都市風景のためのフィルターテクニック

PLフィルターで反射をコントロールする

写り込みを減らす/増やす 色味の強調/変更

写真にこだわりはじめると他の人とはちょっと違った視点や表現をしたくなってくるもの。でもなんだかあともう一歩が足りないと感じている人もいるかもしれない。

写真をワンランクアップさせるきっかけはフィルターワークにあるかも。そんな方におすすめしたいのが「PLフィルター」だ。

PLフィルターとは?

PLフィルターは撮影する画像に対して効果のあるフィルターとしては最もポピュラーなものと言えるだろう。

PLフィルターとは日本語では「偏光フィルター」。簡単にその効果を説明すると、被写体の反射光をコントロールするフィルターだ。

例えば太陽の光でギラつく植物の葉のテカリを抑えたり、水面の反射を抑えて水中が見やすくなったりする効果がある。

結果として被写体の色が濃くなり画面のコントラストが高まる効果もある。青空の色も濃くなるため主に風景写真で利用されることが多いフィルターだ。

「PL」と「C-PL」はどう違う?

PLフィルターを選ぶさい、PLフィルターとC-PLフィルターという2タイプあるが基本的にはC-PLのタイプを選べば問題ない。詳しい話は割愛するが「C」が付かないPLフィルターはAFや露出の精度が落ちる可能性があるからだ。

とはいうものの、現在一般的に市場に流通しているほとんどの製品がC-PLタイプの偏光フィルターなのでそれほど気にしなくてもいいだろう。

なお近年は、C-PLのタイプも含めて総称としてPLフィルターと呼ばれることがほとんどなので、本記事でもPLフィルターと記載させてもらう。

PLフィルターの使い方

PLフィルターは偏光膜の向きを回転することで効果の具合を変化させるため、PLフィルターは枠が2重の回転枠構造になっている。

レンズにフィルターを取り付けたら、前枠を回転させて反射光をコントロールする仕組みだ。ファインダーでテレビ画面など見ながらフィルター枠を回すと反射や色味の変化がわかるはずだ。

また、ガラス面の反射にも効果があるが、正面の反射にはほとんど効果がない。偏光効果が最も大きくなるのは反射面に対して約35度くらい斜めの角度となる。

なお、鏡などの金属面の反射には効果はない。

三脚が必要になることも

PLフィルターのガラス面は、偏光膜によって黒っぽい色をしている。そのためレンズに入る光の量がやや減るためフィルターを付けていない状態よりもシャッター速度が落ちてしまう。

シャッター速度が落ちればブレた写真になってしまうこともあるため、場合によっては三脚を使用して撮影するようにしよう。

そんな三脚との相性がいいPLフィルターだが、世界に多くのファンを持つ三脚メーカーであるマンフロットが、昨年日本市場において新規参入して販売を開始した。

近年、カメラの高画質化が顕著でありフィルターも高画質・高性能化されているが、マンフロットのフィルターは安心の日本製であり画質への影響は最小限に抑えられている。

3グレードのラインナップ

また、マンフロットのPLフィルターはコーティングの性能によって「ESSENTIAL」「ADVANCED」「PROFESSIONAL」の3グレードで商品展開されている。3グレードともに偏光性能にこそ違いはないが撥水や防汚性能などにおいて違いがある。

3グレード共通では薄枠設計と撥水性能があるが、撥水についてはESSENTIAL < ADVANCED < PROFESSIONALと効果率が違うようだ。

PROFESSIONALグレード

ADVANCED以上のグレードでは撥油、防汚、ガラス端面墨塗り加工が追加となり、PROFESSIONALではさらにガラス面の平面性と低反射率に優れ、帯電防止、高透過偏光膜が採用されている。

高透過偏光膜とは通常のタイプに比べ、偏光膜による減光率を下げシャッタースピードの低下を抑えるタイプのこと。

といったように、性能面から考えればPROFESSIONALグレードが圧倒的に高性能なことがわかると思うが、77mm口径でESSENTIALが8,910円、ADVANCEDが11,890円、PROFESSIONALが17,150円(いずれも量販店の税込実勢価格)と価格差が大きい。使用条件と予算を考慮してグレードを決めてほしい。

作品

街をスナップしながら歩いているとかっこいいFordの旧車があった。窓ガラスやボディ面に街路樹などが映り込んでいたが、PLフィルターを使用し反射を抑えることですっきりとした描写が得られた。

PLフィルター使用
PLフィルター無し

イルミネーションと行き交う人々を画面の半分ずつで描いてみた。女性の後ろ姿は横断歩道橋のガラス面に映った姿だ。PLフィルターなしでは左半分のイルミネーション部分にもガラス面の反射が入ってしまい絵柄がすっきりしていない。

PLフィルター使用
PLフィルター無し

おしゃれな服屋のディスプレイ。オレンジの照明がコートを照らしていたが、ディスプレイのガラス面に道路標識や対面のビルなどが写り込んでしまっていたのでPLフィルターの効果が最大になる角度まで移動して撮影した。

PLフィルター使用
PLフィルター無し

建設中のビル。ガラス面は反射面そのものなのでPLフィルターの効果はもともと大きいが、特に最近のビルは照明効果を高める工夫として窓ガラスに偏光シートを貼っていることがある。

偏光シートとPLフィルターは基本的に同じ構造のものであり、2枚重ねると色味が極端に変化することがある。ここでは右側のビルの窓ガラスの色が異様に変化しているのがわかるだろう。

PLフィルター使用
PLフィルター無し

PLフィルターは反射光を抑えるだけのフィルターではない。反対に反射をやや強める効果も生み出すことができる。

このシーンではあえて反射を強める方向に効果を調整して画面にメリハリを出した。反射を抑えると窓の中が透けて見えてしまい画面の印象が弱くなってしまっている。

反射を強めた例
反射を弱めた例

まとめ

PLフィルターは面白い。絵にならないと思ったシーンでもPLフィルターを付けてファインダーを覗くと途端に美しい景色が広がっていたりする。

もちろん慣れてくれば効果をあらかじめ予想してPLフィルターを使用するわけだが、それでも想像通りに行かないこともありそれがまた面白い画面効果を生み出してくれたりするのだ。

PLフィルターで反射をしっかりコントロールできるようになると、画面の中で見せたいものが明確化され写真のクオリティーがぐっと上がる。新しい作品表現へのチャレンジや、作品クオリティーの向上を目指すときにはぜひPLフィルターにチャレンジしてみてほしい。

制作協力:マンフロット株式会社

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。