吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

10品目:写真用三脚で動画撮影を…レベリングベース付きハーフボール雲台

SmallRig「CH20 4170」

一眼レフ、ミラーレスを問わず、最近のカメラにはもれなくと言っていいほど備わっているのが「動画撮影機能」。写真撮影については一家言あるけれども、動画についてはまだ未知の領域……、という読者も多いはず。
この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

今回紹介するのは、動画撮影に対応した小型雲台。主にカメラリグで定評を得ている中国SmallRigの製品だ。直販価格は税込1万290円。

SmallRig「CH20 4170」

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★

雲台だけ取り替えられたら…

本連載の“9品目”では軽量のトラベル動画三脚を紹介したが、この記事の読者の大半と思われる写真ファンならば、すでにお気に入りのスチル用三脚を持っている場合が多いだろう。いくつもの三脚を持ち歩くより、お気に入りの三脚を1本持ち、雲台だけを付け替えることで写真にも動画撮影にも使えたら便利ではないだろうか? そんな使いこなしにピッタリと思われる小型の雲台が今回紹介する「4170」だ。

4170を、手持ちのGitzo 1型カーボン三脚に取り付けてみた。三脚の雲台取り付けベースの大きさからみても、かなり小型の雲台であることがわかるだろう

手にしてみると、本製品がとてもコンパクトであることがわかる。カタログ上での重量もわずか350g。ほとんどの三脚布ケースについているポケット部にも収納しやすいだろう。三脚との取り付け部分は3/8インチの太ネジ仕様。ただし、1/4インチの小ネジ変換アダプターが同梱されているので、多くの三脚に対応する。

外観はシルバーと黒のツートンカラー仕上げ。どちらも美しい艶消し仕上げで、シルバーの部分はうっすらと青みを帯びた色調になっている。

嬉しいのはレベリングベースを内蔵していること。センターポール式の写真用三脚につけても水平出しがさっとできる。写真用三脚での水平は3Way雲台などで左右の傾きだけを調整すればいいのだが、パン(動画撮影しながらカメラを左右に動かす動作)しても常に水平を保つためには前後左右ともにパン軸の完璧な水平出しが必要。

これを3本の脚の長さ調整で行うのは困難であるため、素早く調整可能な球体関節状のレベリングベースがパン軸の下に装備されているというわけだ。この手の製品としては調整範囲が±10°と比較的広く、不整地などに三脚を設置する場合でもあっという間に水平出しが可能となる。

ティルト可動部の左下に黄緑色の水準器を装備。プロ用雲台のように水準器照明こそ内蔵されていないものの、見やすい位置に装備されている。ちなみに、雲台最上部には六角レンチが隠し収納されており(横一文字の銀色の部分)、クイックリリースプレートのカメラへの取り付けなどがしっかりと行える

カメラ取り付け部はアルカスイス互換のクイックシュー仕様で、ねじ止め式となっている。付属のクイックリリースプレートはカメラ取り付けネジ位置と合わせ、前後に約32mm動かせるので、この範囲でカメラの重心ができるだけバランスするように装着する。

付属のアルカスイス互換クイックリリースプレートの裏面。カメラ取り付けネジは指でも回せる収納式のつまみと、コインで回せる切り込みつき。上下に滑落防止ピンを備え、カメラ取り付け位置と、雲台への取り付け部のスライドでカメラ重心位置に合わせられるよう前後に約32mmのスライドが可能だ

カメラのティルト方向には簡易カウンターバランス用のバネ機構が入っている。バネの力を調節できるものではないのだが、ティルトロックネジを緩めた途端にカメラがガクンと前方向に勢いよく倒れてしまうような事故を減らすことができる。オイルによる適度な粘性があり、スムーズな動きを実現しやすい。チルト角は前方向に90°、後ろ方向に55°。きちんと下まで向くので、真俯瞰のブツ撮りや、書類の複写撮影なども行いやすい。

それに対して、パン方向はオイルによる粘性がとても少なく、スーッとした動きとなる。オイルの粘性に合わせた一定速度のパンを行うことは難しいのだが、機械精度はかなり高いので、パン操作中に引っかかりやトルク変動を感じることはなく、テクニック次第でスムーズなパンが実現できそうだ。

スペック上の耐荷重は4kg。だが、使ってみた感想としては1.5kg程度までの重量にするのが、スムーズな使い勝手を実現するコツになるだろう。一般的なフルサイズミラーレスカメラと標準ズームレンズまでの重さに抑えたい。

また、感心したのはパン棒。グリップ部が発泡ウレタンによる柔らかなタッチで握りやすいうえに、伸縮&角度可変式で収納時にも邪魔になりにくい。また、この部分を含めどの可動部も遊びがなく、操作していてガタ付きを感じるようなことが全くなかった。

パン棒は伸縮式。グリップ前部のつまみを緩めることで約16.5~23cmまでの好きな長さに伸縮できる。不思議に感じたのは内蔵のカウンターバランス用のバネ。ティルトロックを緩めると、水平ではなくこの写真のように少し前に傾いた形でバランスされるようになっている

これまでの常識から言うと、このサイズの動画用雲台はどうしてもガタつきや精度の低さを感じてしまうものが多かった。けれども、この製品は手軽な価格やコンパクトなサイズ感によって、ちょっとした動画撮影を強力にサポートしてくれる。これまで写真用の三脚で動画を撮影していた人に特におすすめしたい製品だ。

吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。