私はこれを買いました!

マニュアルレンズとの相性を求めて

パナソニック LUMIX S1(豊田慶記)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2024年に購入したアイテムを1つだけ紹介していただきました。(編集部)

2019年モデルを選んだ理由

自分でもまさかの選択という感がありますが、11月の中頃にLUMIX S1を新品で買いました。

事の発端は、Mマウント互換のコシナレンズと触れ合う機会が豪快に増えたこと。LUMIX S5にマウントアダプタを組み合わせて対応していますが、使い勝手やピントの掴み易さをもう少し良くしたいと思い、当初はLUMIX S5IIを検討していました。

S5IIではExifにレンズ名称のデータを記録できますので、複数本での運用がかなり楽になるだろう、という期待と、新しいフォトスタイル:LEICAモノクロームをきっと楽しめるようになるだろうから一石二鳥に違いない、という希望的観測です。

実際にS5IIでマニュアルレンズと組み合わせてMFしてみると、MF時の拡大倍率がS5より低く、ピントが見え難いというトラップがありました。その一方でExif記録については本当に嬉しい機能でした。

S5ユーザーでありますので、S5IIを追加するのが「ナントナク良さそう」みたいな感情もあったことは事実でしたがEVFがどうにも納得できずウジウジする日々。

Lマウント機でMFし易く、画素数は控えめな機種を、ということで記憶を辿ってみるとライカSL2-SとLUMIX S1が浮かんできました。

画素数については、ストレージをこれ以上圧迫させたくなかったことと24MP機のバランスの良さを気に入っていたので、迷わず決まりました。入手性やバッテリ価格などからS1が筆頭候補に。

ですが、S1の発売は2019年3月なので、登場から5年経つモデル末期も末期の機種であることから、どうせならS1後継機を待つか、という気持ちが支配的でもありました。

実は過去にも何度かS1の購入検討はやっており、極上のEVFと絵作りの良さに前後不覚になった思い出があります。ミラーレス機なのにD850とドッコイのサイズに夢から醒める、というルーティンを繰り返していました。S Proのレンズシリーズも実に巨大なので、簡単に目覚めることが出来ていました。

そうした経歴のあるS1に、夏のふとしたタイミングで実機に触れる機会を得てみれば「確かにデカいが、そこまでじゃないか……」と心変わりが。

突如として”デカい問題”が有耶無耶になったことで、戸惑いが生じただけでなく、過去にした開発者インタビューで「性能第一の思想で、ファインダーの覗き心地についてもトコトン拘って追求したものになり、当時選択出来る最高のデバイスと光学設計でフルスイングで作りました」という言葉を思い出してしまったことで、朧気であったS1という妄想が現実味を帯びてきます。

ダメ押しとなったのは、同じくらいのタイミングでJSPA会長(赤城氏)から「S1に触れる機会があったのだけれど思いの外、良くて」的な話を聞いてしまったこと。

自身のやっている仕事では、AF性能や高速性をそこまで重視していないということもあり、腹を括って自発的に実機に触れる機会を作ってみると、極上と言って良い覗き心地のEVFと、X-H1を彷彿とさせる軽くフィーリングの良いレリーズ感に道具としての質の高さと品の良さがどうにも心地好い。

それからというもの、寝ても覚めてもS1が気になるようになり、冷静になる時間を設け、それでも心変わりしなかったので買いました。

S1の登場以後、現在までに素晴らしいEVFを持つカメラがいくつか登場しており、職業柄その全てを体験していますが、それらを経験してもなおS1のEVFの心地良さは色褪せません。EOS R1と一緒にS1を持ち歩いたこともありますが、それでも「S1のEVFもナカナカええやん」という気持ちは揺らがず。新陳代謝の激しいデジタル機器での”5年モノ”ではありますが「フルスイングで作っただけのことはあるな」と思わずニヤリとするものがあります。

まだ慣熟中につき、挙動に「ん?」という部分が無いわけではありませんが、それでも気に入っていますし、組み合わせるレンズ次第では恐れていたほど巨大で重いということもなく、なかなかに良いチョイスだったと自画自賛しております。

それでは今年も読者の皆様ありがとうございました。

2025年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

ピントが見える見える。念の為の”お願いピントブラケット”(連写しつつ微妙に前後に動いてガチピンを狙う)をしなくても一発で高精度にMFできるので、撮影時間短縮と無駄打ちが豪快に減りました。
LUMIX S1 / ZEISS C Biogon T* 2.8/35 ZM+SHOTEN LM-LSL M II(マウントアダプタ) / マニュアル露出(1/125秒・F2.8) / ISO125 / フォトスタイル:L.モノクロームD

近況報告

『カメラマン リターンズ トヨ魂 B面』が発売中です。もうお買い上げ頂いた皆様につきましては、心より御礼申し上げます。

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。日本作例写真家協会(JSPA)会員。