COSINA E-mount WORLD
佐々木啓太×COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mount
再開発の大手町をヨーロッパ気分で歩く
2018年11月19日 13:23
月刊誌「デジタルカメラマガジン」と連動した本特集は、コシナ・フォクトレンダーがラインナップするソニーEマウント用レンズの個性を見ていく。今回は、デジタルカメラ向けに新設計されたコンパクトな超広角レンズ「COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mount」を、佐々木啓太氏の作品とインプレッションで紹介する。(編集部)
東京駅〜有楽町付近を歩く
大手町周辺は再開発が進み石畳の道や以前からある石造りのビルなどヨーロッパの街角を思わせる場所に変わっている。さらに、東京駅の駅舎や現代的なガラス張りのビルなど変化も作りやすい。この街角なら、21mmの画角の貴婦人のような繊細さを受け止めてくれるはずだ。そんなことを考えて撮影場所に選んだ。撮影当日は、ヨーロッパの街角を散歩しているような擬似旅行をイメージしながら被写体との出会いを楽しんだ。
秋晴れの太陽を使って光条を狙った。絞りをF11まで絞って太陽を見上げたが、この日のファーストショットに近く集中力も上がりきっていないために、太陽を柱の陰に少し隠すコントロールが弱くなった。そんな悪条件でも再現力が高く頼れるレンズなのがわかる。
雲ひとつない青空。一見、超広角レンズに合いそうな条件も後で見ると散漫なだけになることが多いので、画面を締めるためにKITTE入り口のひさしを入れて構図をまとめた。F5.6は超広角レンズらしいキレを画面の隅々まで感じやすいので常用におススメの絞り値だ。
再開発でできた昼休みのオアシスのような空間。ハイライトとシャドーの差が大きく露出に悩む条件だが、レンズの再現力を信じて-1.0EVまでアンダーにして見上げた。立ったままでは広がりの印象が弱いので、しゃがんで少しカメラを傾けて対角線を使っている。
ここはパリ。そんな気分で撮影ポジションを決めて、奥の人物が離れて日向に入るタイミングを待った。開店準備をしているウェイターの方が手前に入ってくれたのは嬉しい誤算。奥の人物との対比で広がりの印象が強くなった。
ザ・超広角レンズ的な迫力を狙ってローアングルから近づいた。ローアングルでファインダーが覗きづらくても、少しクラシカルな雰囲気のこのレンズを使っているときは今風の背面モニターではなく最後までファインダーで確認したくなる。自分が切り取っているという意識を高めやすかった。
ピント位置はショーウィンドウの中の洋服。映り込みもあるのでAFならピントが迷いそうな条件。MFレンズ+EVFの表示拡大を使って思い通りにピントを追い込むことができた。ピントの山が掴みやすいのはEVFの性能もあるが、レンズの切れ味が良いからでもある。
開放F値F3.5でも、ピントを合わせた被写体に近づいて、ぼかしたい背景との距離の差を大きくすればボケも楽しめる。背景に人物が入るタイミングにするとさりげなく賑やかな雰囲気を作れる
色も少なく単調になりそうな条件を活かすために狙った日の丸構図。レンズに対する信頼感が高まると、そんな大胆な発想に思いが広がって変化をつけやすい。抜けが良く線が美しいレンズは覗いているだけでもワクワクするので、撮影の楽しみを何十倍にもしてくれる。
感性に訴えかける部分まで作り込まれている
初めてこのレンズを手にしたときに感じたのは、見た目以上の存在感。手のひらに収まるようにしっくりときた。ミラーレスカメラのポイントは軽さだ。となればレンズも軽くなりがちだが、良いレンズにはある程度の重さが伴う。鏡筒のサイズ感、ローレットの手触り、マニュアルフォーカスのトルク感……書き出せばキリがないが、描写性能だけでなく、そんな撮り手の感性に訴えかけてくる重さまでもしっかり作り込まれている。そこから見えてきたのは、コシナの皆さんの強いレンズ愛だった。
協力:株式会社コシナ