吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

19品目:動画撮影に必携の“3 in 1フィルターシステム”

H&Y「REVORING Vari ND3-ND1000 CPL」

この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

REVORING Vari ND3-ND1000 CPL

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★★

複数のフィルターを持ち歩くのは大変

写真の世界では、カメラがデジタルになってから光学的なフィルターの出番はグッと減った。色調節的なフィルターのほとんどが、デジタルでの後処理でその効果を賄えるようになったからだ。

だが、動画の世界ではフィルター、特に「NDフィルター」は必須だと考えられている。これの理由は動画の場合、シャッター速度の実用可変幅が写真よりも狭いためだと考えられる。基本的には秒間コマ数(フレームレート)の倍のシャッター速度を設定し、それより遅いシャッター速度では動きがモヤっとしてしまいがちになるし、速いシャッター速度ではパラパラ漫画のように、動きがコマ落としっぽくなりがちだからだ。

そこで色は変えずに明るさだけを、具体的にはフィルターを通った光の量を抑えるNDフィルターが使われる、というわけだ。

NDフィルターはその光量によってND4/8/16/32……、といったように使いたい光量に合わせて幾つか用意されていて、これをその都度付け替えて使うもの。これはワンオペで撮影したい場合などに荷物も多くなるし、とにかく面倒。

そこで最近は2枚のフィルターを組み合わせてあり、その片方の角度を回転することで明るさが連続的に変えられる「バリアブルNDフィルター」が重宝されるようになった。

バリアブルになったことで、これまで数枚は持ち歩く必要があったNDフィルターが1枚で済むようになった! と言いたいところだが、そうもうまくはいかない。ミラーレスカメラで動画を撮る人の多くはレンズを交換するはずだが、そのフィルター取り付け部の直径はレンズによりさまざま。

REVORINGをレンズに装着するところ。きゅっと捻って手を離せばすぐに装着可能。(※動作がわかりやすいように別製品であるREVORINGの可変式ステップリングでの説明映像です)

この仕掛けによって、フィルター径φ67~82mmまで対応。ほかに製品のバリエーションとしては以下の5タイプがあり、使っているレンズの大きさに合わせて最適なものがチョイスできる。

  • REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 37-49mm
  • REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 46-62mm
  • REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 58-77mm
  • REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 67-82mm
  • REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 82-95mm

NDとC-PL――2つの効果を兼ね備える

このフィルター枠には銀色の2本のつまみが用意されていることに気が付いたであろうか?

このうち、前面のつまみを回すと明るさが連続的に変えられる。そして、後面のつまみを回すと明るさはそのままに、C-PLフィルターとして偏光の具合が変えられるのだ。

偏光(PL)フィルターというと、ガラスや水面の反射を抑えるために使うのがよく知られているが、それ以外でも風景を撮影する人には是非とも試してほしいフィルターである。主に順光状態での撮影時に違いがわかりやすいのだが、植物の緑がどうにも白茶けて写ってしまう時など、このPL効果を見ながらフィルターを回転させてやると発色の深みが大きく変わってくる。

晴天の撮影。C-PL効果の最大値と最小値で緑の発色を中心に、色の深みがまったく変わってくることが実感できる。

ND 3~ND 1000までという10段相当の可変幅を持つバリアブルNDフィルターとC-PLフィルター、そして様々なレンズにワンタッチで着脱可能な可変式ステップリングの3つの機能がひとつにまとまった便利な製品。これまでフィルターというと、持ち運びも運用も本当に面倒だったことを考えるとこの使い勝手の良さには驚かされるばかり。

だが、僕がこのシステムを1年ほど使い込んで実感しているのはその性能の高さ。多くのフィルターは取り付けるだけで色の変化が激しかったり、解像感の劣化が多かったりするものだ。しかしこのフィルターは、発色や解像感への影響が数あるフィルター製品の中でもトップレベルに抑えられている。

さらにちょっとした汚れや指紋などがマイクロファイバークロスで綺麗に拭えて、静電気も少ないのか埃の付着もブロワーのエアで簡単に吹き飛ばせる。メインテナンスのしやすさや画質性能でも満足のいく製品だと自信を持ってお勧めできる。とにかく必携のフィルターとして是非試してみて欲しい。

※次回は姉妹製品のフィルターシステムを紹介!

吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。