インタビュー

海外プロ写真家に聞いた「FUJIFILM X-T1」の魅力

“小さくてタフ、そしてとても自然なカメラ”

 富士フイルムの新しいミラーレスカメラ「FUJIFILM X-T1」は、先日開催されたカメラ関連展示会「CP+2014」でも、タッチ&トライコーナーで長蛇の列ができるほどの人気だった。

 CP+にあわせて来日したプロ写真家であるGianluca Colla氏に、X-T1を使っての感想を聞いた。

イタリア在住の写真家であるGianluca Colla氏。CP+2014の会場、氏の作品の前で

――X-T1を使っての率直な感想を聞かせてください。

 とてもポジティブな印象を持っているよ。小さくて軽く、画質も非常にいい。AFも速くなっているし、高感度画質もノイズが少なく、あったとしても美しいノイズになるんだ。

 操作性では、メニューに入らずに設定を行なえるのがいい。ほとんどのシーンでダイヤルを手で操作するだけで、直感的に操作できるのがいいね。

 カメラとしても、撮影する喜びがあり、撮影を楽しめるカメラだと思う。操作性はフレンドリーで、「自然なカメラ」だ。いいところはたくさんあるが、シンプルで小回りのきくカメラという点がいい。

――X-T1では、EVFが大型化するなど強化されていますが、いかがでしたか?

 もともと僕はEVFはあまり好きではないんだけど、このカメラのEVFは、EVFではなくて何か別の言葉で表現したくなるね。大きくて精細で、覗いただけで写真の世界に入り込むような、そんな感覚になるんだ。

――これまで、写真家として砂漠や山、アマゾン川流域などで撮影をされていますが、X-T1の防塵防滴はどうですか?

 カメラについての心配が少なくなると、もっと写真に集中できるので大歓迎だね。持ち歩くのにサイズも重さも気にしなくていいし、防塵防滴によって天候も心配しなくても良くなった。雨の中でも撮影できるし、砂漠でも気にしなくていいのはすごくいいね。

 プロの写真家にとって、カメラは「ツール」で、どんな環境でも撮れることが大事なんだ。-10〜-15度ぐらいの雪山で撮影したけど、X-T1は全く問題なく使えたね。その時は、このカメラを使って1週間ぐらいだったんだけど、その中でも撮影できた。それに、雪の中に落としてしまったこともあったんだけど、それでも大丈夫だったので、信頼感は高いね。

FUJIFILM X-T1。CP+2014の会場で
タッチ&トライコーナーは、40分待ちになるほどの人気だった

――普段はどういったレンズで撮影していますか? また、「こんなレンズが欲しい」というのはありますか?

お気に入りのレンズはこれ(XF 23mm F1.4 R)だね。ほとんどの写真は、(35mm判換算で)35mmで撮影しているんだ。

XF 23mm F1.4 R

 以前は一眼レフのシステムを使っていて、14mmから300mmの焦点距離のレンズを持っていたけど、85%ぐらいは35mmの画角で撮影していたので、これ1本あればいいね(笑)。

 ほとんど使うことはないだろうけど、あったら便利だと思うのは200mm相当や300mm相当でF2.8といった、明るい単焦点の望遠レンズかな。防塵防滴でAFが速くて、手ブレ補正が強力なレンズがあれば欲しい。でも、富士フイルムのレンズラインナップは、今後のロードマップを含めて充実していると思う。

――換算35mmでほとんどの撮影をしているということで、一般のカメラマンに何か撮影のアドバイスはありますか?

 とにかく(被写体に)寄ること。寄ることだね。それは精神的にも肉体的にも寄るということで、それだけで写真はグッと良くなる。とてもシンプルなことだけど、とても重要だよ。

――X-T1でまだ撮っていないけれど、撮ってみたい被写体はありますか?

 たくさんあるけど、その中でもアフリカに行きたい。あとは、10年前にアマゾンの熱帯雨林で撮影したけど、また撮影に行きたいな。10年前は、ベルビアフィルムで撮影したんだけど、同じ風景を、今度はX-T1のフィルムシミュレーションで撮影してみたい。

――フィルムカメラ時代と比べて、X-T1はどうですか?

 X-T1は、カメラの歴史と最先端を同時に楽しめるカメラだと思う。自然なカメラで、画質も素晴らしい。EVFも新しくて、フィルムカメラと比べても大きなアドバンテージがあると感じているよ。

 アマゾン川での撮影以来もう10年ぐらい、フィルムカメラは使っていないんだ。X-T1の前はデジタル一眼レフを使っていたけど、もう最近はそれも使ってないね。10年前は、まだそこまでデジタルカメラは信頼できるシステムではなかった。アマゾン川みたいなところでは充電できないけど、充電できる環境もないし。今は、充電はソーラーパネルでできるし、今はデジタルを信頼している。

――デジタルとフィルムの違いは何ですか?

 一番大きな違いは、フィルムは現像を自分でしないことかな。撮影する人と現像する人が違うので、できあがったものが必ずしも自分のイメージ通りではないことがあったし、時間もかかった。

 デジタルでは、写真としてできあがるまで、自分で調整できるのが大きなアドバンテージだ。フィルムも、もちろん現像は自分でできるのだけど、時間と費用がかかるし、現像液の温度が違うだけで画質が変わったりして、手間がかかる。それにデジタルで現像するのが大好きなので、自分のような人間にはデジタルカメラが適しているかな。

――X-T1の購入を検討している読者にひと言お願いします。

 X-T1は、ファインダーを覗いてダイヤルを回せば、それだけで買う気になる。非常に自然なカメラなので、手に持ってもらうのが一番分かりやすいよ。電源を入れずに、ダイヤルを回せばすぐに撮影する体勢に入れるのは大きい。メニューを見てまごまごしていたら、自然な写真は撮れないから。

――最後に、日本はどうですか。

 日本は大好きなんだ。以前、沖縄には来たことはあったけど、すごく良かった。(取材当日は雪が降っていたので)雪が降ったりすると家の中にいたくなるけど、僕は雪が大好きなんだ。こういうときは写真撮影のグッドチャンス。X-T1なら、雨でも雪でも撮影できるしね。これから1週間日本にいるんだけど、写真を撮るのにどこかいい場所はないかい?

小山安博