インタビュー

LEDライトを写真撮影に使うメリットは?

Aputureの代理店・アガイ商事に聞いてきました(前編)

amaran 200x S

近年、爆発的にその製品ラインアップが拡充されてきている撮影用LEDライト。長いこと写真愛好家に親しまれてきたストロボとは一線を画するものとして、その存在感を高めてきています。

LEDライトに興味があるけれど、実際どういう感じなの? と思っている読者もいるでしょう。今回はLEDライトの入門編として、その基本的な特徴を、Aputure(アプチャー)やamaran(アマラン)などLEDライトの取り扱いに豊富な経験を持つアガイ商事(営業部・堀川謙吾さん/中本海渡さん)に伺ってきました。

LEDライトの特徴は?

——スチール撮影にLEDライトを使うメリットはどんなところにあるでしょうか?

LEDライトを使うメリットは「タイムパフォーマンス」と「コストパフォーマンス」に優れている点です。

まずタイムパフォーマンスの点から。LEDライトとストロボのわかりやすい違いでいうと、「定常光」か「瞬間光」かということがあげられます。

ストロボはシャッターに応じて発光するものですが、LEDライトの場合は常に光っている状態で撮影できる。やはり見たままで撮れるということは、撮影時間の短縮につながります。「撮ってみないと分からない」ストロボより、初心者にとってもわかりやすいといえるのではないでしょうか。

次にコストパフォーマンスについて。近年、撮影用LEDライトのラインアップには、高価格帯のものから低価格帯のものまで、幅広い製品が増えてきました。実は比較的低価格帯の、いわゆるエントリーモデルと呼ばれるような製品も、最近ではドラマや映画などプロの現場で使われるようになっています。

例えばスタジオなどプロの現場で使うようなストロボ製品は高価なものが多く、導入するのには意外とハードルが高くなったりします。エントリーモデルからストロボをはじめて、より一層高いクオリティを求めてステップアップしようと思ったとき、その価格差に愕然とすることもあると思います。

高性能エントリーモデルに位置づけられている「amaran 300c」

——機材のステップアップについては、特に趣味で撮影するユーザー層からすると悩ましい点ではありますね。

通常、機材メーカーは機能やグレードによって製品の価格帯を分けていますが、LEDライトに関してはそこの垣根が低くなってきている状態とも言えます。プロの現場で選ばれるぐらいなので、仕事に使えるレベルの製品が、そしてもちろん趣味でも使えるものが低価格帯で選べるようになってきています。

コストパフォーマンスの面でさらに言うと、ランニングコストにおいてもメリットがあるといえます。例えばストロボを長く使おうと思うと、消耗品の交換が必要になるケースがあります。しかもそういったパーツの類は単価が高くなりがちで、結局LEDライトのエントリーモデルを購入するのと同じくらいの費用が掛かる場合もあります。

弊社のショールームにも、これまで長くストロボを使ってきたというお客様が多くいらっしゃいます。最近は動画も撮るし、定常光でもスチール撮影ができるようになってきたしということで、同じくらいの価格で新しいものが買えるならとLEDライトを新たに導入される方も増えてきています。

——LEDライトには、いわゆる消耗品といわれるようなパーツはあるのでしょうか?

一般的には、LEDライトには耐用年数が定められています。それが大体4~5万時間といわれてまして、例えばこれは常時24時間点灯したままで7年間使用できるという数値になっています。もちろん、あくまでも目安にはなりますが。

4~5万時間というと、1万時間分も大きな振れ幅があります。正直に申し上げると、LEDライトが撮影業界に本格的に導入されてまだ短いこともあり、正確なデータが取れていないとも言えると思います。最近の撮影用LEDライトの市場を鑑みると、4~5年で同型・同等品が新製品で出てきますので、4~5万時間に達する前に切り替えられるサイクルになっています。

逆にストロボに関しては耐用年数が定められていません。消耗品の交換により半永久的に使えるということではありますが、先ほど申し上げたように、意外とその修理・交換に費用がかかってしまう。LEDライトは耐用年数が定められているとはいえ、それが長いことを考えるとトータルではランニングコストが抑えられるといえると思います。

COB(Chip On Board:チップオンボード)という型を採用するLEDライトの発光面

LEDライトとストロボ、“出力ワット数”はイコールじゃない?

——LEDライトを使う際に、ストロボと異なる点など留意すべきポイントはありますか?

まず注意したいのは光量の違いです。ストロボの方が強いです。

原理は単純で、常に発光し続けているLEDライト(定常光)と、溜めたものを爆発的に発光するストロボ(瞬間光)では、やはり後者の方がパンチがあります。

例えば、同じ出力200WのストロボとLEDライトは、まったく得られる光量が異なります。ストロボの200Wを仮にLEDライトで出そうと思ったら、一概には言えませんが最低でも600Wくらいのスペックを持つモデルが必要になる可能性があります。

——光の性質はいかがでしょうか?

LEDライトは、ストロボと比較すると“硬い光”を出すのが苦手といえます。濃い影を出す、コントラストを強くする、といった光を作るのが難しくなってきます。

先ほど話に出た200Wのストロボと600WのLEDライトを例にすると、同じ光量を出せたとしても光の質が異なります。ストロボの方が光が硬くなるので、例えば夏の日差しを表現するといったシーンで、同じ光量であってもストロボの方が強く感じるといったことはあるかと思います。

硬い光を柔らかくすることは、意外と難しくありません。ストロボにも多くのアクセサリーがありますから、幅広い表現が可能になります。

逆に柔らかい光を硬くする場合、LEDライトにはスポット光をつくるアクセサリーもありますが、集光する分照射角が狭まるなど、使い勝手の面で難しさもあります。

照射範囲を絞るアクセサリー「スポットマウントSE 19°レンズセット」を装着した様子

——たしかに光を柔らかくするためのアイテムは多くありますが、硬くするためのアイテムというのはあまり聞きなじみがありませんね。

あと細かい話ですが、ストロボとLEDライトで同じくらい柔らかい光を作ったとしても、表現のニュアンスが若干変わります。ストロボの方が芯が残るというイメージです。光源が1つの玉なので、柔らかい光の中でも微妙に陰影の差がつきます。対してLEDライトは面で発光するので、全体的に柔らかくなります。

そのあたりはユーザーの好みが分かれるところだと思います。人物の顔を撮影するときに、のぺっとした表現とするか、陰影をしっかりとつけるかといったような。物撮りのときなどにも同じことが言えますね。

ソフトボックスなどアクセサリーも豊富

——他に違う点はありますか?

被写体にとって、例えばモデルさんによってはLEDライトの方がまぶしいと感じる方は多いようです。ストロボの方が強い光ではありますが、LEDライトに比べるとそれが感じにくいです。


今回はLEDライトとストロボの基本的な違いについて聞きました。次回は、実際にどのようにLEDライトを選べばよいか、がテーマです。いろんなタイプがあるLEDライトですが、選ぶ際のポイントについてまとめていきます。

本誌:宮本義朗