インタビュー
“COB”って何? 撮影用LEDライトが日々進化しているという話
Aputureの代理店・アガイ商事に聞いてきました(後編)
2025年2月8日 12:00
近年、爆発的にその製品ラインアップが拡充されてきている撮影用LEDライト。長いこと写真愛好家に親しまれてきたストロボとは一線を画するものとして、その存在感を高めてきています。
LEDライトに興味があるけれど、実際どういう感じなの? と思っている読者もいるでしょう。今回はLEDライトの入門編として、その基本的な特徴を、Aputure(アプチャー)やamaran(アマラン)などLEDライトの取り扱いに豊富な経験を持つアガイ商事(営業部・堀川謙吾さん/中本海渡さん)に伺ってきました。
“COB”って何?
——COB(Chip On Board:チップオンボード)というワードを目にすることが多いのですが、どのようなものでしょうか?
平たく言うと、基板上に発光素子が直接貼り付けられたものです。ボードの上にチップがあるのでChip On Board。その基板にはアルミもしくはセラミックが使われており、放熱性の高さも特徴のひとつです。
その基板の上にチップを集約しているため、従来のものよりも光量が上がっています。
LEDのチップには、もともと「砲弾型」と呼ばれるものがあり、その後「SMD(Surface Mount Device:表面実装型)」が登場します。撮影用LEDライトに関しては、当初はSMDチップが主流でした。COBという技術の登場により、スポットタイプの形状を実現できたという遍歴になります。
前回の話に上がったパネルタイプやフレキシブルタイプのライトにはSMDが使用されているので、見比べてみるとわかりやすいです。COBはパネルタイプのライトに使われているLEDチップが極小になり、ぎゅっと詰まってひとつの基板の上に載っているイメージです。
同じ面積でも、チップが100個並んでいるのと1,000個並んでいるのでは、当然明るさも変わってくるということです。
——COBの基板、よく見ると小さなつぶつぶがあります。
バイカラータイプであれば、この基板の上に2色のチップを交互に並べています。限られた面積にチップをどのように配置するか、ここに日進月歩があります。
COBが開発されたことで、撮影用LEDライトの世界では、より“点光源”に近い光源を作り出せるようになりました。例えばSMDチップを採用したパネルタイプのようなLEDライトは、チップ間の距離が離れているため光の当たり方にムラが出てしまいます。なので、ディフューザーを挟んで使うことになります。
このCOBについては、いまとなってはどこのメーカーも光量を上げることを目指している段階です。例えばAputureだと、1番下が60Wで、1番上が2,600W。
LED素子の集積率が上がったことで光量を上げられたということもあるのですが、放熱ができるようになったというのがCOBの大きなメリットでもあります。要はCOB以前の技術だと、熱がこもってしまうためにワット数を上げようとしてもそれが叶わなかったということです。
——放熱ができるようになったというのは?
まず基板となるボードの材質にアルミやセラミックを使用している点です。これらは放熱性に優れたものとなっています。
ただそれでは限界もあるので、各メーカー、空冷ファンを搭載するなどの工夫をしています。Aputureでは水冷式を採用しているモデルもあります。
難しいのは、ファンを搭載すれば必ず“音”が発生してしまうということです。静止画撮影ではあまり影響がないかもしれませんが、動画撮影においては音が大きいのはあまり良いとは言えません。
音を抑えるためには、ファン自体を大きくして放熱の効率を高めるといった方法も考えられますが、それではファンを内蔵するために灯体を大きくしなければならない。なるべく本体を小さいままに、いかに音を抑えて放熱効果を高めるかというのは、メーカーが本当に頭を悩ませているところです。
——設計に関しては色々と制約が多いのですね。
制約という意味で言うと、アクセサリーを取り付けるためのマウント部も影響してきます。例えば、LEDライトにはボーエンズマウントを採用しているモデルが多くありますが、その場合、“ボーエンズマウントの規格の範囲内”でLEDチップを収める必要が出てきます。
定められた範囲内に、デイライトタイプであれば昼光色(5,600K)を、バイカラータイプであれば加えて昼白色を、ましてやフルカラータイプであれば別の色のLEDを詰め込まなくていけません。カラータイプによって光量が変わってくる理由でもありますね。
3回にわたってお送りした“LEDライト入門編”。最後は関連用語と、LEDライトが日々進化しているジャンルであるというお話を伺いました。“日々進化している”というのがポイントで、現在はそのペースが本当に速いのだそう。当サイトでも、今後も継続的に追いかけていきたいと思います。