吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

5品目:撮影現場で必ず役に立つ…粘着テープのイロイロ

パーマセル、mt foto、養生テープ…

一眼レフ、ミラーレスを問わず、最近のカメラにはもれなくと言っていいほど備わっているのが「動画撮影機能」。写真撮影については一家言あるけれども、動画についてはまだ未知の領域……、という読者も多いはず。
この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

撮影現場に必ずあるけれどもあまり気にもしない地味な存在である「粘着テープ」。今回は、これに目を向けてみよう。

まずは、「パーマセル」。「パーセル」「黒パー」などとも呼ばれる写真業界でも有名な紙製の粘着テープだ。

パーマセルテープ

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★

壁に、床に、ペンタ部に…

パーマセルというのは商品名&会社名なのだが、実はパーマセル社がパーマセルを発売していたのは2009年ごろまで。それ以降はShurtape(米国)が事業を引き継ぎ、名称も「Shurtape(シュアテープ)」となっている。

このテープの特徴は、なんといっても糊残りの少なさにある。使いたい時に手でちぎるだけで使え、貼った後に綺麗に剥がすことができるのだ。

いちばんよく使われるのはテープ幅が1インチ(約2.54cm)の黒タイプ。ズームレンズの鏡筒を一定位置で固定したり、レンズフードの仮止めや様々なもののちょっとした修理、背景紙や布を壁に貼ったりといった使い方がある。

他にも、演者やモデルの立ち位置を指定する「バミり」やカメラペンタ部分のロゴを隠すことに使う場合もある。

床などに立ち位置や道具のおき位置の目安として貼るのが「バミり」。T字型に貼った上辺のにつま先を合わせて立つというのが基本。つまり、この写真では左上に向かって爪先をこのT字の目印に合わせて立ってくださいという印になる

ずっと定番だったこの分野で最近、現場でもよく見かけるようになったテープとしてカモ井加工紙の「mt foto」がある。こちらは和紙を使ったテープで、もともとマスキングテープ(塗装などの際、塗りたくない部分をマスクするためのテープ)を応用した製品なのでやはり糊残りが少ない製品だ。

同じ紙製のテープでありながら、バリエーションによってちょっとした使い勝手が違うところも覚えておきたい。

テープの適正で用途を分けるべし

シュアテープ

まず、糊残りしない中でも粘着力がかなり強力と言えるのが黒のシュアテープ。艶消しの黒であることからちょっとした遮光を求める部分にも使えるし、紙そのものは厚手ながら伸縮性があるので曲面への貼り付けでも馴染みやすいのが特徴。その反面、壁紙への接着などで糊残りはないものの、剥がすときに壁紙の表面が剥がれてしまう事故などは起きやすい。

そして、白のシュアテープはとにかく紙が硬く、伸縮性があまりない。なので平らなところや円筒状のところへの貼り付けは簡単だが、複雑な形の対象には馴染みにくい。白さを活かしてメモ書き用に使うことも多い。

mt foto

mt fotoは色による紙の質の差は少ない。薄手の和紙で、とてもしなやかだが伸縮性はあまりなく、この点では黒シュアーに一歩、引けを取る印象。糊も若干、弱めなので貼る対象が紙などでも傷めにくいという特徴がある。太さや色など、さまざまなバリエーションがある。

使用済みバッテリーの端子部に貼ってショートを防いだり、マイク機材の番記、記録メディアの整理メモ書きなどに便利。メモリーカードに貼った場合、必ずカードスロットに挿入する際には剥がしておくこと

アセテート粘着テープ

業界で使われている製品ではないのだが、僕個人が気に入っているのはアセテート粘着テープ。

科学繊維の布テープでありながら手で簡単に引きちぎれるし、直径7.5cmほどの小さな巻きなのでかさばらずにコンパクト。ラベリアマイク(ピンマイク)を服の下に仕込んだ場合のケーブルを束ねたり、洋服の襟部分が浮いているときに丸い輪にして両面テープ的に止めたりして使っている。

養生テープ

また、屋内収録などに忘れずに持って行きたいのが養生テープ(メイン写真左)。電源ケーブルやHDMI映像ケーブルなどを引き回して使う場合、スタッフがケーブルを蹴ってしまっては事故の元。必ずある程度まとめて養生テープで床に貼り付け、安全性を確保するのを忘れないようにしたい。

テープをキレイに切るコツ?

そして最後に豆知識。養生テープやアセテートテープは指で引きちぎっても繊維に合わせて綺麗に切れるのだが、パーマセルなどの紙テープ系は綺麗に破れてくれない。

そこで写真に示すように、一旦45度に折り曲げて、テープの巻きの淵を使って一気に引きちぎると綺麗に切れるので試して欲しい。

吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。