をバルブモードに設定した場合のみ有効。
HDR(LE HDR)
撮影枚数や露出幅を指定し、アプリのSボタンを1度押すだけで露出の異なる複数枚の写真を撮影することができる。
画像レタッチソフトでHDR画像を生成する場合などにも使えるが、自動的にHDR画像が生成されるわけではないので、HDRというよりはブラケット撮影という方が近いだろう。カメラ側をバルブモードに設定した場合のみ有効。
HDR タイムラプス(LE HDR Time-lapse)
露出幅を変えての3枚の撮影を1セットとしながらインターバル撮影を行う機能。
後からHDR合成を行いタイムラプス動画を作成するための素材となる画像を撮影するのに適したモードとなっている。カメラ側をバルブモードに設定した場合のみ有効。
まとめ
「HDR」や「タイムラプス」といっても、自動でそれらを仕上げてくれるわけではなく、あくまでもその素材となる画像を撮影するモードとなる。
しかし、Pinoutは小さくて軽い本体と専用アプリのみという気軽さで、さまざまなシャッターの切り方などをコントロールでき、未知の可能性を秘めたアクセサリーだ。いろいろ試してみて、自分だけの新たな使い方を見つけて欲しい。
また、常時接続を可能にするBluetooth Low Energyを利用した盗難/紛失防止機能は、カメラ用アクセサリーとしてはユニークなものとなっている。Pinoutの対応機種は現在のところニコン機の一部となっているが、他メーカー用の登場にも期待したい。